『ナイトライダー』『アメリカン・ヒーロー』…チビッコを夢中にさせた「懐かしの海外ドラマ」の魅力

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昭和50年前後のテレビ番組を振り返ると、今とは比べ物にならないほど、多くの海外ドラマが各局で放送されていた。金髪美女が長い脚で悪者を蹴り上げ、警察官がピザを食べながら車から顔を出し、バディたちは小洒落た会話を投げ合ったりと、ブラウン管を介して私たちは見知らぬ文化やノリに触れワクワクしたものだ。

なかでも、困難に立ち向かうインガルス一家の物語『大草原の小さな家』、軍人チームが巨悪に挑む痛快アクション『特攻野郎Aチーム』、カリフォルニアのフリーウェイを舞台に活躍する刑事ドラマ『白バイ野郎ジョン&パンチ』などは、今も人気作品として名が挙がるドラマだ。

そこで今回は、昭和に子ども時代を過ごした人には懐かしい「名作海外ドラマ」を振り返りたい。

■もじゃもじゃ頭にダサスーツを着たスーパーヒーロー…『アメリカン・ヒーロー』

最初に紹介するのは『アメリカン・ヒーロー(原題:The Greatest American Hero)』(1981年※現地での公開年、以下同)。1980年代のUFOブームを受けてか、別題「UFO時代のときめき飛行 アメリカン・ヒーロー」がつけられたSFコメディ作品で、高校教師のラルフ・ヒンクリーがUFOと遭遇し、地球を救うため宇宙人から貰ったスーパースーツで活躍する物語だ。

本作の魅力をあげるとすれば、ラルフの“格好が悪い”奮闘ぶりだろう。金髪もじゃもじゃ頭が印象的なラルフは、アメコミのようなマッチョな体形とはほど遠い一般人。宇宙人からもらったスーツは上から下まで全身真っ赤なうえ、胸には漢字の「中」に似たマークが描かれたりと、いわゆる“ダサい”デザインだ。そのうえ、スーツの取り扱い説明書を失くしてしまったため、空を飛べば地面に墜落や建物に衝突、力加減を間違え大騒ぎを起こすなど失敗続き。

変身時も『スーパーマン』のようなスタイリッシュさは皆無で、ドタバタしながら道路や住宅街でスーツに着替え、その姿を人々から白い目で見られる始末。

こうした日々に辟易するラルフはヒーロー活動を辞めたいと思うものの、相棒であるFBI捜査官のビル・マックスウェルに何時も言いくるめられてしまうのだ。とはいえ、嫌々ながらも奔走するラルフの姿は、子どもたちに笑いを与えてくれた親しみやすいヒーローだった。

■高い塀を飛び越え電話帳を引きちぎるサイボーグレディ…『地上最強の美女 バイオニック・ジェミー』

女性が活躍するドラマ作品では、三人の美女が活躍する『地上最強の美女たち!! チャーリーズ・エンジェル』(1976年)が有名だが、この時代にもうひとつ忘れてはいけないのが『地上最強の美女 バイオニック・ジェミー(原題:The Bionic Woman)』(1976年)だ。

主人公のジェミー・ソマーズはスカイダイビング事故で瀕死の重傷を負うが、科学情報局(OSI)が施したバイオニック(サイボーグ)移植手術により一命をとりとめる。だが、手術の後遺症で過去の記憶を一部失ってしまったジェミーは、自身を救ったOSIのため、サイボーグ化した右耳、右腕、両足を駆使して様々な事件を解決する。

ジェミーがバイオニック・パワーを使う際に、「シュササササーッ」という効果音とともにスロー映像となり、その威力やスピード感を表現した斬新な演出を覚えている人も多いだろう。たとえば、分厚い電話帳を素手で真っ二つに引きちぎり、高い壁を飛び越え、猛スピードで走る車を追いかけるときなどに使用され、子どもたち視聴者に「凄い!」という視覚効果を与えてくれた。

そんな本作は、1970年代に放送された人気シリーズ『600万ドルの男』のスピンオフ作品だ。こちらは、主人公のスティーブ・オースティンが飛行機実験で事故に遭い、左目、右腕、両足の改造手術を受けているのだが、設定や共演番組など多くの点で『ジェミー』と関わっていたのが面白かった。

■最高の相棒は人工知能を搭載した喋るドリームカー…『ナイトライダー』

人と車の異色のバディ作品『ナイトライダー(原題:KNIGHT RIDER)』(1982年)は、私立探偵機関の調査員“ナイトライダー”ことマイケル・ナイトが、人工知能K.I.T.T.(キット)を搭載した“喋る車”「ナイト2000(※以降キット)」を相棒に、さまざまな事件を解決する特撮アクション。

マイケルは元刑事でありながら、不法侵入やキットを使ったハッキングなどの違法行為を行うため、キットから何時も注意をされてしまうのだが、本作ではこうしたやり取りが“お約束”として毎話登場。今でいう超AIであるキットは正論を述べながらも、良くも悪くもマイケルを最も理解する相棒だ。

そんな一人と一機の掛け合いも魅力ではあるが、キットの車体に搭載された武器や性能も子どもたちを夢中にさせた。車体後部から吹き出す煙幕をはじめ、ロケット弾や火炎放射、さらに1980年代ながらテレビ電話が設置されているなど、当時も今もまさに「ドリームカー」である。

今回紹介した3作の共通点として、オープニングで物語の簡単な説明をしてくれるところ。その解説により、途中から見ても概要が何となくわかるのが、今思えば親切なうえ物語に入りやすい作りだった。また、後から付けられた長い邦題、さらにオープニングナレーションも作品への期待を掻き立てられたものだ。

最近はこうした人気海外ドラマのリブート作品が増えているようだが、新規層はそれを足がかりに、当時の作品に触れてみるのも良いかもしれない。

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