20代の労働市場に変化...キャリア採用「難易度が増している」企業は約半数 「外資系コンサルの影響大」の指摘も

学情が企業・団体359社の人事担当者から回答を得た調査によると、20代キャリア採用の難易度が前年度と比べて「難しくなった」と答えた企業等は27.3%となった。「やや難しくなった」の18.4%と合わせると、45.7%と半数近くになる。

回答者からは「大手企業も含めて、20代を対象にしたキャリア採用を実施する企業が増えている」「新卒採用から、20代も対象にした通年採用にシフトしている印象」「(20代でも)提示する年収を上げなければ(経験者を)採用しにくくなっている」など、20代の労働市場に変化が生じていると指摘するコメントが寄せられている。

高給を出す会社しか「優秀な候補者」と会えない理由

そもそも20代を対象としたキャリア採用の難易度は、どのくらい難しくなっているのか。回答者の40.9%は「難しい」と答え、「やや難しい」の39.4%と合わせると79.7%に。「易しい」「やや易しい」は、合わせても1.1%しかなかった。

採用難易度の上昇を受け、企業として対応した/対応を検討していることは、「採用手法の変更・追加」が49.3%と最も多く、次いで「採用体制や選考フローの見直し」が35.6%、「採用基準の見直し」が33.6%と続いた。「社員の働き方・労働条件の見直し」32.2%、「社員の処遇見直し・モチベーション向上」30.1%をあげる企業もあった。

「採用手法の変更」とはどのようなものなのか。人材サービス企業で転職支援を行っているAさんは「新たにダイレクトリクルーティングを始めている会社が増えているのではないでしょうか?」と推測する。

「これまでキャリア採用は、いわゆるエージェントと呼ばれる人材紹介会社に紹介を依頼し、面接を経て採用している企業が多かったと思います。しかし、エージェントは転職者の想定年収の3~4割を成果報酬として受け取るため、優秀な人材はどうしても高給を出す会社に優先して紹介してしまう。安い給料しか出せない魅力の低い会社には、候補者がまったく紹介されない状況になりがちです」

代わりの手法として利用が増えているのが、人材会社に候補者集めを頼む「求人広告」や「人材紹介」ではなく、企業の採用担当者自身が会員制のデータベースにアクセスしてメールなどで直接スカウトを行うやり方。「ダイレクトリクルーティング」とは、このような手法を指すのだそうだ。

企業からのスカウトなら「給与以外の魅力も伝えられる」

それでは、どんな会社の給与が高いのか。Aさんによれば、若年者層の年収相場を引き上げているのは「外資系コンサル」だという。

「アクセンチュアやデロイト、PwCといった外資系コンサル会社が、DXやコンサル人材の優秀層に高い給与を支払っています。一方、日本の伝統的企業の中には入社年次で給与テーブルが細かく決まっているところもいまだにあって、そういう企業は『いくら優秀だからって飛び抜けた給与なんて払えないよ』と平気でいうわけです。そんな会社が、優秀な専門人材など採用できるわけがありません」

一方で、大企業の中にも「外資系コンサル会社の出身者を採用してDXを進めたい」といった課題をもった企業では、いわゆる「ジョブ型」の人事制度に変更し、給与水準を上げ、難易度の高い職務にはさらに高い報酬を支払うことができるようにしている。

それでも、単なる「報酬競争」が加熱してしまうと、コストをかけて採用しても実力を発揮してもらう前に退職されるリスクも高まってしまう。

「シンプルにいうと、人材紹介会社のエージェントに頼むより、ダイレクトリクルーティングの方が、採用コストが低く抑えられるのですね」

ダイレクトリクルーティングを利用するために人材サービス会社に支払うお金は、データベースの利用料に加え、「成功報酬費」が上乗せされる場合もあるが、それでも人材紹介より安く済むことが多いという。

もちろん、自分でデータベースを検索し、その候補者にあった「口説き文句」を準備しなければならないなど、採用担当者の業務は格段に増える。それでも、ダイレクトリクルーティングを利用するメリットはあるという。

「スカウトの送り方によっては、当面の給与以外の魅力も伝えられる余地が多くなります。そうすると、エージェント経由では紹介してもらえなかった人材に、自社でアプローチして採用できる可能性も高まってくるわけで、採用担当者の腕の見せどころです」

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