新卒社会人、求人で「初任給25万円」だったのに、振り込みが「20万円」ほどで驚き! これって「計算ミス」なの? 給与から引かれる金額を解説

額面給与と手取り給与の違い

口座に振り込まれる給与は、社会保険料や税金を引いたあとの手取りの金額です。求人に記載されている給与は通常「額面給与」であり、社会保険料などを差し引く前の給与額が書かれています。

これは求職者をだましているわけではなく、初任給25万円となっている場合、実際に会社が支払う給与は25万円です。本来は、もらった給与に応じて社会保険料や税金を自分で納めなければならないのですが、日本では会社が代わりに社会保険料などを差し引いて、会社経由で納付するルールになっています。

手取り給与の目安

手取り給与がどれくらいになるかというと、ざっくり額面の75~85%で計算できます。例えば、年収が300万円の場合、225万~255万円が手取りでもらえる年収の目安になります。

給与から天引きされるもの

税金など給与から引かれるものと注意事項について、それぞれ説明します。

所得税

所得税は給与額に応じて、税率が5%~45%の間で変わります。年収をもとに「所得」を算定し、所得に税率をかけて所得税の金額を出します。

例えば、年収300万円の場合、給与所得控除が98万円、さらに基礎控除で48万円控除されるため300万円-(98万円+48万円)=154万円です。ここに社会保険控除を差し引いて課税所得を算出しますが、課税所得は194万9000円以下だと税率は5%になります。

会社員の場合、年末近くになると会社で年末調整が行われ、支払うべき所得税の金額が決まります。会社の指示に従って、用紙の記入や必要書類の提出を行ってください。年末調整は、給与から源泉徴収された税額の合計が、本来支払うべき年税額と比べ足りない場合や、逆に払い過ぎた場合に調整を行う作業です。

払い足りない分は給与から追加で徴収され、逆に払い過ぎた分はお金が戻ってきます。年末調整で所得の控除が入るので、大抵はお金が戻ってきます。

なお、副業をおこなっている場合には、注意が必要です。副業で稼いだ金額が1年で20万円を超える場合、自分で確定申告をする必要があります。副業をする場合は稼ぐ金額に気をつけましょう。

住民税

住民税は住んでいる場所によって支払う金額が変わる税金です。住民税には年収額に比例して支払う金額が変わる所得割と、住んでいる場所によって定額を支払う均等割などがあります。

毎年5~6月頃に、地方自治体から「住民税決定通知書」が勤務先に送られ、徴収される住民税の金額が知らされます。ただし新卒社会人の場合、初年度は住民税の徴収がないことがほとんどです。住民税は前年の所得に対して納める税金のため、最初に年末調整をした翌年の6月(社会人2年目)より給与から引かれます。

社会人2年目からは、給与から天引きされる金額がさらに多くなることに留意しておきましょう。

社会保険料

社会保険料として、健康保険料と厚生年金保険料、雇用保険料が引かれ、40歳以上の場合は、介護保険料も引かれます。社会保険料は給与額から「標準報酬月額」を算定し、保険料率をかけて金額を算定します。厚生年金保険料については支払う額によって、将来もらえる年金額が変わります。

標準報酬月額については、2年目以降は4月・5月・6月の給与を平均した金額によって決まる点に注意が必要です。その年の9月から翌年8月までの支払額に反映されます。4~6月にたくさん残業をして、それらの月の給与が大幅に増えている場合、9月以降に支払う社会保険料の金額が上がってしまいます。

仮に7月以降に残業代が全くなくなっても、4~6月の給与で社会保険料が決まってしまうため、該当月の残業は注意して行いましょう。

まとめ

初任給25万円とされていても、実際の振込金額はそこから所得税、住民税、社会保険料などが引かれた金額になります。額面給与25万円の手取り額はおよそ20万円のため、振込額が20万円でも詐欺ではありません。

実際に振り込まれる金額は、額面金額より少なくなってしまうことに注意して、毎月の生活費をやりくりしましょう。

出典

国税庁 No.2260 所得税の税率
国税庁 No.1410 給与所得控除
国税庁 確定申告が必要な方
東京都主税局 個人住民税
全国健康保険協会 標準報酬月額の決め方

執筆者:沢渡こーじ
公認会計士

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