ユーミンに学んだ「チャレンジ精神」 異色の盆栽師が語るBONSAI入門

長谷川哲也さんが手がけたシンパクの小品盆栽=高砂市阿弥陀町地徳

 兵庫県高砂市で盆栽園「地徳小屋」を営む盆栽師、長谷川哲也さん(57)はかつて、著名ミュージシャンの全国ツアーに帯同する音響エンジニアだった。ある大物アーティストに学んだ「チャレンジ精神」で盆栽の裾野を拡大する長谷川さんは、海外でも人気を集めるBONSAIの魅力を「誰でも始められる気軽さと、飾ったときの美しさ」と語る。(斉藤正志)

 20代からツアーにも帯同していた長谷川さんに、最も特に印象を残したのが松任谷由実さんのコンサートだった。1990年代は、機材を載せた11トントレーラーなど二十数台と、スタッフ約80人を乗せたバス2台で移動し、「大名ツアー」と呼ばれていた。

 長谷川さんは「ユーミンさんは徹夜のリハーサルなど、いつも新たなことにチャレンジしていた。しんどいのは当たり前。いいコンサートをつくるために、スタッフみんなで高い壁に挑戦して、それを乗り越えていた」と振り返る。

 長谷川さんは2017年に狭心症を患い、仕事の拠点を地元の加古川市に移した。その前年に同市の盆栽園で盆栽の修業を始めていた。65歳以降のセカンドキャリアで本格的に取り組もうと思っていたが、コロナ禍で仕事がなくなり、55歳から前倒しで盆栽園を開業した。

 高齢者の趣味というイメージが強い盆栽だが、長谷川さんの教室には20、30代の生徒もいる。長谷川さんは「1万円もあれば始められる。マンションのベランダでもできる」と話す。

 盆栽の木は松柏(しょうはく)類としてシンパク、クロマツなど、雑木類としてピラカンサなどの実もの、モミジ、ケヤキなどの葉ものがあるが、初心者には、水や作業に強いシンパクを勧め、「樹高10~15センチのものなら2千~3千円ほど」という。

 道具もはさみは盆栽用(2500円程度)を勧めるが、ピンセットは汎用品、針金かけに使う「やっとこ」はラジオペンチ、針金切りはニッパーなどで代用できる。鉢も最初は数百円の仕立て鉢で十分だという。

 長谷川さんは「デザインを考え、針金をかけるなどの作業をして、自分が思う通りにできた時は達成感があります。そして、飾ったときの美しさというのが一番」と語る。

     ◇

 長谷川さんに聞いた「BONSAI入門」のQ&Aでは、盆栽の基本や始め方から、うまく管理する方法、鑑賞の仕方まで、初心者が手を出す際に知っておきたい知識とコツを教えてもらいました。

 長谷川哲也(はせがわ・てつや) 兵庫県加古川市出身。同市の盆栽園「柏修園」で修行し、2022年に同県高砂市阿弥陀町地徳に盆栽園「地徳小屋」を開いた。近くで松葉コーヒーなどを提供する「松カフェ」も開業。盆栽教室は神戸、姫路、明石、加古川、高砂市で開いている。長谷川さんTEL090.2047.4244

© 株式会社神戸新聞社