ゼンデイヤ、テニスシーンはダンススキルで乗り切る『チャレンジャーズ』で挑んだ悪女役

3人のテニスプレイヤーの複雑な三角関係が描かれる『チャレンジャーズ』 - (C) 2024 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.(C) 2024 METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. All Rights Reserved.

ハリウッドの若手女優として大活躍しているゼンデイヤの最新作『チャレンジャーズ』(全国公開中)が、高評価を受けている。ルカ・グァダニーノ(『君の名前で僕を呼んで』)が監督し、『パスト ライブス/再会』のセリーヌ・ソン監督の夫、ジャスティン・カリツケスが脚本を担当。全米公開前に開催された記者会見には、ゼンデイヤ、共演者のジョシュ・オコナーマイク・フェイスト、グアダニーノ監督、カリツケス、エイミー・パスカル(製作)が出席し、出演の経緯や役づくりについて語った。(吉川優子 / Yuko Yoshikawa)

念願のグァダニーノ監督とのタッグ

ゼンデイヤが演じたのは、テニス界のスター選手タシ

テニスのスター選手タシ(ゼンデイヤ)に出会った親友同士のテニス選手パトリック(オコナー)とアート(フェイスト)は、彼女に強く惹かれるが、タシは怪我をして選手生命を絶たれることに。2人の間で揺れ動くタシを中心に、3人の複雑な三角関係が、現在と過去を行き来しながら、巧みに、そしてセクシーに描かれる。

本作の出演依頼を受けた時、ゼンデイヤはドラマ「ユーフォリア/EUPHORIA」を撮影中だったというが「脚本が素晴らしかったんです。おかしいけどコメディじゃないし、ドラマがあるけど、ただのドラマじゃない。テニスが出てくるけど、スポーツ映画じゃない。私のキャラクターは、今まで読んだことも見たこともないようなもので、彼女は私をすごく怖がらせました。それで『これをやる必要があるかもしれない 』と思ったんです(笑)」と今作に惹かれた理由を語る。

ゼンデイヤにとって、グアダニーノが監督するということも大きかった。本作でプロデューサーも兼務したゼンデイヤは「ルカが脚本を読んで監督することに興味を持ったと聞いて、夢のようでした。彼の作品の長年のファンだったんです。以前ディナーで一度会ったことがあって、イタリア語を話せない私の代わりに、ベジタリアンのメニューを注文できるように、彼が手助けしてくれたんです。それから彼のことが大好きになって、何らかの形で一緒に仕事をしたいとずっと思っていました。彼は、私たちが作りたかった映画がどういうものか、そしてキャラクターのことをとても深く理解していたんです」とグァダニーノ監督を賞賛する。

テニス特訓に一苦労

優れたテニス選手役ということで、ゼンデイヤとオコナー、フェイストは、一緒にかなりのトレーニングをしたそうだ。

ゼンデイヤは「幸運なことに、私たちは撮影が始まる前の約6週間、テニスの練習に没頭できました。私はテニスについてまったく何も知らなかったんです。知っていたのは、ビーナスとセリーナ(・ウィリアムズ選手)だけでした(笑)。ボールを打ち始めた時は、(思い切りはずれて)木に当たって、コートの中に入りさえしなかったんです。一度、サーブを返すのがどんな感じか見てみたいから、本気で打ってみてと言ったら、すごい速さで飛んできて、ボールを見ることさえできませんでした。後でレーシック(視力回復手術)をしましたが、当時はまだメガネをかけていたんです」と笑顔。そして、違うアプローチを取らないといけないことに気づいたという。

「ルカを見ると、これらのシーンを作り上げながら、(アクションの)振り付けを始めていました。テニスのシーンのすべてのショットが絵コンテに描かれていたんです。それで、私はダンサーだから、『踊る感じでやってみよう』と思いました。素晴らしいテニスのスタントダブルがいたので、彼女のフットワークや動きを把握し、彼女の鏡のようになりたかったんです。彼女の横にいる自分を録画して、それを見直しました。ある時点で、私はテニス選手にはなれないとわかりましたが、そう見せかけることはできました(笑)」

映画のラストは、パトリックとアートの試合が描かれ、緊迫感みなぎる大きなクライマックスを迎えることになる。グァダニーノ監督は、「僕たちは、何日もドラマの部分をリハーサルして、それから毎日数時間、コートに立っていました。テニスのアクションが、登場人物の間の関係をどのように反映しないといけないかわかっていました。最後の瞬間は、基本的に台詞のないシーンで、観客の誰もが、そこで構築される感情の高まりを明白に理解できないといけませんでした。ラスト10分の撮影には、8日くらいかかったと思います。そしてポストプロダクションでも多くの仕事がありました」と振り返る。

オコナーは、「パトリックは、自信に満ち溢れ、自分自身を心地よく受け入れているキャラクターだと感じました。僕たちみんながそうであるように、彼にも恐れや不安があっても、彼は完全に人生を全うして生きているんです」と役どころを分析。

一方、フェイストは、アートというキャラクターを、「自分の技能に愛想を尽かした職人というアイデアでした。自分の仕事や技能に没頭しているとき、それをやるプロセスはすごく楽しいものなんです。彼は必死になって、そういう純粋な場所に戻ろうとしているんです」と語る。また、「ジョシュと僕は、ボストン近郊を歩き回って、セリフを練習しました。一緒に撮影現場に通いましたし、すごく多くの時間を一緒に過ごしたんです」と、親友役の役づくりに励んだことを明かしていた。

主人公は悪女なのか?

会見の最後には、ゼンデイヤに向けて「観客の多くは、タシがヴィラン(悪役)であることを気に入っているようですが、彼女がちょっとした悪女であることを受け入れていますか? それとも彼女は誤解されているだけだと思いますか?」という興味深い質問が出た。

「好感を持たれる必要やこだわりがなく、許しをこうことがない女性キャラクターだという新鮮さが、そういう反応を呼んでいるのかもしれないですね。私にとってもそれが新鮮で、彼女を演じたいと思ったんです」と答えたゼンデイヤは「私は、この映画のキャラクターたちに対して先入観を持っていましたが、マイクとジョシュの演技だけで、その認識が変わりました。映画を観るたびに、『今回はこの登場人物に感情移入した』とか、『今回はこっちを応援している』となったりします。この映画の素晴らしさは、見るたびに登場人物に対する考えが変わることだと思います」と締めくくった。

ゼンデイヤの新たな面を見る楽しみに満ちた本作が、観客にどのように受け取られるのか、反応を見るのが楽しみだ。

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