てるてる坊主 知らないと怖い? 実はやってはいけないこと

てるてる坊主(写真はイメージ)【写真:写真AC】

雨が続くと、子どもの頃に「明日、天気になあれ」と願いながら、てるてる坊主を作って飾った経験がある人は多いでしょう。てるてる坊主というと、目や鼻、口を描いて飾るのが一般的ですが、実は描かずに飾るのが本来の“お作法”のようです。日本古来の伝承や風習、先人の知恵など諸説に着目するこの連載。今回は本格的な梅雨シーズンを前に、てるてる坊主にまつわる由来や言い伝えについてお届けします。

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てるてる坊主の作り方、吊るし方の“お作法”とは

てるてる坊主とは、主に子どもが晴天を願って軒下に吊るすおまじないの人形。江戸時代の頃にはすでに存在していたといわれる習わしです。地域によっては「てりてり坊主」や「てり法師」などの呼び名もあり、広く親しまれています。

実は、てるてる坊主には作り方や飾り方の“お作法”があるようで、知らずにやっていることが意外にタブーである場合も。もちろん、子どもと一緒にそれぞれの思いで作り、飾って楽しむのも良いですが、“おまじない効果”をアップさせるためにも本来の作り方や飾り方を押さえておきましょう。諸説から主な3つを紹介します。

○その1 最初から顔を描かない
てるてる坊主を作る際、最初から目や鼻、口など顔を描くことが多いと思いますが、実は顔を描かずに作るのが本来のやり方。顔を描かずに作ったてるてる坊主に「明日天気にしておくれ」と願いを唱えながら吊るします。晴天になったらはずして顔を描き、お酒をかけるなどお礼をして処分しましょう。

○その2 逆さまに吊るさない
逆さまに吊るすと、雨乞いになるといわれています。晴天を願っているのに、反対の意味になってしまうので、顔部分がちゃんと上になるように吊るしましょう。また、黒いてるてる坊主は雨を願うときに作って吊るすものなので、晴れを願う際には向きません。

○その3 飾りっぱなしにしない
晴れてほしい前日に吊るして、翌日は晴れても晴れなくてもはずすものといわれています。晴れたら前述の通り、てるてる坊主に顔を描いてお礼をしましょう。晴れなければそのまま処分しますが、昔は川に流して供養したといわれています。

てるてる坊主の起源は女の子だった

てるてる坊主の起源は、中国の掃晴娘(サオチンニャン)人形だと考えられています。連日の大雨から命がけで人々を救った女の子の伝説が元になり、ほうきを持った女の子の人形を作って門に吊るすと、雨雲を払ってくれると信じられていたそうです。

それが日本に伝わると、お坊さんに変わります。当時の日本では、天候の祈祷を僧侶が行っていたのが理由のようです。諸説ありますが、修行時に白装束を着用していたことから、白いてるてる坊主になったといわれています。

てるてる坊主の童謡 3番の歌詞がちょっと怖い…

大正時代になると「てるてる坊主」の童謡が発表されました。「てるてる坊主 てる坊主 あした天気にしておくれ」で始まる歌は、現代も親しまれています。その歌詞を見ると、1番の終わりでは「晴れたら金の鈴あげよ」、2番の終わりでは「私のねがいを聞いたなら あまいお酒をたんと飲ましょ」とあり、晴天になったら金の鈴や甘いお酒を捧げて、てるてる坊主に感謝する思いが記されています。

ところが3番になると、ちょっと怖い内容に。雨が降ったらどうなるかについて「そなたの首をチョンと切るぞ」とあります。それだけ強い思いで、てるてる坊主に晴天の願掛けをしていたということなのでしょう。

これから各地で本格的な梅雨のシーズンになります。“お作法”や由来を知って、これまで以上に、てるてる坊主作りを家族で楽しんでみてください。

鶴丸 和子(つるまる・かずこ)
和文化・暦研究家。留学先の英国で、社会言語・文化学を学んだのをきっかけに“逆輸入”で日本文化の豊かさを再認識。習わしや食事、季節に寄り添う心、言葉の奥ゆかしさなど和の文化に詰まった古の知恵を、今の暮らしに取り入れる秘訣を発信。

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