プーチン大統領、ウクライナ停戦の条件を示す 「最後通告」とウクライナ反発

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は14日、ウクライナでの停戦条件として、ロシアが併合したと主張する領土からウクライナ軍が撤退することを求めた。また、ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)加盟を完全にあきらめることも和平交渉開始の条件とした。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はこれに反発し、まるでナチス・ドイツのヒトラーのような「最後通告」だと非難した。

プーチン大統領はこの日、ロシアが各国に派遣する大使をモスクワに集めた会議で発言。ロシアが部分的に占領している4つの地域(ドネツク、ルハンスク、ヘルソン、ザポリッジャ各州)から、ウクライナ軍が撤退することを求めた。

さらに、ロシア軍の進撃を止めさせるには、NATO加盟をウクライナが正式にあきらめる必要があるとも述べた。

プーチン氏は集まった大使たちを前に、「(ウクライナ政府が)そうした決定の用意があると宣言すれば(中略)我々はただちに、文字通りその瞬間に、戦闘停止を命令し、交渉を即座に開始する」と話した。

これについてゼレンスキー大統領は同日、イタリアのテレビ局に対して、「一連の発言は、最後通告だ。ヒトラーが『チェコスロヴァキアの一部をよこせ、そうすればここで打ち止めにする』と言ったのと同じことだ」と非難した。ゼレンスキー氏は主要7カ国(G7)首脳会議に招かれて、イタリアを訪れていた。

ゼレンスキー大統領は以前から、クリミアを含むウクライナの全領土からロシアが撤退するまで、ウクライナはモスクワと交渉しないと繰り返している。

ウクライナ大統領顧問のミハイロ・ポドリャク氏は、この提案を「完全な見せかけ」で、「常識を逆なでするものだ」と批判した。

アメリカのロイド・オースティン国防長官もロシアの要求を一蹴し、「プーチンは主権国家ウクライナの領土を不法占拠している」、「その彼がウクライナに対して、和平実現のためああしろこうしろと指図できる立場にない」と批判した。

NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は、プーチン氏の提案は「誠意あるものではない」と述べた。

ウクライナ情勢については15日にも、90カ国の首脳がスイスで会合を開く予定。ロシアはこのサミットに招かれていない。

カーネギー国際平和財団ロシアユーラシア・センターのロシア研究者、タティアナ・スタノワヤ氏は、ウクライナ和平を協議するこの首脳会議が始まるのを前に、会議の評価を落とすことを意図したタイミングでの発言だと指摘。譲歩の余地を示さずに「最大限」の要求をしている内容だと説明した。

スイスで平和サミット

スイス中部ルツェルン近郊のビュルゲンシュトックで15日に開かれるウクライナ平和サミットには、ゼレンスキー大統領も出席する。

スイス政府は、サミットの目的は「ウクライナの公正で永続的な平和に向けた道筋を、国際法と国連憲章に基づき、世界の指導者たちが協議する」ことだと説明している。

カマラ・ハリス米副大統領、エマニュエル・マクロン仏大統領、オラフ・ショルツ独首相、ジョルジア・メローニ伊首相、ウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長らが出席する。

ロシアは招待されておらず、中国もロシアの出席がなければ出席しない方針を示している。

この平和サミットに先駆けてG7首脳はすでに、凍結ロシア資産の利子をウクライナへの軍事援助に活用することで合意している。

2022年2月にロシアがウクライナに全面侵攻した後、G7各国と欧州連合(EU)は約3250億ドル(約51兆円)相当のロシア資産を凍結した。この資産は年間約30億ドルの利子を生んでいる。

G7の計画ではこの30億ドルを、国際市場で資金調達するウクライナへの融資500億ドルの年利の支払いに充てる。

この資金がウクライナに届くのは年末になる見込みで、ウクライナの戦争遂行と経済を支援するための長期的な解決策になるものと見られている。

G7サミットの傍ら、アメリカとウクライナは10年間の二国間安全保障協定にも調印。ウクライナ政府はこれを「歴史的」な合意と歓迎した。

(英語記事 Putin lays out his terms for ceasefire in Ukraine

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