HIS中間決算、旅行・ホテル好調で5年ぶり黒字 通期は10億円上方修正

HISが6月14日発表した2024年10月期第2四半期(2023年11月1日~2024年4月30日)の連結純利益は、5年ぶりの黒字となる38億7700万円(前年は48億900万円の赤字)だった。3、4月において日本初海外旅行が良化するほか、旅行需要や訪日客増加で客室単価が上昇するなどホテル事業が順調に推移。通期決算は従来予測から10億円上方修正した70億円を予想している。同社の矢田素史社長は「通期では、既存事業においてコロナ前比で95%まで回復を見込んでいる」と話す。

売上高は、前年同期比56.6%増の1611億7300万円、営業利益は57億5900万円(前年同期は33億5800万円の赤字)、経常利益は60億8200万円(同35億6100万円の赤字)だった。

旅行事業は、営業利益が3月15日の業績予想修正値から20億円(HIS単体9.5億円増、ミキグループ5.7億円増)増加の49億6千万円に。HIS単体では3、4月の積み上げが想定以上の良化。売り上げが増加したことで粗利も上振れした。ミキグループでは、欧州の事業回復に伴い、粗利増加に加え貸倒引当金の回収で経費が圧縮された。

ホテル事業は営業利益が3月15日の業績予想修正値から3億円増の17.7億円に。国内ホテルでは訪日の受客を中心に高稼働が継続し、客室単価が上昇。加えて、コロナ禍で力を入れてきたコストマネジメントで利益が増加した。グリーンワールドでは、観光需要の回復で稼働率・客室単価がともに上昇するほか、オンライン予約中心の集客へのシフトも奏功した。

販管費は、旅行事業の回復に伴い、待遇面の改善や広告費、店舗開業費が増加するなど、前年同期比100億6900万円増の476億8400万円に。手元流動性は、2023年度末に比べて9億9000万円減少し、現金および預金勘定が1098億円4600万円、コミットメントライン330億円(未使用)となった。

通期は、日本初海外旅行需要の回復に遅れが見られたが、第2四半期の業績を織り込み上方修正。売上高が前年比42.9%増の3600億円、営業利益が同687.3%増の110億円、経常利益が同660.6%増の110億円を予測している。

円安の影響を受けるも、国内粗利率など上昇

決算を説明する矢田社長(中央)

同日に開かれた決算発表会では、矢田社長が下半期の取り組みを説明した。旅行事業は、グローバルの成長と収益性の改善で、営業利益を2019年同期比で72%まで回復を引き上げる。夏の海外旅行(7~9月)の予約は、円安の影響を受けて回復途上に。6月9日時点では2019年比で77%となっている。国内旅行取扱高は2019年同期比で85%と下回っているが、粗利率は3.9ポイント増の15.1%と上昇している。

海外旅行事業では夏の集客を強化する。夏の海外旅行の予約は2019年同期比で8割前後を見込んでいたが、足元では60%程度で推移。「スーパーサマーセールファイナル」などの施策の展開で積み上げに注力する。6月28日には、31年続いた旗艦店である「新宿本社営業所」を移転し、「トラベルワンダーランド新宿」としてリニューアルオープンする。国内旅行事業は、オリジナルコンテンツで差別化を図り、競争力ある商品で収益性を向上する。沖縄では、夏限定「HIS LeaLea読谷シャトル」の新規無料運行などに取り組む。北海道では「北海道日本ハムファイターズ」と連携した「ES CON FIELD 手ぶらで親子サマーキャンプ」公式ツアーの販売などを行う。矢田社長は、「収益性が高いハワイだが、単価がコロナ禍前で3割高くなっている。だが、昨年比からは横ばいで推移している。また、ビジネス航空券が伸びており、航空券とホテルを組み合わせたプランへの重度が高い」と説明した。

訪日旅行事業は、HIS海外ネットワークとの連携強化や、中国以外からの団体旅行の受客強化に取り組む。海外における旅行事業は、回復のハイグローバル市場をさらに加速するため、6月に新たにボリビアに拠点を開設するなど、新規デスティネーションを開拓する。また、シェアードサービスセンター(SSC)導入地域を拡大するなど、業務の効率化で収益性を向上する。

ホテル事業は、リブランドの推進やカテゴリーの増強で収益性の向上を図る。インバウンド需要が活発化する中、客室単価の向上を図るため「変なホテル」のプレミア化に取り組む。また、三重県に展開する「ヴィソンホテルズ」など一部施設でリゾート化の運用も始める。グリーンワールドは、台湾がコロナ前の利益を超えて海外ホテル事業の営業利益をけん引。グアムも各種施策の効果で良化が目立ち、赤字幅が2億円以上縮小している。

九州産業交通グループは、バス事業では国内外集客強化に向けて「くまもんラッピングバス」の運行を始め、5台の貸し切りバスを展開。リテール事業(飲食・物販)では、「格之進ハンバーグ」阿蘇くまもと空港店、「味千×桂花ラーメン」サクラマチ店を新規オープンするなど、新規業態への進出を加速する。

矢田社長は「旅行代金の価格は、円安の影響を注視しながら設定していく。2024から2026年においては、3カ年の中期計画を設けているが、今のところは変更なく、積極的に活動していきたい」と語った。

取材 ツーリズムメディアサービス編集部

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