なぜ日本には「歯医者」が多いの?歯科医師の平均年収とは?

なぜ日本に歯医者が多いのか

厚生労働省によると、日本に歯医者が多い理由は、昭和40年代初頭に起こった、生活環境や食生活の変化などが原因といわれています。

このころ、う蝕(しょく)(虫歯)が多発し、「虫歯の洪水」ともいえる状況にありました。それに対応するため、国は歯医者を増やすことを目標とし、歯科大学の設立認可が続々と行われました。

結果、昭和40年代当初の歯科大学の入学定員は1100人ほどだったのですが、10年もたたないうちに、3倍以上となる3500人台となったようです。

その後は、このままでは逆に過剰を招くとして、削減措置がなされましたがうまくはいかず、現在のように、街中に歯医者があふれる状況にまで至っているようです。

歯科医師の平均年収は?

歯科医師は、歯に関する医師だけあって、年収が相当程度高いと考えられます。

この点、厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」によれば、歯科医師(男女計かつ企業規模計10人以上)の平均年収は924万3000円と想定されます(「きまって支給する現金給与額」を12倍し、そこに「年間賞与その他特別給与額」を加えた数値)。

とはいえこちらは、勤務医としての歯医者の収入です。街中にある歯医者のように、独立開業している歯医者の場合は、これよりも高い人もいれば低い人も多くいると考えられます。

近年では「歯医者では食べていけない」などといった声もSNSなどで上がっていることから、歯医者は働き方によっても大きく収入に差がありそうです。

歯科医師になるには多額の学費が必要

歯科医師になるには歯学部を卒業しなければなりません。医学部の一種だけあって、歯学部の学費は高額です。

学校が国立や公立であるか、あるいは私立であるかによっても変わりますが、文部科学省の調査によると、私立大学の歯学部では平均321万8227円(2023年度入学者に係る初年度の授業料)となるなど、非常に高額です。

年間で平均約322万円となると、歯学部に6年間通った学費の総額は、2000万円前後となることが想定されます。このように、歯学部は将来歯医者になれる可能性があるとはいえ、非常に高い学費を要するようです。

なかなかこれだけの学費を、家庭の貯蓄などから捻出するのは簡単ではないでしょう。特に、歯学部へ通う学生の中には、奨学金を利用して進学している学生も少なくないと考えられます。

歯医者になるには、難易度が高い学部である歯学部に入学するだけでなく、多額の学費も必要であり、平均年収が高い分、そのハードルも高いものといえそうです。

まとめ

日本に歯医者が多いのは、昭和40年代に起こった生活環境の変化などによる歯の病気の急増にあるといわれており、そのときに歯医者を増やしたのが今に続いているようです。歯科医師の平均年収は、勤務医で1000万円前後と非常に高額です。

私たちにとって身近な職業でありながら、謎に包まれた部分も多くある歯医者ですが、今回の記事でその存在がより身近に感じられたのではないでしょうか。

出典

厚生労働省 第1回歯科医師の資質向上等に関する検討会 参考資料5 歯科医師需給問題の経緯と今後への見解
厚生労働省 令和5年賃金構造基本統計調査 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)
文部科学省 令和5年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金等平均額(定員1人当たり)の調査結果について

執筆者:柘植輝
行政書士

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