【桜坂劇場・下地久美子の映画コレ見た?】トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代 あふれる才能に観客歓喜

トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代

 「劇場が歌声喫茶になったようです!」。5月31日に東京での上映が始まった本作。かなり盛況で、観客の皆さまが歓喜し、歌い、涙なさっているのだとか。「帰って来たヨッパライ」に始まり、「あの素晴らしい愛をもう一度」、サディスティック・ミカ・バンド時代の楽曲などと共に、トノバンこと加藤和彦さんの人生を旅し、彼の天才ぶりにクラクラし続ける2時間。

 ただ、天才の人生は、愛した女性、ミカが去った日から少しずつ悲劇に向かっていたように思う。天才を思う存分振り回した末の心変わり。離婚後も大いに活躍したトノバンだが、私には彼が泣いているように見えた。惰性で生きているようにも。それでも隠しきれない才能の元に人々が集い、だけど心は孤独。完全に妄想が行き過ぎましたが、彼のあふれる才能に魅了されるすてきな作品です。(桜坂劇場・下地久美子)

◇同劇場で公開

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