「圧倒的な飛距離と磨かれたアプローチ」笹生優花選手が2度目の全米女子優勝!元賞金女王・平瀬真由美さんが語る勝因と日本勢の成長

アメリカ女子ゴルフのメジャー大会、全米女子オープン選手権で、笹生優花選手が日本勢初のメジャー2勝目を挙げた。最終日はトップと3打差の5位スタートだったが、我慢強いプレーで通算4アンダーで逆転優勝。優勝賞金240万ドル(約3億7680万円)を獲得した。

笹生選手の強さの秘訣とアメリカツアーでの成長について、元賞金女王の平瀬真由美さんに聞いた。

経験を積み周りが見えていた

ーー笹生選手の優勝の感想は?

笹生選手はすでに全米女子オープンを勝ったことがありますが、2回目を勝てる選手が出てきたことは本当に嬉しかったです。ゴルフは運も大事なので、1度勝ったことがあってもまた優勝することは本当にすごいことだと思います。

ーー前回の優勝と今回とでは何が違う?

前回は日本ツアーを中心に活動していた中から参戦し優勝しましたが、今回は数年アメリカツアーを転戦しながら経験を積んだ上での優勝だったので、周りもすべて見えていたと思います。全米女子オープンの重さというものをより一層感じていたと思うので、その中で勝ち切れたというのは本当にすごいことだと思います。

強みは「飛距離」と「小技」

優勝候補だった世界ランキング1位のネリー・コルダ(米国)が予選落ちするなど、難コースに苦しむ選手が多かった中、笹生選手は安定した「飛距離」とグリーン周りの「小技」で我慢のゴルフを展開できたことが勝利に結びついたと平瀬さんは話す。

ーートップと3打差、5位からの逆転優勝のポイントは?

かなり難しいコースだったので我慢が必要でした。その中で「少しでも伸ばせたらチャンスはある」と上位の選手はみんな思っていたと思います。そこで爆発力を持ちながらずっと我慢のプレーをしていた笹生さんは本当に強かったと感じました。

後半の9ホールに入ってからは、我慢しきれずにボギーを打ってしまう選手が多かった中、笹生選手はしっかりとスコアを伸ばし、パー4の16番ホールではワンオンしてバーディーを奪いました。ボギー、ダブルボギーが簡単に出てしまうコースで、しっかりパーをセーブし、バーディーチャンスもきっちり決められたのが大きかったと思います。

ーー強さの秘訣は?

飛距離が出ることはやはり大きいです。それから、もともと小技の上手い選手なので、飛ばすだけではなくて随所にそのテクニックを使ってパーを拾っていくことが多かったです。他にも飛距離が出る選手はいますが、笹生選手は安定して飛びます。

昨年メジャー大会を勝ったセリーヌ・ブティエ選手とダブルスを組んで戦った別の大会では、笹生選手のボールが選ばれたときにブティエ選手が「コースの見え方が全く違う」とコメントしていましたが、それくらい普通の選手より力強く飛ぶので、かなり優位だと思います(※)。

(※ 2023年7月に開催された米女子ツアー唯一のペア戦「ダウ・グレートレイクスベイ招待」では、初日と3日目は1つのボールを交互に打つフォアサム方式が採用され、2日目と最終日は各自のボールでプレーし、各ホール成績の良い人のスコアが採用されるフォアボール方式を採用)

さらに磨きがかかった「アプローチ」

笹生選手は幼い頃から父・正和さんと共に、ボクシングやウェイトトレーニングを通じて力強いショットを鍛え上げてきた。そして世界の難コースを転戦する中で、アプローチショットも更なる磨きがかかってきたという。

ーー飛ばす技術に加えて小技も磨かれている?

アメリカに行く前はドローボールがメインでしたが、今はフェードも打ち分けながら戦っています。アメリカのツアーだとフェードでないと攻めることができないホールがいくつかあるので、学んでいったのだと思います。

そして、有名なのはやはりグリーン周りからのアプローチショットです。ボールを上げるのも転がすのも本当に上手い選手です。世界中の難しいゴルフ場を転戦し、いろいろな芝に対応できる技術を磨いていると思います。

ーー笹生選手に特別な練習法はある?

笹生選手がまだ日本ツアーに出ている時に練習ラウンドに付いて回ったことがありますが、グリーン周りから高く上げるボールを何度も練習していたのを覚えています。ロブショットというのは、それほど頻繁に使うショットではありませんが、ボールとクラブで遊ぶような感じで技術を磨いていました。

転がさなければいけないところはしっかり転がして、上げなくてはいけないところはきっちり上げる。今回の大会だと3日目の17番ホールの右からのバンカー越えのアプローチは、ギリギリのところに上げて落としてパーセーブしました。

映像でも何回も再生されていましたが、あのショットは本当に素晴らしいと思いました。もともと技術は持っていましたが、あの場面でそれを出すことができるのは凄いと思います。

トップ10に日本勢5人

今大会では渋野日向子選手も通算1アンダーで2位につけるなど、トップ10に日本人選手5人が入る大躍進となった。また、獲得賞金も決勝ラウンド進出を果たした14選手の合計が8億1600万円以上となり、全体の40%を超えた。

ーートップ10に日本人選手が5人入ったが?

距離もあって難しいコースでしたが、たくさんの日本人選手が全米女子オープンに出る時代になりました。そうすると「彼女にできるのなら私もできるはず」といろいろな選手が思い、実力を発揮する場になってきたのだと思います。レベルも上がり、アメリカツアーに慣れるのも早くなってきました。

また、今年はパリ五輪もあるので、ランキング上位の選手はかなり意識していたと思います。

ーー平瀬さんの姪にあたる竹田麗央選手も9位に入ったが、お祝いメールは?

竹田選手にとって初めてのアメリカツアーでしたが、9位になり自信がついたと思います。予選を通って良かったと思っていたら、トップ10にまで入ったので素晴らしかったです。しかし余計なことを言う叔母ではダメなので連絡先も知りませんし、全く連絡はしていません!

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