キリンHD、ファンケル買収へ 健康関連事業拡大へ完全子会社化

記者会見で説明するキリンHDの吉村透留取締役常務執行役員(左)と山﨑大護経営企画部主幹=東京都内

 健康食品大手のファンケル(横浜市中区)に対し、キリンホールディングス(HD)が完全子会社化を目指して株式公開買い付け(TOB)に乗り出す。両社が14日の取締役会で決議し、発表した。ファンケルの主力である健康関連事業を取り込み、成長市場に投資を振り向ける。

 新型コロナウイルス禍の健康志向の高まりや長寿化により、主力の酒類市場の縮小が見込まれる一方、健康食品市場は拡大している。キリンHDは2023年8月、オーストラリアの健康食品大手を買収。ファンケルも傘下に収めて「アジア・太平洋地域で最大級のヘルスサイエンス企業」(吉村透留・取締役常務執行役員)を目指す。

 キリンHDは19年、ファンケルに約1300億円を出資し、株式の33%を取得した。残る全株式を1株2690円で今月17日から7月29日まで買い付け、年内の完全子会社化を目指す。買収額は約2200億円を見込む。ファンケルはTOB成立後、上場廃止になる。

 ファンケルは14日の取締役会で、全員一致でTOBに賛同した。持ち分法適用会社から完全子会社に移行すれば、「制限されてきたノウハウや技術情報を共有でき、シナジー(相乗効果)を最大化できる」と島田和幸社長は歓迎。ブランド価値の向上や、オーストラリアのグループ会社との協業で海外展開の加速に期待する。

 キリンHDの23年12月期の健康関連事業の損益は125億円の赤字だった。主力の酒類・飲食と医薬事業に加え、健康関連事業を「第三の柱」(吉村氏)と位置付け、グループの売り上げを30年代に同期比で5倍の5千億円規模に成長させる方針。

© 株式会社神奈川新聞社