喫茶店・カフェの倒産件数 実は過去最多 人気があっても閉店「現実はそんなに甘くなかった」

東海地方にはモーニングなど独自の喫茶文化があり、さまざまな喫茶店・カフェがしのぎを削っています。総務省の発表(令和3年)によると、喫茶店の数は愛知県(6171店)が東京都(6121店)よりも多いという数字も。しかし、カフェブームの陰で、閉店や倒産が増えています。最近の喫茶店事情を取材しました。

【動画】人気なのになぜ…?カフェ「むむむ」惜しまれながらも5月に閉店 その理由と苦い現実はこちら【7分37秒~】

「物価の高騰」と「人手不足」が打撃に 喫茶店やカフェの苦い現実

2024年4月に名古屋市中区にオープンした新中日ビルには「ブルーボトルコーヒー」が東海エリア初出店。日本茶のカフェ「YATAGARASU」や、本を読みながら楽しめる「文喫 栄」など、連日、賑わいを見せています。

しかし、毎日多くの店がオープンする中、コーヒーのように“苦い現実”を示すデータも。

帝国データバンクによると、2000年には14件だった喫茶店・カフェの倒産件数が、2007年頃から50件以上になることが多くなりました。コロナ禍では補助金などもあり倒産自体は減少しましたが、2023年には72件と過去最多になりました。

名古屋市名東区の「ガロン」は、世界各地からコーヒー豆を仕入れ、自社で焙煎して全国の百貨店や喫茶店に卸しています。しかし今、コーヒー豆の値上がりに苦しめられています。

主要産地のブラジルで天候不順による不作が続いたことと、歴史的な円安の影響で、コーヒー豆の国内価格はここ1~2か月で高騰。ガロンでは2024年5月に、ほぼ全ての商品を平均で2~3割、値上げせざるを得ませんでした。

(ガロン・神谷浩己社長)
「急激に値上がりしたのは、ここ1~2か月。今回の(コーヒー豆の)上げ幅は、今までにないくらいなので、2段階に分けて値上げしようと考えている」

物価高でも「値上げ」に尻込みする店も

名古屋市緑区の「六古窯」は、自家焙煎したこだわりのコーヒーを、愛知の陶芸家が焼き上げたカップで飲める店。

六古窯では、コーヒー豆の販売価格を値上げ。しかし、客離れを恐れ、店で出すコーヒーの価格は据え置いています。

(六古窯珈琲・纐纈(こうけつ)昭男社長)
「嗜好品なので、お金をかける人が少なくなっていると思う。皆さんに負担がかからないように頑張っているが、まだ豆の値段が上がっている。今後、どうしようか、迷っているのが本音」

ここ数年、コーヒー豆の価格は上昇している一方、コーヒー1杯の価格はほぼ横ばい。コンビニに行けば、100円程度でコーヒーが買える今、利益が減っても値上げが難しいのが現状です。

さらに、深刻な「人手不足」も、もう一つの大きな課題です。六古窯では、セルフレジの導入なども行いましたが、それでも人手は不足。4月、5月は、あんかけスパなど、人気メニューの提供を休止しました。6月からスタッフを増やし、ようやく食事のメニューが再開できました。

(六古窯珈琲・纐纈(こうけつ)昭男社長)
「物価高は仕方ないとしても、人の問題の方が大きい」

飲食店の倒産件数は過去最多に 人気カフェでも閉店

2023年度の飲食店の倒産件数は過去最多の802件。東海3県では「喫茶店・カフェ」が「居酒屋・ビヤホール」と並んで16件でトップでした。

中には、人気があるのに閉店したケースも。平成初期のキャラクターグッズが店内を飾る名古屋市西区の食堂カフェ「むむむ」は、カラフルなクリームソーダや手作りのプリンやケーキなどのスイーツが人気で、多くの若者が訪れていました。

手作りのランチも人気で、お昼時はいつも盛況。牛肉100%のこだわりのハンバーグは、週末だと約50食の注文が入っていたそうです。3年前のオープン以来、多くの客で賑わっていましたが、2024年5月6日に閉店しました。

満席が続くほど客が来ているにも関わらず、利益は伸びなかったと言います。ゆっくり、のんびり時間を過ごせるのがカフェ最大の魅力ですが、店側の目線に立つと、「客単価が低く、回転率が悪い」ということにも。

(むむむ・中村茜音さん)
「客数、客単価、回転率で(売り上げの)マックスが見えている。どれだけ頑張っても、ランチだけで店を経営していくのは厳しい」

原材料費や光熱費の高騰が続きましたが、最寄りの駅から1キロほど離れた立地を考えると、値上げは難しいと見送ったそうです。儲けがあまり出ない中、夜の営業も行いましたが、思うように客は集まりませんでした。

さらに、新たにキッチンカーの事業を始めたこともあり、人手不足が深刻に。中村さんは、週6日の店の営業に、キッチンカーも加わり、ほとんど休みなしになりました。限界を感じ、悩んだ末の結論が、閉店だったそうです。

現在は、駅前に物件を探し、カフェではなく、人気だった料理の腕を生かした夜営業中心の飲食店として再出発することを決めています。

(むむむ・中村茜音さん)
「次の店も、絶対に来てもらえるようなお店づくりをしたい」

憩いの場として、新たに生まれ続けているカフェ。しかし、それ以上のペースで消えていく店もまた増えています。

CBCテレビ「チャント!」2024年6月5日放送より

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