群馬県の知っているようで知らない魅力 落ち着いて観光できるスポットを元局アナがレポート

碓氷峠鉄道文化むらのトロッコ列車と日下千帆アナ【写真:日下千帆】

週末を利用して旅行したいのに、どこに行っても混雑している――と諦めぎみの人が多いでしょう。そんな人におすすめなのが、東京からのアクセスが良く、自然や観光スポットも多い群馬県です。フリーアナウンサーたちが、バトンをつなぎながら日本の良さをリポートしていく連載「とっておき日本再発見」。元テレビ朝日アナウンサーで、現在はフリーアナウンサーの日下千帆さんが群馬県の見どころをレポートします。

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地元の特産品が並ぶ「道の駅みょうぎ」の人気商品は?

関越自動車道と北関東自動車道が通る高崎市は、関東各地からのアクセスが良く、その周辺は観光地としても魅力たっぷりです。これから紹介するのは、高崎駅から車で1時間以内のドライブで行くことができるスポットばかり。日帰りや1泊でも楽しむことができます。

私が最初に訪れたのは、妙義山のふもとにある「道の駅みょうぎ」です。妙義山とは、赤城山(あかぎやま、あかぎさん)・榛名山(はるなさん)と並び、上毛三山のひとつに数えられる名峰。山の頂上がおもしろいほどにでこぼこしていることから、日本三大奇勝のひとつでもあります。昨年3月には、国の名勝指定100周年を迎えました。

道の駅みょうぎには、地元でとれた新鮮な食材――シイタケやマイタケ、ネギ、こんにゃく、梅などが所狭しと陳列されています。店員さんによると、遠方からの観光客には「ネギ味噌」や「塩だれ下仁田ネギ」「下仁田ねぎの生ドレッシング」といったネギの加工品や、近くに富岡製糸場があることからシルク製品が人気なのだそう。

また、郷土料理「おっきりこみ」が自宅で手軽に楽しめる、富岡市観光協会公認の乾麺セットもおすすめ。おっきりこみとは、養蚕の仕事で忙しかった富岡のお母さんたちが、季節の野菜と幅広麺を煮込んだものです。セットには、富岡特産の「こしね(「こ」んにゃく、「し」いたけ、「ね」ぎ)をはじめとする種類豊富な具材やめんつゆが入っているので、鍋と水さえあれば具だくさんの本格派おっきりこみが簡単に作れます。

日光東照宮を彷彿させる絢爛さの妙義神社【写真:日下千帆】

国の重要文化財に指定されている妙義神社へ

道の駅から歩いて行ける位置に、1500年前の歴史を持つ「妙義神社」があります。妙義山の主峰である白雲山の中腹にあり、近くには白い“大”という文字が。

妙義神社の目印になっており、江戸時代の旅人は中山道からこの大の字に向かって遥拝したそうです。大の字のいわれは諸説ありますが、奥の院に祭られていた大日如来の“大”という説、または妙義大権現の“大”という説が有力です。江戸時代はわらでできていたようですが、1970年に現在の鉄製のものが再建されました。

1756年江戸中期に建てられた御本社は、全国でも珍しい黒漆塗権現造り。日光東照宮を手がけたのと同じ宮大工チームによるもので、豪華絢爛。唐門、漆総門とともに国の重要文化財に指定されています。

妙義神社では、木々や山から発せられる自然エネルギーに包まれ、すっきりと癒やされました。

富岡製糸場の繰糸場【写真:日下千帆】

世界遺産登録10年を迎える「富岡製糸場と絹産業遺産群」

続いて、妙義神社から車で20分ほどかけて向かったのは、群馬を代表する観光地のひとつであり、現在は多い日に一日3000人の見学者が訪れる「富岡製糸場」。2014年6月、「富岡製糸場と絹産業遺産群」として世界遺産に登録されました。

富岡製糸場は1872(明治5)年に創業し、官営模範工場として115年間、生糸を作り続けました。見どころは、創業当時のまま完全な姿で残されている、和と洋の技術を織り交ぜて作られた工場建築です。

木骨レンガ造りになっており、骨組みには妙義山の杉が使用されました。敷地面積は約5万5391平方メートル。建物の長さが140メートルという広大な工場を建築するため、当時は山が坊主になるほどたくさんの杉を必要としたといいます。そしてレンガは、深谷の瓦職人により造られました。音声ガイドやガイドツアーもあるので、予定に合わせて効率良く見学をするといいでしょう。

ここで働いていた工女さんたちは、当時としては好待遇のキャリアウーマンだったそうです。日本の輸出品ナンバー1を誇った生糸の生産に関わる仕事は、さぞやりがいがあったことでしょう。

場内には、シルクギャラリーと売店、2つのお土産スポットがあるので、富岡産の繭100%を使用した「富岡シルク」のお菓子や雑貨もお見逃しなく。

めがね橋【写真:日下千帆】

廃線跡は遊歩道として整備 国の重要文化財を見ながらウォーキングも

富岡製糸場を見学したあとは、生糸の輸送で重要な役割を果たした鉄道遺産を見学しましょう。かつて「日本のシルクロード」と呼ばれていた、信越本線の廃線跡です。現在は遊歩道になっており、「めがね橋(碓氷第三橋梁)」や「旧丸山変電所」などの重要文化財を見学しながら楽しくウォーキングができます。

めがね橋は、200万8000個のレンガで造られた、日本最大級の4連アーチ式鉄道橋です。山々の緑に古い赤レンガが映える美しい光景が広がり、その下を流れる碓氷川のせせらぎに癒やされます。

地元観光ガイドボランティアによると、廃線跡が遊歩道として整備されたのは日本でここだけなのだそう。また、この橋から見た美しい景色は、高野辰之さんが作曲した童謡「もみじ」のモチーフになっているといいます。現在、この橋を世界遺産にしようというプロジェクトが活発化しているそうで、近い将来、たくさんの人がにぎわう観光スポットになっているかもしれませんね。

今回紹介したスポットは、大型観光バスツアーがコロナ禍以降復活していない場所もあり、比較的落ち着いて観光することができます。まだまだ見たいものがたくさんあるほど、群馬県は魅力的な場所であふれています。

日下 千帆(くさか・ちほ)
1968年、東京都生まれ。成蹊大学法学部政治学科を卒業後、テレビ朝日入社。編成局アナウンス部に配属され、報道、情報、スポーツ、バラエティとすべてのジャンルの番組を担当。1997年の退社後は、フリーアナウンサーとして、番組のキャスター、イベント司会、ナレーターのほか、企業研修講師として活躍中。

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