「田代太鼓」誕生から38年 たった1人の打ち手が郷土芸能の継承に向け奮闘 担い手確保のため育成に力【秋田発】

秋田・大館市に伝わる郷土芸能「田代太鼓」は、団体発足以来、祭りなどで演奏を披露し地域を盛り上げてきたが、今や打ち手はたった1人になってしまった。郷土芸能の継承に向けて奮闘する男性を取材した。

20人いた打ち手も現在はたった1人

力強い太鼓の音色を奏でているのは、田代太鼓振興会の会長・富樫滋さんだ。田代太鼓は大館市田代地区の郷土芸能で、地元の町おこしを目的として活動が始まったという。

富樫さんは、「昭和60年(1985年)11月の総会で創立したが、和太鼓をやったことがある人は田代地区にはいなかった。立ち上げた前会長もやったことがなくて、見るのは好きだったようだ」と語る。

当初は初心者ばかりだったが、隣県・岩手の太鼓団体から指導を受けて徐々に活動を拡大。地元で開かれる祭りなどに出演し、地域を盛り上げてきた。田代太鼓には太鼓を力強く打つだけでなく、バチを使った振りがあるなど様々な特徴がある。一時は20人ほどの打ち手がいたという。

しかし、「現在の振興会の打ち手会員が私1人になっている」と富樫さんは話す。少子高齢化などが原因で会員が減少し、2020年以降、打ち手は富樫さんただ1人となった。そのため、イベント出演からも足が遠のいている。

この現状について富樫さんは、「先に立つ者が、自分たちだけで頑張ってきちゃったところがある。子どもたちに『大人になったらまたおいで』という誘い方を、もっと前からやっていればよかったと思う」と語る。

小学校の太鼓クラブで児童に指導

5月15日、子どもたちが富樫さんの活動場所にやってきた。富樫さんは「担い手の確保」という喫緊の課題を前に、後進の育成に力を入れている。

この日は、地元の早口小学校の太鼓クラブに参加している児童に演奏の指導をしていた。2024年度、校内で演奏を披露するという子どもたちの表情は真剣そのものだ。

「基礎の1~7段が難しかった。いっぱい練習する」と話す児童や、かっこいいから太鼓クラブに入ったという児童は「楽譜を見なくても覚えられるようになりたい」と意気込む。
前回楽しかったから参加したという児童も「練習でやった通りに客に見せたい」と話す。

公民館で週2回の無料体験会も

富樫さんは今、活動場所となっている公民館で週2回、無料の体験会も開催している。

富樫さんは、「見に行ってみようかな、打ってみようかなという気持ちでいい。要項には『上履き持ってきて』と書いているが、なしでも構わない。入会にこだわらずに、和太鼓を普及させながら柔軟に対応して誘っていきたい」と語った。

団体発足から38年。地元の郷土芸能を次世代につなぐため、富樫さんの奮闘は続く。

(秋田テレビ)

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