中学生の部活動を地域移行へ 企業スポンサーがバックアップ 若狭町で軟式野球のクラブチーム立ち上げ

国は教員の働き方改革や少子化対策として、2026年4月からは「公立中学校の部活動を休日は行わない」という方針を示していて、県としても、できる限り部活動を地域移行していこうという考えです。国は、土日祝日の中学生の部活動については教員ではなく、地域の人に対応してもらい、やり方も各市町に任せるというスタンスです。形としては▼社会人が参加するサークルや団体に中学生も参入する▼小学生が所属するスポ少などの団体に中学生も参入する▼各競技連盟が主催する練習会に参加するという選択肢がありますが、現在は移行期間としてどんな形が良いか各市 町で探っている状況です。

そんな中、若狭町では地域や企業の力を最大限活用しながら、部活動の地域移行で新たな形を生み出そうと奮闘しています。先進事例を取材しました。

若狭町の軟式野球・クラブチーム「FACTベースボールクラブ」は、部活動の地域移行を見据えて新たに立ち上げられたクラブチームです。

7月からの本格始動を前に、若狭町や美浜町の中学生約30人が所属しています。生徒は「部活動が休みの日に野球ができて楽しいです」と話し、普段は陸上部に所属するという生徒も「地域移行で教えてくれる人はその種目の専門家なので、こっちのほうが分かりやすい」と好評です。

指導は、教員ではなく地域の野球経験者が行います。監督の岡林智成さんは「「若狭町や美浜町では、令和8年度から休日の部活動がなくなり、休日の大会に出られなくなる。子供たちにとって軟式野球の選択肢がなくなることはさみしいので、地域移行のクラブ化を中学校や町と話し合った」とクラブチーム立ち上げの経緯を話します。

例えば三方中学校の場合、現在7つの部活動がありますが、現段階で地域移行の形が決まっているのは一部の部活動のみ。子供が中学生になる岡林さんは、部活動の縮小に懸念を抱いたといいます。「実際に自分の子がその年代になってきて危機感がを持ったが、そうでなければ地域移行の話は知らないと思う」と話す岡林さん。

地域の子供たちのために、週1回のペースで活動を予定していますが、課題は山積みだといいます。岡林さんは「自分たちで練習会場に行ったりしないといけないので、送迎という保護者の負担が出てくる」と話します。

他にも、平日は部活動に所属するため、顧問の先生との連携も必要になると話します。現状について、若狭町教育委員会の大下誠之さんは「若狭町の場合、上中(かみなか)中学校の女子ソフトボール部はすでにクラブ化している。三方中の剣道部も地域の皆さんに世話になっている」と説明。そのほかの運動部や文化部についても、スポーツ少年団に依頼したり競技連盟が練習会を主催する形など、地域移行の準備を進めているといいます。ただ、課題も感じています。「指導員が続けていけるのかどうか。資金面も必要で、持続可能な形で運営ができるのか、維持できるかが重要」と話します。

普段は、福祉器具の販売などを行う会社で働く監督の岡林さんが、立ち上げたクラブチームを長く続けていくために考えたのが、スポンサー企業の獲得です。

FACTベースボールクラブ・岡林智成監督:
「クラブチームなので運営費やコーチへの謝礼金も必要。子供たちの会費をなるべくおさえたいのでスポンサー企業の獲得を提案した」

岡林さんは仕事の合間を縫って地域の会社経営者などに協力を依頼し、約10社から協賛をこぎつけました。

協賛社の旭木材工業・上野貴浩さん:
「地域の子供たちの休日の部活動がなくなることは聞いていて、じゃあ代わりに誰ができるのかとなると難しい。部活を通して悔しい思いや楽しい思いが残ったまま大人になれるのがいいなと思うので、できる努力はしていきたい」

他にもクラウドファンディングを立ち上げるなど、持続可能なクラブチーム運営を模索しています。岡林さんに、なぜそこまで活動ができるのかを尋ねると「やっていく中で、地域のつながりを感じることができたので、それを子供たちに還元したいし、少しでも野球以外の部活動に参考になれれば。子供たちの未来のために、地域の方も動いているので、その思いは忘れずにやっていきたい」と話してくれました。

2年後に迫る部活動の地域移行。新たなクラブチームを立ち上げるというのは、県内でみても珍しい例で、正解は一つではない中、地域ごと、部活ごとに、適切な形を探していく必要があります。若狭町は部活動の地域移行の進捗状況をホームページでも公表して進めています。人口減少や指導者不足など、地域によって様々な課題はありますが、子供たちの部活動の取り組みが制限されないように地域移行を進めていく必要があります。

© 福井テレビ