伊勢路は「観音浄土の道」 本紙政経懇話会、三石氏が講演 三重

【伊勢新聞政経懇話会で講演する三石氏=津市新町のプラザ洞津で】

 伊勢新聞政経懇話会の6月例会は14日、三重県津市新町のプラザ洞津で開いた。熊野古道伊勢路語り部友の会顧問の三石学氏が「熊野古道伊勢路~世界遺産登録までの歩みと世界遺産の意義」と題して講演し、世界遺産登録20周年を迎える熊野古道の魅力を語った。

 三石氏は元熊野市職員。同市文化財専門委員長。熊野古道伊勢路を発掘、調査研究し、世界遺産登録でユネスコ・イコモス調査団の説明員を担当した。熊野を全国に発信する「熊野旅の文化企画」代表として旅の企画とガイドに携わる。

 三石氏は「埋もれた熊野古道の発掘は誰も見向きもしなかった。山道で石畳は見えなかった。市役所に来る前の2時間、退庁してから2時間、15年間続けた。変な目で見られたが、めげずに。土の下に歴史が埋もれている、非常にロマンがあると思っていた」と振り返った。

 「鎌倉時代の波田須の道が伊勢路で一番古いが、区長から呼ばれ、墓がある場所まで石畳が滑って危ないから舗装したいと言われた。待ってください、歴史的な道だから寝転んでも反対しますよ、と説き伏せたが難しく、市長に来てもらった。残ってよかった」「価値観の相違が一番大変だった。世界遺産になってから協力してくれる。地元に対する誇りを持つのが一番大事。モチベーションが高まる」と強調した。

 熊野古道は伊勢、吉野・大峯、高野山、熊野三山という聖地をつなぐ道で、伊勢路は「浄化される、来世が約束される観音浄土の道」と説明。

 増加するインバウンド(外国人観光客)を巡り、「欧米人はロングトレイルで、1、2カ月の休みを取って全部の道を歩く」「語り部は150人いて、外国語の語り部はフルに稼働している。1日20―30キロ歩く」と語った。「最近案内したフランス人は自然信仰が印象に残ったと言っていた。神様を目の前に見れる、触れようと思えばさわれる。自然から生まれた神様は身近にいる存在」と述べ、日本の宗教が分かる熊野古道の良さを話した。

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