はかない光の点滅、寄せては返す波のよう ヒメボタル、兵庫県多可町の神社で乱舞

点滅を繰り返しながら、夜の森で乱舞するヒメボタル=多可町加美区(9枚の写真を比較明合成)

 森林や草原などに好んですみ「森のホタル」と呼ばれるヒメボタルが、兵庫県多可町加美区の寺社林で乱舞している。ちかちかと点滅しながら飛び、闇夜に黄金色の光跡を点描する。はかない光に魅了された写真愛好家らがレンズを向けている。(伊田雄馬)

 生涯を陸で過ごすヒメボタルは、陸生の巻き貝などを食べて大きくなる。メスは飛べないため移動性が小さく、兵庫県のレッドデータブックでは「最近減少が著しい種」を意味する「要注目」に指定されている。

 ヒメボタルの成虫の大きさはオスでも7~10ミリ程度と、15ミリほどに育つゲンジボタルより一回り小さい。光る間隔はゲンジボタルより短く、1秒に2回ほどの点滅を繰り返しながら森の中を飛ぶ。

 人けのない神社の境内に隣接した寺社林では、夜のとばりが降りる午後7時ごろから1匹、また1匹とヒメボタルが発光。寄せては返す波のように、小さな光が近くの林道までやってくる。求愛のダンスは同9時過ぎまで続いた。

 写真愛好家の男性(57)はここ数年、毎年のように神社を訪れてヒメボタルを撮影しているという。「神秘的な光り方に癒やされる。地元の財産です」と話していた。

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