『AKIRA』だけじゃない!ファミコンゲームで振り返る「80年代の名作アニメ映画」

ファミコンソフト『火の鳥 我王の冒険』

1980年代は素晴らしいアニメ映画が多かった。その中にはあの『AKIRA』をはじめとして、ファミコンでゲーム化されていた作品もあった。今回はそんなちょっと懐かしい、ファミコン化されるほど面白かった80年代のアニメ映画を振り返ってみよう。

■少年少女がタイムスリップして本能寺へ…ゲームは理不尽も映画には感動した『時空の旅人』

まずは1986年12月に公開された『時空の旅人』だ。原作は眉村卓さんの小説で、ファミコンではケムコ(コトブキソリューション)からほぼ同時期に発売されている。過去へタイムスリップする設定は同じだが、基本ファミコン版はオリジナルストーリーとなっている。

アニメでは未来から逃げてきたアギノ・ジロが、1986年の現代で主人公・早坂哲子たちが乗っているマイクロバスにタイムスリップの装置を付け、次々と過去へと遡っていく。彼らはアギノを追ってくる時間管理局から逃げ続け、太平洋戦争末期の東京大空襲や幕末、戦国時代へとタイムスリップしてその時代の人々と交流していくのだ。

そんな中、彼らは本能寺の変に遭遇することとなる。しかも、明智光秀の接待を受けて、織田信長とともに本能寺へと赴く。

歴史を知っている側としては信長と一緒に本能寺なんて恐怖しかない。だが、時間管理局のクタジマ・トシトは歴史改変を狙っており、本能寺の変を阻止しようと企む。ここまで来るとコイツが黒幕か……なんて思ってしまうのだが、実はクタジマはロボットであり、自分のような存在を作らないために歴史を改変しようとしていた。

アギノに未来の銃で撃たれたクタジマは心を語りだし、それを聞いたアギノが心変わりしてクタジマに協力するようになる。ここはちょっと切ない。

もちろん、最終的に信長は自害をするのだが、側にいた森蘭丸が突き飛ばされて時空のはざまに送り込まれる……。最終的に哲子たちはアギノによって記憶を消され、無事に現代へとたどり着いた。アニメーションも当時のクオリティとして素晴らしく、流れるような動きに感動したものだ。

■壮大なテーマでストーリーがちょっと難解だったが映像美と音楽に深く感動! ゲームも面白かった『火の鳥 鳳凰編』

『時空の旅人』と同時上映されたのが、手塚治虫さん原作の『火の鳥 鳳凰編』だ。ファミコン版『火の鳥 鳳凰編 我王の冒険』は翌年1月にコナミ(現:コナミデジタルエンタテインメント)から発売、面白いアクションゲームだった。

舞台は奈良時代で、主人公は生まれてすぐに片目と片腕を失った我王と、後に盗賊になった彼に襲われた仏師・茜丸。自分とはちがって両腕を持つ茜丸にイラっとした我王は、利き腕を容赦なく斬り付けてしまう。殺人や強盗をしていた我王だけに、命があっただけマシかもしれない……。

茜丸は活発な少女ブチと出会い、左腕で仏像を彫り続けて努力し、都でも有名な仏師へと成長していく。我王は偶然出会った速魚と恋仲になるのだが、自分を殺そうとしているという勘違いによって彼女を殺してしまう。

しかし、彼はここから激しい後悔を経て改心し、悟りを開く境地にまでなっていく。茜丸は逆に栄華に溺れてしまうのだ。

彼らは後に東大寺の大仏殿完成のお祝いとして帝に献上する彫り物の制作で対決することとなり、すでに堕落していた茜丸は制作意欲が起きず、方や我王は不条理な怒りから素晴らしい作品を作り上げて完勝。……かと思いきや、ブチ切れた茜丸の策略によって我王は片腕を斬られて追放されてしまう。

ここまでくると我王も可哀想になるのだが、もとはと言えば茜丸の片腕を奪ったのは我王だし……因果応報かーー。ただ、茜丸は後に正倉院の火事に巻き込まれて死亡。死の間際には火の鳥の容赦ない言葉を受けてしまう。

子どもたちには難解だったろうが、当時観たときは映像美と音楽に感動した作品だった。

■圧倒的な迫力の映像が鳥肌もの! ストーリーも壮大で熱中した『ヴイナス戦記』

最後は1989年3月に公開された『ヴイナス戦記』だ。圧倒的な映像でスピード感もあり、キャラクターの表情も細かい。こんな作品が80年代に製作されていることに驚きだ。

原作は安彦良和さんのSF漫画で、ファミコンは同年10月にバリエから発売されている。

ファミコン版はシミュレーションゲームのようなマップに対し、戦闘は3Dシューティングゲーム。当時のファミコンとしては結構攻めた作品で、衝撃を受けた人も多かったのではないだろうか。

さて、アニメ映画は冒頭のバイクレースシーンから迫力満点。興行成績は振るわなかったと言われているが、とてもそんな風には感じなかった。すでに中学生になっていた筆者の周りでも面白かったという声は多く、女の子にも人気があった作品だった。

物語の舞台は人類が植民した金星で、主人公のヒロキ・セノオ(通称ヒロ)も移民世代。金星は「アフロディア」と「イシュタル」という2大勢力によって軍事衝突が避けられないほど対立が進んでいる。ヒロはバイクレースのスキルを見込まれ、アフロディアの戦闘バイク部隊の一員としてスカウトされたのをきっかけに、勢力争いに巻き込まれていく。

本作は戦闘シーンも迫力があるのだが、登場人物たちの対話シーンも多く見られ、途中で中だるみする人がいたのかもしれない。2019年にはブルーレイで発売されたのだが、とても当時のクオリティとは考えられない仕上がりである。

こうして振り返ってみると、80年代のアニメ映画は本当に面白い。定番の『ガンダム』をはじめとして他にもたくさんあるので、機会があればまた紹介していこう。

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