警察と一緒にギャラリーに来る客も…タワマン営業が語る“激ヤバ客&迷惑クレーム”【前編】

※写真はイメージです(写真:PIXTA)

洗練された都会的なイメージから憧れを持つ人も多いタワマン。眺望の良さや、共有施設の充実ぶりから高い人気を誇る。

しかし、そんなタワマンには不動産会社を困らせるほどの“ヤバイ客”や“理不尽クレーム”もつきものだという。

都内の不動産会社に勤める40代のAさんは、不動産会社の営業になって8年目だという。近年タワマンの販売営業に従事しており、タワマンを求める数多の顧客と接してきたが、なかには困った顧客もいると明かす。

「以前ビックリしたのは、息子さんがタワマンを探しているという母親からの電話。息子さんの代わりに親御さんが物件を探すというのは、よくあるケースです。しかし、営業トーク的に何気なく『ありがとうございます』と電話口で微笑んだところ、突然『何がおかしいの?!』といきなり激昂されました。

とりあえず謝罪したのですが、『あなたは私たちに、タワマンなんて買えないと思っているかもしれないけど』とキツい口調で言われたりして、『何も言ってないんだけどな……』とちょっとしんどかったですね」

ギャラリーでもトラブルが多々あるという。予約をせずにやってきて、断ったところ不平を並べる顧客は珍しくない。愛犬を抱えてギャラリーにやってきた顧客に、理不尽な理由で激怒されたこともあるという。

「『ワンちゃんも一緒にマンションを見たいの』とおっしゃるんですね。でもアレルギーをお持ちのお客様もいらっしゃるので、ワンちゃんと御覧になることはお断りしています。そのことをお伝えしても聞いて下さらなくて、30分ほど問答しまして。最終的にふと『ペットはご入場できないんです』と口にしたところ、『この子はペットじゃありません!家族です!』と怒鳴られて、そのまま帰られました。

ギャラリーに来る途中で交通違反をしたのか、警察を連れてギャラリーに来たお客様もいらっしゃいましたね。こちらは『何があったの?どういうこと?』とオロオロしていたのですが、お客様は30分くらい警察と話したあと、『さぁ、マンションの説明をしてください』と笑顔でした(笑)」

地味に厄介な”タワマン亡霊”

激ヤバ客や迷惑クレームなど百戦錬磨だが、実は地味に厄介なタイプの顧客がいるという。それは数多のタワマンを見学しては購入する決断ができず、何年にもわたってギャラリーを彷徨い続ける“タワマン亡霊”だ。

「最初にお渡しする質問表で『これまでいくつ物件を見られましたか?』とお尋ねしており、概ね『初めて』とか2、3件くらい。5件と書いていると、『ちょっと多いな。慎重に検討されてるのかな』という印象です。

ですが、10件以上見てきたという方も結構な数いらっしゃいます。そうなると確実に5年以上は物件を見てきたと思われます。中には10年以上探しているという人もいました。

そういった方々の多くはタワマンを買える年収もあるのですが、話を聞いているとどこか優柔不断と言いますか。“買えるけど決めることが怖い”という感じで、決断ができないようです」

そういう“亡霊たち”は、タワマン以外に戸建てなどもチェック済み。それも全国各地の、さまざまな物件を見ているようだ。

「例えば東京都内の23区内に住んでいる方で、区外はもちろんのこと埼玉や千葉などの近県をチェックしている方もいます。『このまま全国回るのかな?カフェ巡りみたいな感覚なのかな?』と思ってしまいました(笑)」

50歳過ぎの“タワマン亡霊”に対しては「もう10年で定年でしょうから、今買わないなら10年間でお金を貯めて定年後にキャッシュで買ったほうがいいですよ」と提案すると、彼らはどのギャラリーでも言われているのか、口を揃えて「そうだよね」と独り言のように呟くという。

「条件を絞ることができないから、決めることができないんだと思います。『どこのエリアでお探しですか?』と聞いたら『うん、まぁ、職場にアクセスよければどこでも』と言われるのですが、この前の『THE SECOND』のガクテンソクの漫才じゃないですけど、『東京大阪間も1本ですけどね?!』と思ってしまいます(笑)。

亡霊状態になっている方はみなさん、『5年前はもっと安かったんだけどね』って口を揃えて言いますね。そう言われると苦笑するしかないのですが『5年の間に高くなってますし、お客様も年を取られてますし、ローンを組む期間も狭まってますよ。どうします? 結局決めないんですね? 時間のロスなんで、じゃあもう帰って!』っていうのが本音です」

タワマン周りには、様々なタイプの顧客がいるようだ。トラブルについて紹介する。

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