【特別試乗企画 メルセデスベンツ Eクラス ステーションワゴン×BMW 5シリーズツーリング 前編】きっとあなたも好きになる・・・イケメンワゴンが誘う理想の世界

実用性を考えたらSUVが魅力的に見えるし、走りを楽しむならセダンを選びたい。けれど、どちらも望むなら・・・改めて注目されるべき存在が、「ワゴン」だろう。シンプルにカッコいい!と感じられるスタイリングも含めて、乗り物としての理想がそこにある。前編はまず、それぞれの「カッコよさ」と実用性能について比較してみよう(MotorMagazine 2024年6月号より再構成)

あえてワゴンを選びたくなるほど美しいシルエット

今、「スタイル」という言葉を意識させるクルマと言えば、ワゴンではないだろうか。SUVが乗用車の基本形となり、今やワゴンは世界的に退潮気味。求められているのはヨーロッパや日本ぐらい。けれど、それをあえて選ぶのは、うまくやれば粋になる。

2024年1月に登場したばかりの新型Eクラスステーションワゴンは存在感をさらに高めた。

室内の広さや荷室の容量を欲する人にとっても、ワゴンはもはや自然と手が伸びる存在ではない。室内の広さ、容量を重視するならSUVがあるし、背の高いクルマがイヤならスポーツカーやセダンでいい。そんな中で見ればワゴンは、とくに今となっては中途半端な形態なのかもしれない。

けれど、だからこそワゴンは乗る人の嗜好の強さや、譲れないスタイルを色濃く映し出す。SUVを選んでおけば無難なのに、ワゴンに食指を伸ばすのは、一体どんな人なのか。このクルマでどんな週末を過ごしているのか。そうしたことを想像させるのだ。

ここで登場させるメルセデス・ベンツEクラス ステーションワゴン、そしてBMW5シリーズ ツーリングは、改めて言うまでもなく、輸入ワゴン車の中でも最高峰に位置する存在である。これらに乗って得られるものは何か。それこそスタイルをアピールできる選択となるのか。じっくりと乗って、検証してみた。

メルセデス・ベンツEクラス ステーションワゴン「流麗さを誇りたい」

メルセデス・ベンツEクラス ステーションワゴンは、1月に登場したばかりの新型である。試乗車は2L直4ターボエンジンを積むE200ステーションワゴン アバンギャルドだ。

E 200には、エンジン単体で 204ps(150kW)、320Nm を発生する、新型の 2L 直列4気筒ターボエンジンの「M254」が採用されている。

まず視線が向かうのは、美しいフォルムではないだろうか。

長いボンネット、短いオーバーハングにセットバックしたキャビンという構成はセダンと同様。その上でステーションワゴンは、リアに向かってなだらかに落ち込んでいくルーフラインによって、伸びやかな印象が一層強調されている。

今や全長はセダンとまったく変わらない。それなのにステーションワゴンの方が断然低く、長く感じられるほどである。

私が以前に愛用していたS124型の300TEは、機能に徹したまさに箱のようなデザインがかえって魅力だった。それが次のS210型あたりから徐々に変化してきて、今や流麗さがセールスポイントにすらなっているのだ。

フロントグリルは大型化。ロゴの周りには小さなスリーポインテッドスターが散布する。

BMW5シリーズツーリング「オーセンティックゆえに強い存在感」

対するBMW5シリーズ ツーリングは先般、新型が発表されたばかり。しかしながら今回連れ出したのは現行型の最終モデル。540i xDrive ツーリングMスポーツはラインナップの最上級に位置する存在である。

2017年にデビューしたG31型5シリーズツーリングはいまだにデザインの古さを感じない。

改めての対面で驚いたのは、そのスタイリングがとてもオーセンティックに見えることだ。フォルムはシャープで直線的。ボディサイドを前後に貫くショルダーライン、Eクラスのそれに較べれば後方までストレートに伸ばされているルーフなどが、そうした印象に繋がっているのだろう。

こうして2台を並べるとなおのこと、そんな印象が強まる。質実剛健なメルセデス・ベンツのステーションワゴンに対して、軽快でスポーティなのがBMWのツーリングだというのがかつての印象だが、目の前の2台を見ると、まるで立場が逆になったかのようだ。

けれど、それが良かった。大胆なアプローチを続ける最近のBMWのデザインと較べると、刺激薄あるいは古典的と感じる人もいるかもしれない。けれど一方で、その端正な佇まいには、安心感のようなものが漂うのも事実である。

BMWのツーリング伝統のガラスハッチは、狭い駐車場などでの荷物の出し入れに便利。

上質な空間と相応の使い勝手。数値にこだわる必然はない

このエクステリアデザインとも密接に関係するラゲッジスペースを見てみよう。

最大積載量1830Lを確保するEクラスステーションワゴン。リアのホイールハウスがトランクルームに突き出ていないので非常にスッキリとした印象。トランクスルーを利用してパーテーションネットを装着すれば荷物を安心安全に積載できる。
モデル末期の5シリーズツーリングなので、最大積載量は1700LとEクラスには一歩及ばず。ただし全体としてスクエアな荷室空間が特徴で、頭上空間のゆとりが大きい。可動式フックを備えたラッシング・レールも装備され使い勝手も良好。

Eクラス ステーションワゴンの荷室容量は先代の640〜1820Lから、615~1830Lになった。後席使用時は微減、最大容量は微増である。ちなみに先々代212シリーズは最大1910Lだった。先に記したとおり、今や容量が最優先事項ではないということがわかる。

一方の5シリーズ ツーリングの荷室容量は後席使用時が570L、最大では1700Lとされる。数値上の差は小さくはないが、実際に両車を見較べると、普段の使い勝手は、どちらも十分なレベルを超えているのは間違いない。

リアゲートは大きく開き、トノカバーがそれに連動して持ち上がる。フロアにも側壁にも隙間なくカーペットが貼られて、40:20:40分割の後席バックレストを倒せばほぼフラットな空間が生まれる。

さらに、その荷室とキャビンを隔てるためのネットなども標準で備わるといったあたりまでは両車共通。

違いとしては、5シリーズ ツーリングにフロアにネットなどを固定するためのレールが備わり、床下に外したトノカバーを収めておく凹みがあり、リアゲートとは別にリアウインドウだけ開閉できることが挙げられる。スマートな使い勝手という面では、一枚上手と言うべきかもしれない。

ただし、実用において最大容量の数十リットルの差はさほどの問題ではないはずだ。上質な空間と相応の使い勝手があり、時に旅行用やレジャー用の大荷物を積み込むにも躊躇が要らなければ十分なはず。

スタイルで選ぶべきはやはりワゴンである

個人的にはロードバイクを積むにはCクラスや3シリーズだと気を使うので、このぐらいのサイズが欲しくなる。きっとユーザーの思いもその辺りではないだろうか。

SUVと同程度の積載力、セダンに負けず劣らずの走行性能を両立するワゴン。

スタイリッシュな佇まいに萌え、荷室容量の広さに夢膨らませ、そして走りの深い歓びに感心させられてと、今回この2台にじっくり乗ってワゴンの旨味を再確認することができた。

気づいたのだが、いずれの要素も決してワゴンが一番ではないかもしれない。しかし、それらが渾然一体となった時に放つ魅力は、まさにワゴンでしか得られないものだろう。

一体このクルマにはどんな人が似合うのか。試乗中、頭の片隅ではずっと、そんな想像を巡らせていた。今、スタイルのあるクルマに乗りたいのならば、選ぶべきはやはりワゴンである。

Eクラスのインテリアはメルセデス・ベンツの最新世代へと移行した。インテリアを囲むライトやフルデジタル画面など、先進感が満載だ。
5シリーズのインテリアは物理ボタンを数多く残すクラシカルな印象。ただし12.3インチのディスプレイやメーターなど先進性にも富む。

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