大学3年間背負い続けた重荷 かつてのジュニア五輪覇者・亀田実咲が復活優勝できたワケ【日本学生陸上】

女子走高跳で跳躍する福岡大・亀田実咲【写真:中戸川知世】

日本学生陸上個人選手権、女子走幅跳決勝

2024日本学生陸上競技個人選手権は14日、神奈川県のレモンガススタジアム平塚で初日を行い、女子走り高跳び決勝で亀田実咲(福岡大4年)が自己記録に並ぶ1メートル75をただ1人成功させ、初優勝を果たした。亀田にとってこの記録は、鵬学園高(石川)3年時の日本選手権で出したもの。かつてのジュニア五輪覇者が、大学ラストシーズンで「再浮上」を果たせたのはなぜだったのか。

少数派の右足踏み切りで、淡々とジャンプを重ねた。8人が挑んだ1メートル75をただ1人成功させ、早々に優勝を決めた亀田は「あんまり内容を覚えてなくて……。1本1本気合で飛んだ感じです」とはにかむ。

大学での資格記録は1メートル73で、今大会の参加選手中7位。「自信はなかったんですけど、楽しもうという気持ちで。大学最後だと思ったらそうしなきゃ損だと」。開き直りにも近い気持ちが活路を開いた。なぜ、ここにきて4年前の自己ベストに並べたのか。聞くと素直な言葉が返ってくる。

「緊張しいなんですよね。ただ最終学年には強いんです」

高校3年時には、日本選手権で自己ベストを出し高校生最高の4位。その勢いで秋のJOCジュニアオリンピックカップ全国高校陸上でも優勝した。中学3年時にもジュニアオリンピックで優勝と、言葉を裏付ける実績が並ぶ。ただ大学での過去3シーズンは、それが重しになってしまっていたとも言う。

「最終学年には強い」と語る亀田、4年生にして大学初優勝を果たした【写真:中戸川知世】

大学で記録を伸ばせなかったのは「勝手に自分自身で…」

「勝手に自分自身でプレッシャーをかけていた。高校で優勝していい状態で入ってきて、それ以上やらないと、と思っていたら勝手にやられちゃって……」

優勝を決め、次に設定された1メートル78のバーを見て、「あ、高い」と最初は思った。ただ失敗はしたものの、いざ踏み切ってみれば越えられなくはないと思えた。得意なことがわかっている最終学年、リラックスして自己記録を更新していきたいという。

「残りの大会、全部が大学最後のチャンス。楽しまないと損かな」

父方、母方のともに祖母が走り高跳びの選手。気がつけば中学1年で陸上を始めて以来、この種目ひと筋だ。遺伝子に刻まれているとすら言えるその楽しさを「越えた時のうれしさです。あとバーが落ちるか残るかって、見ていればわかる。成長を感じやすいんですよ。あと浮く感覚が楽しくて。浮いているってホントにわかるんですよ」と熱く語る。

卒業後の進路はまだ「考え中」。「自己ベストを更新して、(1メートル)78、80くらいまでは飛びたいですね」。今季の自分への期待もどんどん大きくなっている。

THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori

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