米連邦最高裁、殺傷力高める連射装置の禁止は「違法」

アメリカの連邦最高裁判所は14日、半自動小銃に取り付けて高速の連射を可能にする銃床「バンプストック」の規制について、違法との判断を示した。

連邦最高裁は賛成6、反対3で、政府には銃の付属品を規制する権限がないと判断した。

バンプストックは、2017年10月にネヴァダ州ラスヴェガスのコンサート会場で、計60人が犠牲になった銃乱射事件で使用された。これを受けて、当時のトランプ政権が販売・所持を禁止した。

しかし、テキサス州の銃砲店オーナーがこの規制に異議を唱え、政府を相手取って提訴。連邦法が(一部の例外を除いて)ほとんどの「機関銃」を違法とする中、バンプストックを装着した銃も機関銃と定義するのは、過剰な規制だと原告は主張した。訴訟は連邦最高裁まで至った。

アメリカの連邦法は、機関銃の禁止が開始された1986年5月19日以降に製造された機関銃の譲渡や所持を禁止している。ただし、それ以前に合法的に入手した機関銃の譲渡や所持は合法。

最高裁は、部品を装着した半自動小銃は、連邦法が定める機関銃に相当しないとの判断を示した。

保守派のクラレンス・トーマス判事は多数意見で、司法省のアルコール・タバコ・火器および爆発物取締局がその権限を「逸脱」したと書いた。

保守派判事が多数を占める最高裁は、機関銃の法的定義の一部を引用し、バンプストックを装着したライフルは「『引き金の1回の操作で』1発以上の発射はできず、できたとしても『自動的に』発射できない」と述べた。

この多数意見に反対した判事3人は、リベラル派のケタンジ・ブラウン・ジャクソン、エレナ・ケイガン、ソニア・ソトマヨール各氏。

ソトマヨール判事は反対意見で、「当裁判所は本日、バンプストックを民間人の手に戻すことになり」、「人の命を奪う結果につながる」と書いた。

バンプストックを装着した武器を機関銃として認めるべきかについては、「アヒルのように歩き、アヒルのように泳ぎ、アヒルのように鳴く鳥を目にすれば、私はその鳥をアヒルと呼ぶ」と、ソトマヨール判事は書いた。

1986年の銃火器法は、機関銃を「引き金の1回の操作で、手動による再装填なしに、自動的に1発以上の弾丸を発射する、あるいは発射するように設計されている、あるいは発射するよう速やかに復元可能な武器」と定義している。

3月の最高裁審理では、バンプストックを付けた銃の発射方法が機関銃とは厳密には異なることに注目した一部の判事が、禁止に懐疑的な態度を示していた。

保守派のニール・ゴーサッチ判事は当時、「この品目を違法とすべき理由」は理解できるとしながらも、禁止するのは明らかに議会の役割だと述べた。

これに対してジャクソン判事は、バンプストックはまさに「その殺傷力を理由に議会が禁止しようとしていた武器の種類」に含まれると反論していた。

バンプストックは、ライフル銃の反動を利用して、複数の弾丸を素早く発射する。肩に当てる銃床に代わり、使用者の肩と引き金にかけた指の間で銃を前後にスライドさせる。「バンプ」と呼ばれるその動きによって、使用者は指を動かさなくても銃を発射できる。

ラスヴェガス銃乱射事件の犯人は、12丁の半自動小銃にバンプストックを装着していた。その結果、大半の機関銃と同じ速度で、毎分数百発の弾丸が発射可能だった。銃撃犯は音楽祭に集まっていた60人を殺害し、数百人を負傷させた。

バンプストック禁止は、トランプ前政権が導入した。ドナルド・トランプ前大統領の選挙対策広報担当はBBCに対し、「裁判所が判断を下した。その決定は尊重されるべきだ」と語った。

ジョー・バイデン大統領の報道担当は、最高裁の判断を批判。「戦争用の兵器が、アメリカの市街地にあってはならない」と述べた。バイデン大統領とトランプ前大統領は11月の大統領選を目指して、6月27日に討論会に臨む予定。

(英語記事 US Supreme Court lifts ban on gun bump stocks

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