「おねがい わらって」我が子の笑顔が失われていく 世界でも症例の少ない難病と闘う女の子とその家族の今

赤ちゃんは生後2ヶ月ごろになると、親のあやしかけに対して時折、笑顔を返してくれるようになります。育児の苦労が報われるようなとても幸せなひとときですよね。

そんな愛おしい我が子から日に日に笑顔が消えていく苦悩…。「おねがい、笑って」

生後3ヶ月でウエスト症候群と診断され、現在は重度心身障がいを抱えるめいちゃん。

毎日増えていくてんかん発作と戦う不安な日々や、小さな身体で受けた手術と治療の数々など、いくつもの難題を乗り越え、家族に支えられて今を過ごすめいちゃんの表情はとても穏やかで、かわいらしい笑顔を見せてくれています。

そんなめいちゃんを襲った病とはどのようなものなのか、めいちゃんとともに生きる家族について母親である西山(@04mai03)さんに聞きました。

突然起きたはじめての発作

度重なる発作の影響で笑顔がなくなっていく(@04mai03さんより提供)

めいちゃんがはじめててんかん発作を起こしたのは生後3ヶ月のときでした。抱っこで授乳している際、1度大きく痙攣。その後5分間に15回の痙攣がおき、異常を感じた西山さんはめいちゃんを連れて病院に行きます。

焦りと不安の中、めいちゃんの痙攣の様子を動画に撮っていた西山さん。それを見た医師から入院、検査をすすめられました。検査の結果、めいちゃんの脳波に“ヒプスアリスミア”という異常が見られたため、※ウエスト症候群と診断されました。

ウエスト症候群と診断 入院中のめいちゃん(@04mai03さんより提供)

めいちゃんは度重なるてんかん発作の症状を和らげるため、※ACTH療法という治療と※脳梁離断手術を受けます。めいちゃんと家族のがんばりが実り、てんかん発作は2回目のACTH治療後にみられなくなりました。

脳梁遮断手術をうけためいちゃん(@04mai03さんより提供)

その後、めいちゃんが生後10ヶ月のとき、遺伝子検査で異常が見つかり、発達に遅れが出ているのはこの遺伝子異常が原因だということがわかったのです。

※ウエスト症候群
乳児期に起こる薬剤治療を行っても発作がとまりにくい(薬剤抵抗性)てんかんで、別名「乳児てんかん性スパズム症候群」、「点頭てんかん」とも呼ばれ、多くは重篤な脳障害を背景に生後3~11ヶ月時に発症します。てんかん発作は、てんかん性スパズム、別名「点頭発作」と呼ばれる特徴的な発作です。また脳波検査でヒプスアリスミアと呼ばれる特徴的なてんかん性異常波があり、多くの患者さんでは発達の遅れを認めます。既知の小児薬剤抵抗性(難治)てんかんの中では最も人数が多いとされています

※ACTH療法
副腎皮質刺激ホルモン注射を2~3週間程度連日注射し、その後に徐々に中止していく治療法であり、1ヶ月程度の入院が必要です。

※脳梁離断手術
脳梁は左右の大脳半球を連絡する太い繊維の束で、脳梁を離断することにより大脳の一方で生じたてんかん性の興奮が両側に拡がらなくなり、その結果発作が抑制されると考えられています。脳梁離断術は発作の消失を目指す根治手術ではなく、症状を和らげる緩和外科手術に位置づけられています。

“重度心身障がい”重くのしかかる重圧から母親を救ったひとこと

医師から「重度心身障がいです」と告げられたとき、めいちゃんは追視をしない、手足も自分の意志で動かせない、そんな状態でした。

我が子の姿をいつもみていた西山さんは、頭ではわかっていたはずでしたがやはり医師から伝えられたときはかなりショックだったと話します。

「重度心身障がい」という言葉、さらにはかなり稀で症例が少なく今後の見通しが立たない病気。その事実に思い悩む西山さんに、母親は「そのままでいいやん」と言ってくれました。その言葉をきっかけに「周りと違うけど、めいはめいなんだ」と思えるようになったといいます。

現在4歳のめいちゃんは、今のところ医療的なケアは必要としておらず、特徴的な症状である「重度の低緊張」のために身体の体勢を保持する専用の椅子や抱っこ紐を使って生活しています。

めいちゃんの遺伝子異常は世界でも症例が少なく、めいちゃんがこの先どれだけ発達していくのかは未知数です。

4歳になったとき主治医の先生がめいちゃんの様子をみて「首は座ってるでいいんじゃないかな?」と言ったそうです。ゆっくりですが前に進んでいるめいちゃん。この先もひとつ、またひとつと、できることが増えていくことが期待できますね。

母親である西山さんが気にかけるのは自分たちがお世話ができなくなったときのことでした。現代の医療では将来めいちゃんが自分の力だけで生活することは難しいでしょう。そうなったときにめいちゃんが笑顔でおだやかに過ごせる場所を見つけたいと、西山さんは話してくれました。

めいちゃんと兄妹

お姉ちゃんになっためいちゃん(@04mai03さんより提供)

西山さん一家にはお子さんが3人います。9歳の蒼佑くんと、2歳の紡生ちゃんです。3人兄妹の普段の様子を西山さんに聞いてみました。

蒼佑くんにとってめいちゃんは「守るべき存在」「大切な妹」「病気と闘っている強い妹」で、常に優しく接しているということでした。

妹の紡生ちゃんは、産まれたときから当たり前にめいちゃんがそばにいました。どこの家庭でも見られるように、持っているおもちゃがほしいと思えば取り上げるし、あげたいと思ったらあげる。気に入らなければ叩くし、泣いていたらヨシヨシするのだそう。

おもちゃのとりあいっこ(@04mai03さんより提供)

兄妹にとって、それが自然な家族の形でしょう。そんな兄妹の日々のやり取りはInstagramの投稿に度々登場し、見た人をほっこりした気持ちにさせてくれます。

兄妹で仲よく遊ぶ3人(@04mai03さんより提供)

SNS発信のきっかけと西山さんが伝えたいこと

めいちゃんが生後3ヶ月で初めて発作をおこしたとき、西山さんは怖くなりネットですぐに検索しました。そこで同じように痙攣を繰り返す症状の子どもをYouTubeで見つけ「めいとまったく同じだ」と思ったのです。そしてその動画をきっかけに、急いで病院に行き、早期から治療を受けることができました。

西山さんは自身がそうだったように、めいちゃんに起こった出来事を発信していくことで、誰かの役に立つかもしれないと投稿を始めました。

SNS投稿をしていく中で、同じ境遇の方と出会いその声に共感し励まされているといいます。

Instagramの投稿に登場する現在のめいちゃんやめいちゃんの家族にはたくさんの笑顔が溢れています。そんな家族の姿に元気や勇気をもらい、一歩踏み出す力をもらっている方も多いはずです。

「今、お子さんの発達異常や病気がわかり、暗闇の中にいるパパやママに“めいちゃん”の存在を知ってもらい『1人じゃないよ。同じ思いのママやパパがいるよ 』と伝えたい」と西山さんは語ってくれました。

お子さんの病気や発達に不安を抱える多くの方に、西山さんの思いが届きますように。

【引用】
難病情報センター『ウエスト症候群 指定難病145』『ACTH療法』:https://www.nanbyou.or.jp/entry/4414
てんかん情報センター 『脳梁離断手術』:https://shizuokamind.hosp.go.jp/epilepsy-info/news/n5-4/

ほ・とせなNEWS編集部

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