「ボロ」の有効活用法

「ボロ」は馬糞の通称です。馬糞をとるときに使うチリトリみたいな道具は「ボロミ」、カギは「ボロカギ」と呼びます。馬糞が「ボール(球)」に見えるところから、徐々になまっていき、ボロになったという説もありますが、その由来ははっきりとはしていません。今回は、そんな馬たちの落とし物であるボロについて、ご紹介します。

1頭あたりの1日の排泄量

馬たちは1日に体重の1.5〜3%ほどの餌を食べると言われています。500kgあるサラブレッドは、毎日7.5キロから15キロもの餌を食べていることになります。そうであれば、おのずとボロの量も多いはず。なんと、馬が1日に排泄するボロの量は体重の4〜5%程度と言われているんです。サラブレッドなら、1頭あたり20kg〜25kgほどのボロを1日で排出していることになります。これを1日あたり4〜13回前後に分けて排出します。例えば、馬が10回に分けて排泄した場合、単純計算で1回あたりの排泄量は2キロ前後。牧場や乗馬クラブであれば、複数頭の馬が在厩しているでしょうから、ボロを掃除するだけでも、かなりの重労働になりますね。サラブレッドが5頭いれば1日で100キロ以上のボロが排泄される計算になります。

このボロをどのように活用しているか、ご存じでしょうか。馬のボロは肥料や土壌改良用の堆肥として使用されています。ボロの堆肥は農家にも大人気なんです。農業用の重機がなかった時代では、農耕馬が畑を耕すパートナーとして農家で活躍していました。農耕馬に農業を営む上で出てくるワラや野菜くずなどを餌として食べてもらい、排出されたボロから堆肥を作って作物を育てるという循環サイクルが、多くの農家でごく自然に行われていたはず。便利になった今より、はるかにSDGsな生活だったのかもしれません。

馬の堆肥の品質には、さまざまな条件が影響します。例えば、餌。食べるものが違えば、排出されるものももちろん違います。競走馬は負荷の高い運動をこなしながら、上質な筋肉をつける必要があります。そのため、エン麦やたんぱく質などを多く含む配合飼料を与えられています。その結果、競走馬のボロは良質な堆肥になると言われているんですよ。

また、敷料によっても堆肥は変わってきます。おがくずなどは比較的発酵に時間がかからないため、短期間で堆肥にすることができますが、ワラは分解するのに時間がかかるため、堆肥になるにも半年ほどはかかるそうです。

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土壌改良効果

一般的にボロには肥料の効果より、土壌改良の効果の方が高いとされています。肥料は野菜や花など植物の栄養となりますが、堆肥はいい土にするための栄養となるものです。堆肥を用いて土壌を改良するためには、土壌の微生物の餌になる植物性有機物が堆肥に多く含まれている必要があります。この植物性有機物は、草を主食とする牛や馬の糞に多く含まれているんです。そのため、馬の堆肥を土壌にまくと少しずつ改良されていきます。例えば、水はけの悪い固い土壌。作物を植え付けても、根まで酸素が届きづらくなり、植物の育ちはあまりよくありません。しかし、こういった土地にボロの堆肥をまいて耕していくと少しずつ土壌が柔らかくなり、植物のよく育つ土壌になっていくそうです。

馬産地の牧場では、緑が芽吹き始める前にボロの堆肥を放牧地にまきます。こうやって、いい土を作っていくことによって栄養価の高い牧草が生えてきます。牧草の品質は、放牧されている馬たちの体作りに大きく影響を与えると考えられています。競走馬の世界では、土壌の成分分析をして土壌改善を行ったり、専門家を招いて相談をするなど土づくりに力を入れることが一般的になっています。

ボロの堆肥と他の堆肥の違い

他の動物の糞も堆肥や肥料として有効活用されていますが、餌が違うため、堆肥の成分にも違いが表れます。そのため、活用方法も違います。豚や鶏の糞はいい肥料になります。肥料の有効成分にはリン酸、窒素、カリウムなどがありますが、これらの栄養素はたんぱく質や炭水化物が多く配合されている餌を食べる豚や鶏の糞には多く含まれます。しかし、豚や鶏には、病気を防ぐために抗生物質が与えられています。そのまま、糞に排出された抗生物質の影響で土壌に耐性をもった菌が形成されます。その土壌で作られた食物を人間が食することで抗生物質の効きが悪くなることもあるのだそうです。また、鶏や牛の糞には特定の成分が多く含まれることがあり、土壌の成分のバランスにも注意しながら使用する必要があります。

馬の中でも特に競走馬の場合、ドーピングのルールが厳しいため、抗生物質に関する懸念はありません。しかし、安心である一方、効果は穏やか。そのため、ボロの堆肥にひと手間を加えて、肥料としても効果が高いものに仕上げて販売している業者もいます。馬の堆肥は牛の堆肥より価格が高いものの、使用する量が少なくてすむため、そこまで農家の負担も高くはならないそうです。ただし、問題は生産量の少なさ。馬の堆肥は、他の動物の堆肥に比べると、生産量・販売量もとても少ないのです。最近では、引退した競走馬を飼育して、その堆肥を使って作った野菜を売ったり、堆肥を販売したりする農家も出てきました。

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まとめ

いかがでしたか。今回はボロについて深掘りしてみました。乗馬クラブでは近隣の方に譲っていたり、安く販売されていたりします。ご近所に乗馬クラブがあったら、問い合わせてみるのもいいかもしれません。機会があれば家庭菜園に是非、お試しください。

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