ヨーロッパ現代史上、類を見ない大事件「アルド・モーロ誘拐事件」の裏側で何が起こっていたのか?『夜の外側 イタリアを震撼させた55日間』

『夜の外側 イタリアを震撼させた55日間』©2022 The Apartment – Kavac Film – Arte France. All Rights Reserved.

「第75回カンヌ国際映画祭」カンヌ・プレミア部門に正式出品された巨匠マルコ・ベロッキオ監督の『夜の外側 イタリアを震撼させた55日間』が、8月9日(金)より公開される。このたび、本ビジュアルと本予告編、場面写真が解禁。

さらに、映画評論の世界でも第一線で活躍し続け、映画ファンから厚い信頼を寄せられている映画評論家・秦早穗子氏と、150冊に及ぶ著書を出版し、幅広い世代から支持を得る映画誌・比較文学研究家の四方田犬彦氏からコメントが到着した。

「アルド・モーロ誘拐事件」を描く

本作は、巨匠マルコ・ベロッキオが、ヨーロッパ現代史上、類を見ない大事件「アルド・モーロ誘拐事件」を題材に、壮大な人間模様を、史実にフィクションを織り交ぜながら力強くも絢爛たる筆致で描き切った一大巨編。1978年3月のある朝、元首相で、キリスト教民主党の党首のアルド・モーロが、極左武装グループ「赤い旅団」に襲われ、誘拐された。冷戦下で混迷を極め、テロリズムや暴動が蔓延り、“鉛の時代”と呼ばれていたイタリアで起きた国家を揺るがす大事件の裏側で、その時一体何が起こっていたのか。ベロッキオは、“羅生門方式”とも言える、事件に関わった人物たちのそれぞれの6つの視点から再構築した。

主演は、『エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命』(23)での好演が記憶に新しいファブリツィオ・ジフーニ。ベロッキオはジフーニに対して、「彼は疑いの余地なく、アルド・モーロそのものだ」と語り、ジフーニは、「第78回ナストロ・ダルジェント賞」「第68回ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞」で最優秀主演男優賞を受賞した。妻エレオノーラ役を演じたマルゲリータ・ブイも、「第78回ナストロ・ダルジェント賞」で最優秀主演女優賞を受賞。また時の教皇パウロ6世を演じた名優トニ・セルヴィッロは、「第68回ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞」助演男優賞にノミネートされた。ほかにもイタリア映画界を代表する錚々たる俳優たちが脇を固める。

本ビジュアルは、ティザーに引き続き赤を基調とし、手で顔を覆い隠す象徴的なアルド・モーロを中心に、本作の主要登場人物たちが周縁を囲った。モーロの写真の横には、劇中で「赤い旅団」に監禁され50日以上が経ったモーロが、神父に告解する場面で吐露する、「生きたいと願うことの 何が狂っていますか?」という言葉が印象的に映えるデザインとなった。

予告編は、本編でも使われているジャネットの「Porque te vas」にのせて、アルド・モーロが「赤い旅団」に誘拐され、家族をはじめ、政府関係者や教皇が戸惑う姿や、赤い旅団のメンバーが決起する姿などがリズミカルに映し出され、ラストは、モーロが神父に告解し、キャッチコピーの言葉が印象的に響く。

また、日本での上映形態が決定した。イタリア本国での劇場公開時の上映形態に則り、前編(Ⅰ~Ⅲ)と後編(Ⅳ~Ⅵ)、各170分に分けて上映され、上映素材もイタリア劇場公開版となる。

<コメント>

四方田犬彦(映画誌・比較文学研究家)
これは悪と背信の叙事詩である。
また愛と期待のメロドラマでもある。
ベロッキオはつねに家庭と権力、夢と解放を描いてきた。
要するに、イタリアのすべてを描いてきたといえる。

秦早穗子(映画評論家)
1978年。ひとりの政治家の誘拐と殺人。
ローマ教皇から、全ての政党と家族を巻き込む。
いやイタリア中を揺るがす。政治における権力闘争と金。
マフィアの暗躍、更に大きな力が介入したかも。夜の闇の内と外。
マルコ・ベロッキオの情熱と理性が、我らの心に火をつける。

『夜の外側』は8月9日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国ロードショー

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