【慶應義塾幼稚舎】あらためてひもとく、その歴史と校風、他の学校にはない教育方針とは?

歴史や伝統、福澤諭吉の教えを大切にしつつ、新しいことを積極的に採り入れる教育方針

夏休みを前にし、6月から7月にかけては受験生や保護者向けの学校説明会が開催され「いよいよ受験シーズンも動き出した」と感じる季節がやってきます。

数ある受験の中で先陣を切るのが小学校受験、いわゆる「お受験」です。中学受験での「男女御三家」のように小学校受験の世界でも特別視される小学校があります。

東京都内の私立小学校の青山学院初等部、学習院初等部、慶應義塾幼稚舎は私立小御三家とも呼ばれる存在です。そして、その中でも特別なのが日本最古の私立小学校の一つである慶應義塾幼稚舎です。

今回は小学校受験の最高峰であり、2024年に創立150周年の節目の年を迎える慶應義塾幼稚舎について取り上げていきます。

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【慶應義塾幼稚舎】創立150周年を迎える超伝統校

慶應義塾幼稚舎は、日本で最も古い私立小学校の一つ。2024年には創立150周年を迎えている。

慶應義塾大学は創立者である福沢諭吉が1958年、江戸時代末期の安政5年に開校した私塾「蘭学塾」を起源とする国内で最も歴史ある私立大学の一つとして名を知られています。

小学校にあたる幼稚舎は時代は流れて明治7年、1874年に福沢諭吉が信頼する弟子の和田義郎が妻とともに年少の塾生を自宅で教育したことから歴史が始まります。

戦前は男子校、戦後は男女共学校として学校は歩み現在に至ります。

共学校ではあるものの、男女比率は同等ではなく2025年度1年生の募集人数は「男子96名」「女子48名」の合計144名と男子が多いという特徴があります。中途編入募集も行われておらず「1学年4クラス編成」「入学した時のメンバー」のみで進級進学します。

幼稚舎といえば「入学したらそのまま大学まで進学できる」というイメージがありますが、義務教育期間である中学、そして高校でも成績によっては留年もあるので「入学できればすなわち慶応大卒の肩書を持てる」というほど甘いものではありません。

卒業後の進路先も他の私立大学の系列校とは一線を画し、進学できる中学は共学校の「慶應義塾中等部」、男子校の「慶應義塾普通部」、共学校の「慶應義塾湘南藤沢中等部」と複数校から選択できます。

【慶應義塾幼稚舎】ペーパーテストと保護者面接のない入試

入試は「独立自尊」を実践できる人材育成に適した子どもを学校側が発見する場。

幼稚舎の志願倍率は都内の私立中学でもトップクラスの高倍率で推移しています。

昨年11月に行われた入試では男子定員96人に対し志願者数は934人、一方女子は定員48人に対し志願者は598人でした。合計1532名が受験しています。

男女とも例年受験倍率が10倍前後を推移する、極めて熾烈な争いになっている。

このように男女ともに例年倍率が10倍前後を推移するといわれる、極めて熾烈な争いになっています。

高倍率を勝ち抜くには入学試験をパスする必要があります。幼稚舎ではいわゆる子どもの学力を見るペーパーテストや保護者の面接が行われていません。提出書類、願書から保護者の経歴や人となりを把握することもできますが、基本的に「どのような子か」「校風とマッチしているか」を見極める入試を行っています。

  • 運動テスト
  • 行動観察テスト
  • 絵画制作テスト

この3つのテストを通じて受験生である子ども達の「先生の説明を理解した上で運動ができるか」「グループの仲間と協力し目標を達成できるか」「絵を介して自分らしく創造する力、表現力そして説明能力があるか」が見られます。

慶應義塾の基本理念である「独立自尊」を実践できる人材育成に適した子どもを学校側が発見する場です。

【慶應義塾幼稚舎】伝統校ゆえの揺るぎない教育方針

お受験の世界では別格扱いの幼稚舎で行われる教育も長い歴史から培われた独自性のある個性豊かなカリキュラムが実施されています。

一般的な小学校では担任の先生が国語、算数など全ての教科を一人で教えますが、幼稚舎では教科ごとに専任の先生が教える教科別専科制をとっています。また、クラス単位からさらに児童を2〜3分割した少人数指導に変えて児童にとってプラスとなる教育が施せるよう学びの形式をフレキシブルに対応しています。

小学校1年生から専門の知識を持つ先生の授業を受けられるというきめ細やかな指導が行われています。また、幼稚舎の最大の特徴の一つである「6年間担任とクラスが持ち上がり」により、クラスメイト同士の一体感や担任の先生が6年間の児童の成長を見守るという信頼関係を築くことができます。

こうした教育を実行したくても現実的に実現することはかなり難しいです。幼稚舎では揺るぎない教育方針のもと、児童たちがそれぞれの個性を伸ばせる教育環境が整っています。

そして、福沢諭吉の「先ず獣身を成して後に人心を養え」の言葉通り体を鍛える体育教育が盛んなことも有名で、とくに水泳に力を入れており、6年生の希望者が参加する千葉館山で遠泳合宿が行われます。

伝統校であり、エリート教育というイメージが強いですが「強靭な身体を作ること」も幼稚舎の大切な教育理念です。

【慶應義塾幼稚舎】充実した教育環境にかかる学費

慶應義塾幼稚舎2024年度入学者の一年間でかかる学費。

私立小最難関と目される慶應義塾幼稚舎は一般的に「特別な子ども達が通う学校」というイメージが強いです。私立小に通うにはそれなりの学費がかかります。まして倍率の高い小学校受験を勝ち抜くには幼児期から専門の幼児教室に通うため、入学以前から教育費がかかる世界です。

それでは、幼稚舎の学費はどのくらいかかるのでしょうか。2024年度入学者の一年間でかかる学費は以下の通りです。

  • 入学金 34万円
  • 授業料 98万円
  • 教育充実費 21万円
  • 文化費 2万5千円
  • 給食費 10万5千円

入学初年度にかかる学費の総額は166万円になりますが、この他にも諸経費が発生します。充実した教育環境が魅力ですが、やはり公立小学校とは比較にならないほど学費は高額で、経済的に余裕のある家庭の子ども達しか受験に参入できない世界です。

【慶應義塾幼稚舎】共働き世帯の増加でお受験も広がりつつある

共働き世帯の増加で私立小に通うことを検討する家庭も増えている。

一昔前でしたら、小学校から受験をするというのは極々一部の子ども達がする閉鎖された世界の話でした。しかし、共働き世帯の増加で私立小に通うことを検討する家庭も増えてきています。

小学校受験ができる学校自体が非常に少なく、人気校の倍率も相当高いです。こうした時代の変化の中でも創立150周年を迎え、受験界の最高峰に君臨する慶應義塾幼稚舎は小学校受験の一つの指針であり、伝統校かつ人気校であるが故に様々な情報がインターネット上で行き交っています。

小学校受験を考え始めた際「そういえば幼稚舎はどのような入試をするのか」と受ける受けないに関わらず、参考にしてみてはいかがでしょうか。

参考資料

  • 慶應義塾幼稚舎「入試Q&A」

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