「バレーに100%を注ぐみんなとやっていいのか」 育児と代表活動で抱えた35歳岩崎こよみの葛藤【ネーションズリーグ】

女子バレー日本、セッターの岩崎こよみ【写真:VNL提供】

買取大吉 バレーボールネーションズリーグ2024福岡大会

バレーボールネーションズリーグ(VNL)2024福岡大会は15日、北九州市の西日本総合展示場で女子第3週が行われ、世界ランク7位の日本は同9位セルビアに3-0(25-22、25-18、25-15)で完勝した。両国ともすでにパリ五輪出場が決定済み。世界ランク5位以内に入れば五輪の組み合わせで優位になる可能性があるため、重要な一戦だった。攻撃を操ったのはセッターの岩崎こよみ。出産を経て復帰した35歳は、葛藤もありながらコートに立っていた。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)

想いを込めたボールは決まりやすい。チーム最年長・岩崎のトスから次々と得点が決まった。古賀紗理那と石川真佑の二枚看板のスパイクをアシスト。時には荒木彩花や山田二千華の速攻にも繋げた。仲間が捨て身で拾った球に膝を折って入り込む。日本の攻撃陣を操り、完勝に導いた。

試合のなかった14日にパリ五輪出場が決定。全員が集められ、眞鍋政義監督から吉報を伝えられると、涙が岩崎の頬を伝った。

「今大会から自分がコートに立つ時間が長くてプレッシャーがあった。3年間、みんなが積み重ねたものを、自分が一緒になって結果に出さないといけない。自分が五輪に出場したいのも強くあって、ホッとしてしまいました」

2021年5月に第1子の男児を出産。育児に奔走しながら体を鍛え直し、コートに戻ってきた。遠征先に息子を連れることもしばしば。日に日に成長する姿を横目に戦った。昨年、5年ぶりにA代表に復帰。杭州アジア大会ではチーム最年長として主将を務めた。

だが、パリ五輪に向けて始動した日本代表に途中から入る形に。日の丸の重みを理解するからこそ、葛藤が生まれた。

「コンディション作りが必要な時でも、やっぱり子育てを優先してしまう時もある。そういう自分がバレーボールに100%を注いでいるみんなと一緒にやってもいいのか」

セルビア戦、トスを上げる岩崎【写真:VNL提供】

決意した五輪への挑戦「みんなの頑張りを繋げるために」

でも、五輪には出たい。自分の夢を叶えるため、挑戦を決意した。28歳の主将・古賀のサポートへ、33歳の山岸あかね、29歳の小島満菜美ら年長選手と結束。選手ミーティングは率先してリーダシップを取った。眞鍋政義監督も「古賀の負担を少なくするためにキャプテンみたいなことをやってもらった」と頼りにする。

ママの葛藤は、いつしか覚悟に変わっていた。

「自分にしかわからないこと、経験を伝えられれば」

五輪切符の懸かった今大会も先発起用。勝てば五輪決定と伝えられていた13日、カナダに敗れた。セッターとアタッカー陣の呼吸が合わなかったのも一因。それでも中1日で修正し、チームの大目標だった6大会連続の五輪切符を死守した。戦いはここで終わりじゃない。

「みんなの頑張りを繋げるために頑張ってきた。自分のできることをしっかりコートで表現する。五輪まで本当に時間がない」

16日の米国戦に勝って世界ランク5位以内に入れば、五輪の組み合わせで優位になる可能性もある。愛息を抱く、その両手で日本が勝つためのトスを上げる。

THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada

© 株式会社Creative2