30歳で世界最高峰リーグに挑戦した代表キャプテン・遠藤航 日本をまだ見ぬ壁の向こうへ導くための思考

一流選手には卓越した技術だけでなく、それを可能にするための思考がある。

世界最高峰の壁を越え、日本がまだ見ぬ壁の向こうへ導く日本のキャプテン・遠藤航がたどり着いたその思考方法を聞いた。

世界最高峰・プレミアリーグへの挑戦

2023年8月、日本のキャプテンはイングランドの名門リヴァプールへの移籍を発表した。

遠藤:
個人的には30歳でリヴァプールに挑戦できたことがすべてだと思います。その経験ができる人がそもそもなかなかいないので。

4季在籍した、ドイツ・シュツットガルトでは球際での勝利を指標するデュエル数で2季連続リーグトップをマーク。その活躍が認められ、30歳でのビッグクラブ入りを実現させた。

遅咲きともされる遠藤のキャリアアップに、イタリアの名門・インテルで8季プレーした長友佑都も驚きを隠せなかったという。

長友:
年齢を重ねてからトップ(クラブ)に行くのってより難しいので。“え!すげぇな”って。

日本の期待を一身に背負いビッグクラブへ移籍するものの、シーズンが幕を開けると遠藤の居場所はもっぱらベンチ。

交代出場する機会もあったが、残りわずかな時間では満足なプレーはできず不完全燃焼の日々。

遠藤:
プレミアリーグ自体の一人一人のこの能力は高いですし、スピード感やフィジカル的なところも含めてすべてにおいてレベルは違うかなと思います。

これまでにいたリーグとの明らかなレベルの違いを感じてはいたが、不安はなかった。

遠藤:
プレッシャーもみんなに期待されていなかった分なかったというか、もともとそんなにプレッシャーを感じるタイプではないんですけど。とにかくチームのためにやりたいというか、そういう意識でやっていましたね。

出場時間に恵まれず、ベンチを温める日々の中でも決して腐ることなく、遠藤はチームのために己を磨くことをやめなかった。

不遇な状況を一転させたターニングポイント

そして訪れたターニングポイント。

遠藤:
フルハム戦のゴールが一番ターニングポイントでした。

2023年12月、シーズン中盤の第14節フルハム戦。後半終了間際にその時は訪れた。1点ビハインドの状況で交代出場した遠藤はチームを救う値千金の同点ゴールを放つと、その後リヴァプールは逆転。

逆転劇的勝利の立役者となった遠藤。この日を境に周りからの目が変わったという。

遠藤:
そのゴールがっていうわけではないですけど、少しずつチームメートも自分の良さとかをわかってくれているし、試合を重ねるごとに周りも信頼してくれているのは感じました。

不遇の状況を一つのプレーで打破して見せたのだった。

この一戦以降スタメンに定着した遠藤の自信をより強固にした試合がある。

遠藤:
ひとつ自信になったのは12月のアーセナル戦。点を取って以降、試合には出させてもらっていましたけど、本当にトップチームと対戦していた訳ではなかったので。

イングランドを始めブラジル、ベルギー、ドイツなどサッカー強豪国の代表選手が揃う超がつくほどの名門チーム「アーセナル」。

当時リーグ首位を走る、トップオブトップのタレント軍団と対峙しても遠藤がひるむことはなかった。1対1の局面もことごとく勝負しその強さを発揮した。

遠藤:
そういうビッグチームと対戦する機会で自分が高いパフォーマンスを出せたのは、かなり自信になりました。

遠藤はこの月、日本人初となるチームの月間MVPを獲得した。

華麗なる逆襲劇を可能にした“遠藤航の思考”

シーズン序盤の苦境から一転、華麗なる逆襲劇を可能にした“遠藤航の思考”があった。

遠藤:
自分自身あまり他人に相談するとかないんですけど、自分自身がブレないことが一番大事だと思っているので。周りはいろいろ言うと思うんですけど、結局最後に結果を残すために自分が何をしなきゃいけないのかを常に考えて行動することが大事だと思いますし、それは意外とできそうでできないことだと思うので、それをやり続けられたのが最終的に結果につながったと思います。

人に相談することなく、自分自身がブレずに考えそれを貫く。

この思考はくしくも、先日現役を引退した日本代表キャプテンの先輩・長谷部誠と通ずるものがあった。

引退会見後のインタビューで長谷部はこう話す。

長谷部:
あまり人に相談しないんですよ 誰にも。自分で考えて自分で決断して自分で突き進むタイプ。

これこそが国を背負い、けん引する男たちの自分を作る方程式なのかもしれない。

日本が超えるべき“壁”の向こう側に導くために

そして青のユニホームを身にまとい越えるべき壁「ワールドカップベスト8の壁」。

これまで幾度となく挑戦し、跳ね返されてきた最大の壁である。

この壁の大きさは遠藤自身も感じていた。

遠藤:
壁を感じざるを得ないというか。それも良くないと思っていたりするんですけど、みんなその壁っていうのを意識しすぎているみたいなところはあると思うので。

だからこそ次のワールドカップの目標というのは、そのベスト8を超えるという意味ではなくて“ワールドカップ優勝”にした方がその壁も超えていける。

ベスト8を最終目標にするのではなく、優勝に向けた“過程”と考える。

とてつもなく高い頂。それでも仲間を信じ、己を高め続ける。

遠藤:
個人としては成長できていると思うので、それをチームとして(各個人の)特徴を最大限生かしながらやっていくのが一番だと思うので。一番は個の成長。それを代表でも同じように一人一人プレーできるかどうかが大事。ここでさらにチームとしてステップアップしていく、もう一段階ギアを上げて成長していく段階です。

まずはワールドカップアジア二次予選を6戦全勝、無失点で最終予選に弾みを付けた日本代表。

遠藤:
今回の2次予選の試合もそうですけど、勝利していくことが大事だと思いますし、そういった小さな壁を一つ一つ乗り越えていくことが最終的にベスト8の壁を超えるために必要なものだと思うので、その壁を超えられればいいと思います。

壁を超える戦いはもうすでに始まっている。

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