特集「キャッチ」福岡からパリ五輪を目指す ビーチバレー日本代表候補の髙橋巧選手 “アジアの壁”を超えるために異例の決断

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特集「キャッチ」です。パリオリンピック開幕までひと月半となりました。福岡からパリを目指すビーチバレーの選手がいます。一時は「引退」の文字が頭をよぎったこともありましたが、夢を追い続ける決意を新たに。そこには支えてくれる人たちへの感謝の思いがありました。

福岡市早良区のシーサイドももち海浜公園で、砂まみれになりながらボールを追う髙橋巧選手、32歳。6月に中国で行われる、パリオリンピック・ビーチバレーアジア最終予選の、日本代表候補6人のうちの1人です。

■ビーチバレー日本代表候補・髙橋巧選手(32)

「アジアで優勝しないと日本に(五輪出場)枠がこないというのは、簡単なことではないですけど、全力で挑戦して、もぎ取りに行きたいと思います。」

ビーチバレーは、6人制バレーボールとほぼ同じ広さのコートを、不安定な足場の中、2人で守り、攻撃します。

ポジションにはブロッカーとレシーバーがあり、髙橋選手が務めるのはレシーバーです。

身長178センチと選手としては小柄ながらも、「守備の要」かつ「攻撃の起点」として、去年は国内最高峰のツアー戦で年間王者に輝くなど、数々のタイトルを手にしています。

パリへの切符をつかむため、髙橋選手はことしから熊本県出身のブロッカー、池田隼平選手とペアを組みました。

4月にタヒチで行われた大会では表彰台に上がっています。

■熊本出身のブロッカー・池田隼平選手(31)

「数年前からずっと日本一のレシーバーだと思っているので、安心感をものすごく感じる。試合をしていてもすごくやりやすい。」

そんな2人は。

■池田選手

「先輩感ないよなー。」

■髙橋選手

「出したいけど、どうやって出せばいいんだろうな。」

■池田選手

「この間、大会に行った時も一緒のアパートに住んでいて、洗濯機にティッシュぶち込むんすよ。」

■髙橋選手

「やっちゃいました。」

髙橋選手を指導するのは、アトランタオリンピック日本代表で、“ミスター・ビーチバレー”の異名を持つ高尾和行さんです。

愛弟子の最大の武器は。

■髙橋選手のコーチ・アトランタ五輪日本代表・高尾和行さん(57)

「正確。性格ではなくプレーがですね。パス1個にしても、セットアップやスパイクにしても、やっぱりちゃんとしている。」

プレーの正確さ。そこには髙橋選手ならではの練習方法があります。

別の日、高尾コーチと練習していたのは髙橋選手1人だけでした。

■高尾コーチ

「ちょっと刻みすぎ。」

■髙橋選手

「ステップを。」

■高尾コーチ

「だけん、間が合わんやろ。」

実は、ペアの池田選手の拠点は関東にあり、ふだん2人は離れた場所で別々に練習しています。

埼玉県出身の髙橋選手も、もともとは関東が拠点でした。

しかし、リオ・デ・ジャネイロ、東京と、オリンピック出場を目指したものの、アジアの壁を超えることができず涙してきました。

そうした現状を打ち破るため、以前から指導を受けていた高尾コーチを頼り、おととし、福岡へと拠点を移したのです。

通常、ペアでの練習が多い中、一人、福岡に拠点を移すのは異例ともいえる決断でした。

■髙橋選手

「マイペースに自分は練習できるので成長している実感もあるし、ひとつ結果が出せた。」

1人の時間に基礎を徹底的に見直すことで、正確なプレーに磨きがかかっています。

試合や合宿のため、国内だけでなく海外も飛び回る髙橋選手。帰ると必ず訪れる店で、福岡の生活で欠かせない人たちとテーブルを囲みます。この日、食事をともにしたのは、福岡で初めてできた友人の伊地知和義さんです。

■髙橋選手

「いろいろ相談したりとか本当に心強くて、福岡の兄貴です。」

そして、まもなく結婚8年目を迎える妻の真実さんは、1年の半分は家にいない髙橋選手がリラックスできるよう心がけていることがあります。

■髙橋選手の妻・真実さん

「試合が近くなると夢でずっとビ ーチバレーしている。結構、寝言を言うんですけど、寝言でもビーチ のことを言っている。試合が近い時は、あえてビーチのことは話さない。」

開催国として日本から1組が出場した3年前の東京オリンピック。その切符をつかめなかった髙橋選手の頭には引退の2文字がよぎったといいます。しかし。

■髙橋選手

「五輪の放送があって、それを見ていた真実が、この場に僕が立っていなかったのが寂しい、悔しいと 言った。その言葉がずっと残って、『このままじゃ終われない』と。」

■伊地知さん

「悔いのないように、それだけです。 その結果がどうであれ。」

■髙橋選手

「いや、やりきって。カップを持って帰ってきて、ここで祝勝会したいです。」

■伊地知さん

「頑張ってください。」

■髙橋選手

「はい、頑張ります。」

■真実さん

「いってらっしゃい!」

髙橋選手が競技に集中できるようサポートするのが、社員として勤務する全日空のグループ会社、ANAあきんどです。

■ANAあきんど福岡支店・荒木知哉 支店長

「髙橋選手は職場の応援をすごく糧にしてくれるんです。悔いのない試合をしてほしいなと思います。」

久々に出社したこの日は、大舞台に挑む髙橋選手を囲んでのランチ会でした。

■社員

「(オンラインで)全国つないでみたいなので、髙橋選手が突然歌を歌いだして。それも全部フルだったもんね。」

■髙橋選手

「ちょっといじってます?」

■一同

「(笑い)」

気取らない仲間たちの存在も髙橋選手の背中を押します。

■髙橋選手

「本当に皆さんのあたかい応援とサポートのおかげで、ここまでこられました。あとは僕が結果を出して、皆さんにいい報告ができるように、ワクワクをお届けできるように頑張りますので、応援よろしくお願いします。」

多くの人に支えられ臨む、夢の舞台への3度目の挑戦。感謝を胸に、ここ福岡からパリを目指します。

※FBS福岡放送めんたいワイド2024年6月12日午後5時すぎ放送

髙橋選手と池田選手のペアは6月20日、パリ五輪アジア大陸予選の日本代表メンバーに選ばれました。

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