【気象予報士が解説】「記録的な雨」って何?日ごろからそなえておくべきことは??

毎年、梅雨や台風のシーズンになるとよく、「記録的な雨となっています」といった報道を耳にするようになりますよね。「なんだか大変な雨なのかな」とは思いつつ、「記録的な雨」って結局どういうことだろう?と思うことも…。

「記録的な雨」とはいったい何なのか、そして「記録的な雨」の前にそなえておくべきことは?気象予報士・防災士として活躍する植松愛実さんに教えてもらいます!

文字どおり「記録になる」雨の量

テレビやネットの報道で「今回は記録的な大雨になっています」「明日から記録的な大雨になりそうです」などと言われた場合、文字どおり、観測史上の「記録になる」雨の量ということになります。

たとえば東京都心では、1時間降水量の観測史上最大値が88.7mm、24時間降水量だと392.5mmなので、1時間でおよそ90mm以上、24時間の場合はおよそ400mm以上の雨が降ったり、あるいは降る予想が出たりしたときは、「記録的な雨」と報道されることになります。

一方、全国でもとくに大雨が降りやすい三重県の尾鷲市(おわせし)では、過去最大の24時間降水量が806mmですので、たとえ同じ400mm降ったとしても「記録的な雨」にはなりません。

「キロクアメ」と呼ばれる情報も

今この瞬間に記録的な雨が降っていることを速報で伝えるための情報もあります。「記録的短時間大雨情報」と呼ばれるもので、名前が長いため気象予報士の間では「キロクアメ」と省略して言うことが多い情報です。

これは1時間あたり約100mm以上の雨が降ったときに、降った地点を簡潔に素早く伝える情報で、テレビを見ていると「記録的短時間大雨情報:〇〇県××市付近で120mm」といった形で速報テロップが流れます。

前述のように地域ごとに雨の降りやすさが違うので、具体的に何mmの雨で「キロクアメ」を発表するかは地域によってあらかじめ細かく決められています。もともと雨の少ない場所では1時間80mmくらいで発表されるようになっていますし、ふだんから雨が多い場所では110mmや120mmに設定されています。

「記録的な雨」の前にこれだけはやっておきたい!

国土交通省が提供する「重ねるハザードマップ」をもとに筆者作成。

報道で「記録的な雨」を伝えるのは、単に「新記録すごいでしょ」と言いたいわけではありません。「記録的な雨」が降るということは、その地域が経験したことのない量の雨が降ることになるため、これまで災害がなかった地域でも災害が起きてしまう可能性が高い、と伝えようとしているのです。

では、どういう災害が起きるのか?不思議に思われるかもしれませんが、雨が大量に降った場合に、どういうタイプの災害が起きやすいかは場所ごとに地形によって決まっているので、じつは大雨によって「意外な災害」が起きることはありません。

そして、自宅などがどういう災害の起きやすい場所にあるかは、ハザードマップで誰でも無料で調べることができます。ちなみに日本では、全世帯の8割近くの人が大雨災害の危険性が低い場所に住んでいるため、あらかじめハザードマップを見ておくことで、大雨時にむやみに外に出て被災するのを防ぐことができるのです。

国土交通省ウェブサイト「重ねるハザードマップ」

「記録的な雨」は数字だけじゃわからないことを教えてくれる!

気象予報士として仕事をしていると、ときどき「何mm以上だと大雨になるの?」と聞かれることがあります。しかし、そもそもふだんからどのくらい雨が降るかが地域ごとに全然違うので、数字だけでは判断できないことが多いのです。

一方、「記録的な雨」と言う場合は、その地域においてまさに記録になる雨なので、間違いなく危険だということがすぐわかります。とくに1時間あたりの雨の量が記録的になる場合は、短時間で判断して行動を起こさないと間に合わない場合も。

あらかじめ自宅がどういう危険のある場所にあるかを調べておき、家族とも話し合っておくことで、いざというときにあわてないようにしたいですね。

■執筆/植松愛実さん
気象予報士と出張料理人の両面で活動中。気象・防災に関するヒントのほか、野菜ソムリエ・食育インストラクターとしておいしい食材のおいしい食べ方を発信中。インスタグラムは@megumi_kitchen_and_atelier。
編集/サンキュ!編集部

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