なぜ?今季の岡田阪神 好調が長続きしない理由 昨年との違いを評論家が分析

 9回、代打・糸原が左飛を打ち上げてしまい、落胆する岡田監督=撮影・立川洋一郎

 「ソフトバンク2-0阪神」(14日、みずほペイペイドーム)

 代打・佐藤輝のコールに阪神ファンが一番の盛り上がりを見せた。2点ビハインドの九回2死一塁。一発同点。期待は大きく膨れ上がったが、156キロ直球に空振り三振。三者凡退は2度だけ。9イニング中5度も得点圏に走者を送り込みながらも、あと一本が出ず今季9度目の完封負け。前夜は2試合連続完封負けから5-0の完封勝ちを収めたが、連勝とはならなかった。なぜ、今年の阪神は波に乗り切れないのだろうか。

 昨季18年ぶりのリーグ優勝を導いた大山、佐藤輝を筆頭とする打線全体の長引く不振が一番の要因に挙げられるが、昨季との大きな違いも浮かび上がる。

 昨季は143試合で38度の初回得点を数え、26勝10敗2分けで勝率・72.2%。初回得点率は4試合に1度を上回る26.6%の高確率をマークしたが、今季は63試合を消化して、初回に得点を挙げたのがここまで9試合。成績は6勝2敗1分けで、勝率は昨季を上回る75%。だが、初回得点率は14.3%で、7試合に1度の割合にとどまっている。

 6月は12試合で5勝7敗と一進一退を繰り返す中、初回得点は2日のロッテ戦で森下がプロ初の初回先頭打者本塁打を放った1試合だけ。1日の同戦では2死一、二塁の先制機で前川が空振り三振。5日の楽天戦でも1死三塁の絶好機で森下が捕邪飛、近本が一ゴロに倒れて無得点。そしてこの日もノイジーの左翼フェンス直撃の二塁打と近本の二塁内野安打で2死一、三塁としたが、原口が空振り三振に倒れた。

 阪神OBの中田良弘氏は「先発投手で一番難しいのが初回。去年はそこにうまくつけ込めていたけど、今年はそれができていない。大山が離脱してからは、近本と中野の打順が離れてることも影響してるんじゃないかと思う」と指摘した。

 近本の今季第1打席打率は58打数16安打の・276なのだが、4番に座りだした6月1日以降は・250と下がっている。中野に関しては悲しい数字が並ぶ。第1打席は56打数9安打の打率・161で、1番に9試合、2番に3試合入った6月の第1打席打率は11打数1安打の・091。これでは初回得点が入りづらいのも当然と言える。

 中田氏は「やっぱりチカナカが引っ付いてることを相手投手は一番嫌がるわけなんでね。2人とも足があるから、塁に出たらクイックしなきゃいけないし、不安定な立ち上がりだから、その過程でコントロールミスも出る。大山が戻ってくるまでは近本が4番を打つ構想なのかもしれないけど、先制すれば阪神は強いんで、1番・近本、2番・中野に戻して、4番は長打のある森下や調子のいい渡辺という選択肢もあっていいと思うね」との私見を述べた。

 阪神は今季、先制した32試合で23勝8敗1分けの勝率・742を誇るが、先制された31試合では7勝21敗3分けの勝率・250と正反対の数字が並ぶ。

 中田氏は「理想は初回にチカナカの連打で無死一、三塁のチャンスをつくる。もしくは安打、四球から盗塁や犠打を絡めて1死三塁。クリーンアップを迎えるところで相手が前進守備ではなく、通常シフトを敷く可能性が高い場面で、ヒットでなくても犠飛や内野ゴロで1点を奪う。こういったノーヒットで先制点を奪うといったパターンを今年はなかなか見られてない。こういう形を作るためには、近本と中野が1、2番を形成するのが一番だと思う」と、打順を元に戻すことも打開策のひとつではないかとした。

 大山が2軍での再調整を申し出てから、はや10日。その間、9試合のチーム成績は4勝5敗とやや下降気味。岡田監督も日々、策を練っているが、なかなか好結果が長続きしない現状。6月の1試合平均得点は2点で、完封負けが直近4試合で3試合。4番・近本を軸とした打線が得点力アップのキッカケをつかむのはいつになるのか。今はまだ見えない。(デイリースポーツ・鈴木健一)

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