富士山山開きの日に供える「ジャガイモとヒジキの煮物」は、富士吉田市・富士河口湖町の家庭の食卓や給食にも!?

富士山の山開きの日って、ご存じですか? 山梨県富士吉田市にある北口本宮冨士浅間神社では、毎年7月1日に「開山祭」が行われ、神饌(しんせん)のひとつとして「ジャガイモとヒジキの煮物」が供えられます。その日は、各家庭でもジャガイモとヒジキの煮物を食べるんです。給食にも出てくるとか…!? イラストを拡大して、見てくださいね~。

もともとは御師料理!?

ジャガイモとヒジキの煮物は、御師(おし)の家で出されていた料理でもあります。

御師とは、全国からやって来た富士講の人たちに祈禱や案内はもちろん、宿泊や食事の世話をする神職のこと。

どんなお味?

お店によって具材も味も違うので、ぜひ食べ比べを! 全体的には肉ジャガのような味わいです。

「もともとはジャガイモとヒジキだけだけど、最近はいろどりにニンジンや油揚げを入れるの」と、富士河口湖町で出会ったSさん。

例えば、地元のスーパーのものは厚揚げが入っていて、汁なし、ヒジキ多め。地元の商店のものは、大きめのジャガイモとななめ切りのちくわが入っていて、ヒジキたっぷり。Sさん宅のものは、油揚げと輪切りのちくわが入っていて、汁あり、ほどよいヒジキなど。

地元のスーパーには山開きの日、ジャガイモとヒジキの特売コーナーがあったりします。

同じ具材でも切り方が違ったり、ヒジキの量が違ったり。素朴な料理だけど奥深い。

ヒジキは三浦半島産!?

神奈川県三浦半島に住む富士講の人たちが御師の家に持参した海産物のひとつが、三浦半島に自生するヒジキだったそう。

山梨のジャガイモ

山開きの頃、山梨ではちょうど新ジャガの時期!

山梨でジャガイモの栽培がスタートしたのは江戸時代後期なので、ジャガイモとヒジキの煮物が作られるようになったのは、それ以後のようです。

取材・文・イラスト・写真=松鳥むう

松鳥むう
イラストエッセイスト
離島・ゲストハウス・民俗行事・郷土ごはんを巡るコトがライフワーク。著書に『トカラ列島秘境さんぽ』『粕汁の本 はじめました』(ともに西日本出版社)、『むう風土記』(A&F)などがある。

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