「歩くのは難しい」1歳息子に言われた残酷な言葉 しかしその後、息子に奇跡が 小さい体で闘う息子とその家族に迫る

とある難病と闘っている響生ちゃん(以下、ひびちゃん)と、その家族(@hibi_131)。ひびちゃんが見せた奇跡をおさめた動画はInstagramで129.6万回再生されています。

ひびちゃんのお母さんに話を聞きました。

小さなひびちゃん

ひびちゃんが患っているのは『軟骨無形成症』と呼ばれる、指定難病に認定されている骨系統疾患。日本では2万人に1人の割合で、低身長や四肢の短さ、指の短さが現れる病気です。

成長には個人差がありますが、大人でも身長は男性およそ130cm、女性で124cm。ひびちゃんは現在5歳で身長は約78cm、見た目は1歳半ぐらいです。

機械を通し呼吸するひびちゃん(@hibi_131さんより提供)

軟骨無形成症は、現時点では根本的な治療がありません。さまざまな治療を組み合わせ、治療を頑張っている人もいるそうです。

もう歩けないといわれたひびちゃん(@hibi_131さんより提供)

リハビリ生活が始まったきっかけは、手術の後遺症でした。

ひびちゃんが1歳の誕生日を迎えてすぐの頃。軟骨無形成症でよくみられる合併症がひびちゃんから見つかり、骨を削る手術を行いました。手術翌日に体調が悪くなり、自力で呼吸ができない状況になったひびちゃん。色々と検査をし、再手術をすることになります。

後日、医師から『頚髄損傷』と診断を受け、医師からは「後遺症で歩くのは難しい」と告げられました。
首から下がまったく動かなくなってしまい、手術で気管切開をしたので、家族はひびちゃんの声を聞くことすら難しい状況に。ここからリハビリの生活が始まります。

「『100%の状態に戻ることは難しいですが、リハビリをして本人の成長と回復を信じましょう』と医師は言ってくれましたが、最後に『恐らく手術前の身体に戻ることはないでしょう』と言われたときの記憶は今でも鮮明に残っています」と、お母さんは当時の気持ちを語ってくれました。

リハビリ中のひびちゃん(@hibi_131さんより提供)

鉄バットで思い切り後頭部を殴られたような、これまでに経験したことがないような衝撃。これが現実なのか、それとも現実ではないのか、頭の中が混乱して訳がわからない感覚。

「先の見えない真っ暗闇の中に、家族みんなが放り出されたような感覚になった」と、家族全員に衝撃が走ったできごとでした。

悲しい気持ちをこらえ「自分の負の感情をぶつけるエネルギーがあるのなら、そのエネルギーは響生が絶対に良くなるという方に全力を注ごう。とにかく前向きにいつもの明るい私でいようと響生の前では常に心がけていました」とお母さん。

歩けたよ!

現在、少しずつ歩けるようになってきたひびちゃん。なんと「歩けないでしょう」と医師に言われたことを跳ね返したのです。
そこにいたるまでに、ひびちゃんを懸命にサポートする家族の姿がありました。

まずは呼吸のリハビリから始まったリハビリ生活。

筋力がなくなってしまった頭を支えられるよう、首や体幹をつけていくことも少しずつリハビリで訓練していきました。

「神経の損傷では、リハビリが早ければ早いほど良い」と話を聞き、地元の病院でリハビリを開始。入院しながらリハビリをしている間、お母さんは小児や頚髄損傷に特化した施設や病院を調べ、SNSで情報を集めて気になるリハビリの病院を主治医に相談するなど、できることはなんでもしていました。紹介状を書いてもらい、1ヶ月ほど関西の病院へ転院したこともあります。

各病院を転々とし、10ヶ月ほど入院生活をした後やっと退院。家族3人での在宅生活が始まりました。
在宅中も週に3回リハビリを受けに通院していました。

現在は週に1回リハビリの通院のみで半年ごとにお世話になった関西のリハビリ病院へ行っているそうです。小さな身体で日々リハビリを頑張ったひびちゃん。少しずつ体力を取り戻し、自分の力で呼吸することができるようになりました。

そして、気管切開をしてから1年半頃「もう必要ないだろう」と、気管切開も閉鎖することに。

5歳になったひびちゃん(@hibi_131さんより提供)

ひびちゃんがリハビリを始めたころ、日本では新型コロナウイルス感染症が流行。ただの風邪でさえも重症化してしまうリスクが気管切開にはあります。当時はとにかく人との関わり、体調面に気をつけるのが大変だったようです。大好きな家族との面会もなかなかできませんでした。

とにかく毎日笑って過ごし、ひびちゃんを不安にさせないよう心がけていたお母さん。

「響生の身体が将来少しでも動きやすくなって、本人の生活がしやすいよう、とにかくリハビリを集中的に頑張ってもらいたいと考えました。就学までの間は響生の側にいようと決め、私は仕事を退職。とにかく響生との時間を大切にしながらサポートをしようと決めました」とお母さんの意思の強さが伺えます。

ひびちゃんのリハビリにはたくさんの人が力を貸してくれました。今までお世話になった病院の先生や看護師さん。リハビリでお世話になって、出会ったたくさんのセラピストさん。

福祉関係の人々は全力でひびちゃんとお母さんに向き合ってくれました。また、身近な友人や身内、SNSで出会った軟骨無形成症の家族。

Instagramでひびちゃんを見つけてくれた方々からのたくさんの「頑張れ」「絶対にひびちゃんの未来は明るいよ」たくさんの言葉にひびちゃんの家族は励まされました。

リハビリの訓練で、福祉用具を使いながら歩く練習をしたひびちゃん。最初は自分の力で支えて歩くことも難しかったようです。しかし、訓練をしていくたびに大人の支えなしで進むように。そして、手押し車を使って自分の行きたい所へどこまでも歩いて行けるようになりました。

これがここ半年くらいのできごとです。

「ここ最近、リハビリの訓練中に自分の力で少しずつ1人で歩く姿が見られ、本人も自分で歩けたことがすごく嬉しかったようです。満面の笑みを見たとき、みんなで諦めずに頑張ってきて良かったと本当に嬉しかったです」とお母さんは話します。

歩くこと以外にも、少しずつ首が座ってきて、寝返りもゆっくりまたできるようになってきたひびちゃん。腕も少しずつ動かして、お母さんの手を握り返すように。徐々に回復して、手術前以上のことができるようになり、少しずつ成長していきました。

意思を尊重して

ひびちゃん(@hibi_131さんより提供)

リハビリ生活が始まって4年。今まではひびちゃん本人の意思で「リハビリをする、しない」の判断が難しかったので親の気持ち優先でひびちゃんはずっと頑張ってきました。

ひびちゃんは来年小学生になります。今は、就学に向けて準備をしている最中です。

お母さんは「本人とどうしていきたいかを、これからは徐々に話し合って決めていこうかなと考えております」と話し、ひびちゃんの意思を尊重して家族はこれからも向き合っていくようです。

当時、ひびちゃんと似たような境遇にいた人をインターネットやSNSでどんなに探しても見つけられなかったそう。

「響生はどうなっていくんだろう…」とお母さんは、見えない未来がすごく怖かったのを覚えています。

「『もし、どこかでいつか響生と同じような状況で困っている人がいたら。何か少しでも情報になるならば』と全部は載せきれていませんが、発信したことによって似た状況の方々からメッセージをもらうことが増えました。少しずつ自分の力で歩けるようになった響生を見て、希望に繋がったと言ってもらえたことも何度かありました」ひびちゃんは人々の希望になっているようです。

「情報を探している人がいるかもしれない。『軟骨無形成症』という疾患があるということ。疾患や障がいを持っていたとしても、何かがみんなと違ったとしてもみんな同じ1人の人間であって、みんなと同じように楽しく日々を過ごしていること。ほんの少しの人でも知ってもらえる場が増えて、そんな子どもたちが少しでも過ごしやすい世の中になっていけば良いなと思います」

これからもひびちゃんの奇跡は続いていきます。

【出典】
『軟骨無形成症』https://www.nanbyou.or.jp/entry/4570

ほ・とせなNEWS編集部

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