「SNSさらし」被害者たちの苦悩 抗議や法的措置も…「ネットの知り合いに本名を明かすべきではなかった」〈アンケート〉

プラナ / PIXTA

何かトラブルが起これば、SNSに個人情報がさらされてしまうこともある時代だ。

「さらし行為」の経験について弁護士ドットコムが一般会員を対象にアンケート調査を実施したところ、「被害にあったことがある」と回答したのは19.1%(137人)だった。

被害内容は多岐にわたった。複数の当事者が取材に応じ、被害の詳細とその後の対応について答えた。アンケートでは、被害者の多くが抗議や法的措置の対応をとっていることがわかった。

●ノーマスク団体にYouTube動画をアップされた

60代の男性(千葉県)は数年前に被害にあった。

当時は新型コロナの流行下にあり、働いていた公共施設では、利用者にマスク着用を呼びかけていたが、拒否する利用者を注意したところ、撮影され、数時間後にはYouTubeに動画がアップされた。

相手はコロナウイルスに関する「国の陰謀を暴く団体」の人で、マスク着用拒否など自身の主張を繰り返し、反論する男性に素人では答えられないような質問を次々と投げかけ、その様子を終始撮っていたという。

翌日、YouTube管理者に削除依頼をして、しばらくして動画は削除された。

●「性的な内容」を掲示板に投稿された→相手を刺激すること恐れて何もせず

20代女性は、ネット掲示板「爆サイ」に、自身のプライベートに関する性的な内容や容姿に対する中傷的な書き込みを投稿されたという。記載内容から元交際相手によるものだと容易に推測できたという。

投稿の削除要請も検討したが、誹謗中傷が過激化することはなく、相手の住所や勤務先はわかっていたことから、「余計に触発するのは賢明ではない」と考えて、特に対処することはなかった。

しかし、交際のきっかけになった出会い系サイトのアカウント名とともに記載していたので「親しい友人などが見れば、私だと推測できる人がいるかもしれない」

●「女性食い物に」とブログに書かれた→弁護士通じて削除させる

西日本に住む男性は、ブログで個人情報をさらしたブロガーに対して抗議し、アカウントを削除させた。

同じテーマのブロガーとオフ会で仲良くなったが、仲間内のトラブルの原因が男性にあると誤解したことをきっかけに、氏名や勤務先まで似顔絵付きでさらすのみならず、「オフ会で女性をホテルに連れ込み食い物にしている」などの内容を複数回にわたって記載したという。

男性は弁護士を通じて、ブログの運営会社への削除要請を実施し、相手には刑事告訴の考えを伝えてブログをすべて削除させた。

「記事を読んだ知人から縁を切られかけるなどの影響も出ていました。ネットを通じて知り合った相手はどんな人かわかりません。うかつに本名や勤め先を伝えてはいけないと痛感しました。不用心でした」

数日後には弁護士に相談しており、相手の行動がエスカレートする前に対処できたことはよかったと話す。

●他にもたくさんの被害

アンケートでは、さらし行為の被害にあったと答えた人たちに、どのような対応をしたのかも尋ねた。

「抗議した」が39.7%(回答数54)、「相手の身元を特定して民事裁判や刑事告訴など法的手続きをとった」が8.8%(回答数12)となり、両者を合わせると、「何もしなかった」との回答50.0%(回答数68)に迫った。

他に寄せられた被害概要をいくつか紹介する。

「ゲイであることを、前の会社の友人にバラされた」

「事実無根のある事件の犯人と書き込みされ、勤め先実名写真をさらされた」

「名指しでありもしない性犯罪をしたと書かれた」

「私のインスタグラムの写真のデータから違うアカウントを作って成りすまし、セフレ募集など卑猥な文言をつけて電話番号も公開した」

「社内の関係者から実名で誹謗中傷された」

「Googleの口コミに実名に近い形で誹謗中傷を受けた」

「ドライブレコーダーに映った映像を晒された。ただ歩いているだけの映像を近隣住民が投稿」

「ライブ配信で仲良くしていたリスナーさんに交際を迫られ、断ると場所特定をされ、ありもしない事も含め、その配信サイト上で言いふらされた。逆上なども怖かったので、周りへの注意喚起に留めた」

※インターネットやSNS上での「さらし行為」による被害が、あとを絶ちません。その実態について、弁護士ドットコムの一般会員を対象にアンケートを実施しました。(実施期間:5月22日〜5月28日、有効回答数717人)

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