【国際バカロレア】復興の担い手育成を(6月15日)

 南相馬市は、国際化に対応した教育プログラム「国際バカロレア(IB)」を、市内の小学校に導入する準備に入った。世界に通用する豊かな人間力を育む活動が、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興を担う人材の育成につながるよう期待したい。

 IBは多様な文化を尊重し、主体的に学ぶ力を育む目的で、スイスに本部を置くIB機構がプログラムを提供している。「探究する」「知識がある」「信念を持つ」「心を開く」「挑戦する」など10の素養や能力を備えた人物像を目標にしている。160以上の国や地域で取り入れられ、日本国内では約240校が認定されている。

 3~19歳を対象に4段階のプログラムが設けられている。南相馬市は初等教育プログラムの小学校での導入を検討している。「私たちは誰なのか」「どのように自分を表現するか」「どのような場所と時代にいるのか」「地球を共有することとは」「世界はどのような仕組みになっているか」など6テーマを探究する。候補校で2年連続で試験的な授業をすれば、認定の申請が可能になる。

 学校教育のカリキュラムの基となる国の学習指導要領は子どもたちが自分の良さを認識し、他者を尊重し、持続可能な社会の創り手になる目標を掲げている。IBが描く人物像と重なり、双方の方向性には親和性がある。従来の学習カリキュラムを踏まえながら、国際化社会を生き抜く力を養ってもらいたい。

 先進校の事例では、IBのテーマ導入に際して、授業を再構築する必要が生じる。現場の教職員にとって研修、独自の計画策定、実施後の評価などの業務が増すと想定される。教職員の働き方改革が求められる中、事前の説明や人員配置などの負担軽減への配慮は欠かせない。

 相双地方では、南相馬市の福島ロボットテストフィールドや浪江町の福島国際研究教育機構(F―REI、エフレイ)で先端技術の研究が進められている。IBで国際人としての基礎を培った子どもたちが、将来こうした機関で活躍できるのが地域にとっては望ましい。中学校や高校でも特色を持った教育プログラムを展開するよう議論されるべきだろう。(平田団)

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