「ひとつとや~♪」かぞえうたのように名前に数字がある作品を楽しむ
根津美術館で開催中の企画展「古美術かぞえうた -名前に数字がある作品-」[2024年6月1日(土)~7月15日(月・祝)]を見て来ました。
「姿や技法を示す数字」「書(描)かれた内容をあらわす数字」「仏教美術にあふれる数字」の各テーマごとに、書や絵画、漆工、金工、陶器、木竹工など様々な作品を紹介。
また、東京付近で昔から歌われて来たわらべうたの「かぞえうた」に、展示作品を織り込んだ替歌(かえうた)も作品に添えられていました。
自由に気軽に名前に数字のある古美術の作品鑑賞を楽しめる展覧会です。
※特別な許可を得て撮影しています。館内は撮影禁止です。
三彩、一重切、二重切 ―姿や技法を示す数字
技法に関わる数字“三”が作品名に入っている《三彩壺(さんさいこ)》(左)。
唐三彩(とうさんさい)と称されるのは、2色以上の釉を用いて、低火度で焼成されたもので、独特の色と文様の名器(副葬品)です。
本作品には白・緑・褐の3色が用いられています。
竹の花入れの一重、二重の数字は、花を生ける窓のことで、花入れの形式をあらわしているそうです。
金森宗和作《二重切花入(にじゅうぎりはないれ)》(中央)は窓が2つ。
小堀遠州作の《一重切花入(いちじゅぎり花入れ)》(銘 藤浪)(右)は、窓が1つです。
和歌に漢詩,旅の風景まで ―書(描)かれた内容をあらわす数字
《三夕図(さんせきず)》春木南溟(はるきなんめい)筆(左)
藤原定家(ふじわらていか)、寂蓮法師(じゃくれんほうし)、西行法師(さいぎょうほうし)の3人の歌人による三夕の和歌がテーマの三幅対です。
三夕の和歌とは、『新古今和歌集(しんこきんわかしゅう)』に収録された「秋の夕暮」が結びの句となる名歌のことです。
「見わたせば花も紅葉もなかりけり 裏の苫屋(とまや)の秋の夕暮」。
三夕の和歌の歌人の1人、藤原定家の和歌です。
画面には人物も賛もなくただ秋の夕暮れの風景が描かれています。
「かぞえうた」三つとや~♪の替歌も添えられてありました。こちらは会場でご覧ください。
右は、書家・篆刻家の趙陶斎(ちょうとうさい)筆《七言絶句(しちごんぜっく)》。趙陶斎が知人の祝いに詠んだ詩だそうです。
東海道をたどる《五十三次蒔絵鼻紙台(ごじゅうさんつぎまきえはながみだい)》
風景には数字のある名前がよくあります。
東海道五十三次の名所絵を蒔絵であらわした《五十三次蒔絵鼻紙台》。
懐紙や楊枝など手回り品を収める豪華な調度品です。
下段右の観音開きの扉右上部の日本橋(にほんばし)から始まる五十三次の風景をたどりながら天板の大津(おおつ)まで至ります。
天板には近江八景(おうみはっけい)も加えられています。
無限を感じる ―仏教美術にあふれる数字
重要文化財《釈迦多宝二仏並坐像(しゃかたほうにぶつびょうざぞう)》偉大なる仏陀の悟りが説かれる壮大な場面
『法華経(ほっけきょう)』の所説に基づく多宝塔(たほうとう)に釈迦如来(しゃかにょらい)と多宝如来(たほうにょらい)の二仏が並び座す姿をあらわした重要文化財《釈迦多宝二仏並坐像》。台座裏面の銘文から兄弟4人が父母の供養のために発願(ほつがん)したことが分かるそうです。
向かって右は釈迦如来が右手を挙げて説法をしている姿、左側は多宝如来をあらわすそうです。
釈迦の霊鷲山(りょうじゅせん)での説法を讃嘆するために、光を放ちながら巨大な多宝塔に乗った多宝如来が出現。
霊鷲山から釈迦を多宝塔に招き入れ、二仏が並んで座して説法を続ける神々しいお姿です。
光輝く多宝塔から二仏が並び座し直説金口の説法が説かれる荘厳な場面。
仏陀の偉大なる悟りを何倍にも感じさせる二仏像です。
1基でも《百万塔(ひゃくまんとう)》
恵美押勝(藤原仲麻呂)(えみのおしかつ、ふじわらのなかまろ)の乱(764年)平定後、称徳(しょうとく)天皇により発願された100万基の小塔。
東大寺(とうだいじ)をはじめ機内10か寺に10万基ずつ納められたうちの2基(法隆寺(ほうりゅうじ)伝来)です。
塔身部上部に『無垢浄光経(むくじょうこうきょう)』の陀羅尼が1巻ずつ納められています。
1基でも《百万塔》です。
同時開催 江戸→東京 ─駆け抜ける工芸
江戸から東京へ、幕末明治の激動の時代に生きた東京の工芸家たちの作品が並ぶ展示室5。
漆工、金工などを中心に匠の技が冴える名品ばかりです。
幕末から明治期に活躍した蒔絵師(まきえし)で絵師の柴田是真(しばたぜしん)作《端午蒔絵印籠(たんごまきえいんろう)》と《鍾馗蒔絵印籠(しょうきまきえいんろう)》。
是真は、維新後も漆絵を創出したり、新しい時代に自らの技巧を進化させ続け、国内外の博覧会で受賞を重ね世界へ知られるようになります。
新時代を駆け抜けた東京の工芸家の1人です。
同時開催 季夏(きか)の茶の湯
展示室6では季夏(きか)の茶の湯を楽しむ茶道具が並びます
陰暦六月のことを別の呼び名で季夏と言うそうです。
暑い季節に凉を感じさせる花器や、茶道具約20件の取り合わせです。
季夏の庭園に緑濃く
根津美術館、企画展「古美術かぞえうた -名前に数字がある作品-」は7月15日(月・祝)まで。
作品名にある数字を手がかりに、古美術鑑賞を楽しむ展覧会です。
観覧の後は、緑濃い季夏の庭園で散策も楽しめます。是非お出かけください。
ミュージアムグッズ
ミュージアムグッズは、懐紙 花白河(500円)、重要文化財《釈迦多宝二仏並坐像》(部分)のポストカード(100円)を購入。
重文《釈迦多宝二仏並坐像》の二仏を拡大したポストカードは、おだやかな面貌、笑みをたたえた口元、ヒマワリの花のような頭光、ゆったりした衣の衣文線などがよくわかります。
懐紙 花白河は、重要文化財《花白河蒔絵硯箱》(室町時代)(部分)の桜の花が型押しされた華やかな柄です。
※文中記載のないものは全て根津美術館蔵。
〇根津美術館 NEZU MUSEUM
URL:https://www.nezu-muse.or.jp/
住所:〒107-0062 東京都港区南青山6-5-1
TEL:03-3400-2536
開館時間:午前10時~午後5時(入館はいずれも閉館30分前まで)
休館日:毎週月曜日※但し、7月15日(月・祝)は開館
展示室 / ミュージアムショップ /庭園 / NEZUCAFÉ
〇交通:地下鉄銀座線・半蔵門線・千代田線〈表参道〉駅下車 A5出口(階段)より徒歩8分、B4出口(階段とエレベータ)より徒歩10分、B3出口(エレベータまたはエスカレータ)より徒歩10分
都バス渋88 渋谷~新橋駅前行〈南青山6丁目〉駅下車 徒歩5分
駐車場:9台(うち身障者優先駐車場1台)
〇企画展「古美術かぞえうた -名前に数字がある作品-」
会期:2024年6月1日(土)~7月15日(月・祝)
※日時指定予約制です。
入場料:オンライン日時指定予約 一般 1,300円(1,100円)、学生 1,000円(800円)
( )内は障害者手帳提示者及び同伴者1名の料金。中学生以下は無料。
・当日券(一般 1,400円、学生1,100円)も販売しています。
(ご案内は予約の方を優先していますので、当日券の方は少々お待ちいただくことがあります。混雑状況によっては当日券を販売しないことがあります。)
・予約受付はホームページより。
・1グループ 10名まで予約可能。