「ブルータス、お前もか」米助言会社も問う豊田章男会長の自負と責任 トヨタ株主総会、選任議案に注目

トヨタ自動車の株主総会が6月18日に迫った。経営陣が一連の認証不正問題をどんな言葉で株主に説明し、信頼回復に向けた道筋を示すかが焦点になる。豊田章男会長をめぐる「ある数字」が、どのような結果になるかも注目だ。

記録塗り替える好決算に影 トヨタ自身にも「型式指定」の不正発覚

売上高は45兆円を超え、純利益は5兆円に迫る――。 日本最大の企業、トヨタ自動車。その株主総会が18日に愛知県豊田市で開かれる。一時の半導体不足が一服し、「つくりたくてもつくれない」状況は落ち着いた。 得意のハイブリッド車の好調な販売に、円安による差益も追い風になった2023年度決算は、トヨタ自身の記録を塗り替える過去最高の数字となった。その成果を株主に報告する総会は、就任から1年が過ぎた佐藤恒治社長ら経営陣にとって「晴れの舞台」になるはずだった。 暗い影を落とすのが、グループ企業のみならず、トヨタ自身でも明らかになった「型式指定」をめぐる認証不正の問題だ。 型式指定は車づくりの前提となるものだ。自動車の安全を担保するもので、国に代わって量産前の検査を担うメーカーには厳格な運用が求められる。 業界の盟主であり、ものづくりに徹底したこだわりのあるトヨタでは、過去に他社で不正が発覚しても「うちでは考えられない」と幹部が口にする場面を何度も目にしてきた。それだけに少なくとも2014年以降に出荷された7車種に試験不正があったとするトヨタの発表は重たい。

不正理由や信頼回復への道筋 トヨタ経営陣は株主にどう語る

「ブルータス、お前もか」。6月3日に開かれたトヨタが不正を公表した会見で豊田章男会長が発した言葉は、「もっといいクルマづくり」にこれまでかけてきた強い自負の裏返しでもあっただろう。 18日の株主総会は、トヨタの経営陣が株主と直接対話をする場になる。株主に対してどのような言葉で不正が生じた理由や影響の大きさを説明し、傷ついたものづくりへの信頼を取り戻す道筋を示せるかが問われることになる。 株主が経営陣をどう評価するのか、バロメーターともいえる数字にも注目が集まる。総会に第1号議案としてかけられる取締役の選任議案では、再任・信任対象となる個々の取締役候補者に対する賛成率が事後に公表される。「信任率」は、トヨタに対する株主の期待を占うものになるだろう。 とりわけ注目されるのは豊田会長に対する数字だ。去年の信任率は約85%。100%近い数字が目立つ他の取締役とは大きく差が開き、現職・新任を合わせた10人の中で最も低かった。 米国の有力議決権行使助言会社グラスルイスが、「取締役会の客観性・独立性・適切な監督を行う能力には重大な懸念がある」などとして豊田会長の再任への反対を推奨したことが要因のひとつと見られている。

豊田会長の取締役再任、助言会社2社は反対推奨 「信任率」の行方は

豊田自動織機やダイハツ工業などグループ企業で相次いだ不正問題を背景に、グラスルイスは今年5月にも「豊田氏は経営トップを2009年6月から務めており、一連の問題に責任を負っている」と指摘。「トヨタグループ全体で問題が多発していることを考えると、豊田氏のリーダーシップの下で培われた企業文化に疑問が生じる」として、豊田会長の再任への反対を推奨した。 去年は賛成を推奨していた米国の別の有力助言会社インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズも再任反対を推奨しており、豊田会長への逆風は去年よりも強まっている。 両社の反対表明があったのは、トヨタが自社でも不正があったことを発表した今月3日よりも前のことだ。7車種170万台に及ぶ認証不正の発覚で、株主の視線はいっそう厳しさを増している。 「ブルータス、お前もか」。トヨタ自身の不正を知って、そう感じたのは豊田会長だけではない。信頼の回復に向けた歩みを確実なものにするためにも、経営陣にはより丁寧な説明と、今後の対応への決意表明が求められることになる。 (メ~テレ 山本知弘)

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