大気や水が存在するかも? 地球に近いサイズの惑星「グリーゼ12b」を発見。将来の観測で「生命に関連のある成分」の有無が明らかになると専門家

太陽系から比較的近い場所に、ほぼ地球サイズの惑星「グリーゼ12b」を発見したと5月下旬、東京都三鷹市の国立天文台などが発表しました
大気と液体の水が存在する可能性があるので、もしかしたら生命が存在するかもしれません。
どんな惑星なのでしょうか? わかりやすく解説します。

グリーゼ12bはどんな惑星?

金星のような濃厚な大気がある場合のグリーゼ12bの想像図。左に見えるのは主星のグリーゼ12(NASA公式サイトより) / Via svs.gsfc.nasa.gov

地球外生命などの調査をするために2015年、国立天文台内にアストロバイオロジーセンターが設立されました
同センターの 発表 によると、今回発見されたグリーゼ12bは、地球からうお座の方向に約40光年離れた恒星「グリーゼ12」の周囲を回る惑星です。
これまでも地球サイズの太陽系外惑星は数多く発見されてきましたが、その多くは地球から数百光年離れたところにあり、それに比べるとグリーゼ12bはとても近くにあることになります。
グリーゼ12bの半径は地球の0.96倍とほぼ同じです。金星が地球の0.95倍ほどですから、地球と金星とグリーゼ12bの大きさは非常に近いですね。

地球とグリーゼ12bを比較した画像。大きさがほぼ同じす。左からグリーゼ12bに大気がない場合、薄い大気がある場合、金星に匹敵する濃い大気がある場合になります。(NASA公式サイトより) / Via svs.gsfc.nasa.gov

この惑星の「1年」(公転周期)は 12.8日と短く、その軌道は主星からわずか 0.07天文単位(太陽と地球間の距離の約14分の1)しか離れていません。
しかし、主星の温度が低いため、惑星が主星から受ける日射量は地球の日射量の約1.6倍と、金星(地球の約1.9倍)と同じ程度。それでも、この日射量では惑星の表層が高温になってしまい、地表に液体の水が存在したとしても暴走的に蒸発してしまう可能性が高いと考えられています。
ただし、この条件でも液体の水が存在するパターンがあります。大気が存在する場合です。

グリーゼ12bに大気と液体の水が存在する可能性がある理由とは?

グリーゼ12bを調べる上で良い比較対象になるのが、別の地球型惑星「トラピスト1c」です。
この惑星は、地球から41光年ほど離れた赤色矮星トラピスト1を周回する7つの惑星の1つです。

主星トラピスト1とその惑星トラピスト1cの想像図(NASA公式サイトより) / Via webbtelescope.org

トラピスト1cは大きさが地球の1.1倍ほど、日射量が地球の2.2倍ほどとグリーゼ12bとよく似ています。
しかし、アメリカ航空宇宙局(NASA)のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の観測からトラピスト1cには少なくとも金星のような厚い大気は存在しないことがわかっています。主星トラピスト1の活動が活発なために強いX線や紫外線、恒星風などによって大気の大半を剥ぎ取られてしまった可能性が高いと考えられています。
ところが、グリーゼ12bの主星グリーゼ12はトラピスト1に比べると活動がとても穏やかです。しかも、グリーゼ12bはトラピスト1cに比べると主星から4倍以上も離れています。
そのためグリーゼ12bは一定量の大気を保持している可能性がトラピスト1cに比べて高いと考えられています。
金星の表面にかつて液体の水が存在していた可能性が指摘されていますが、金星の日射量(地球の1.9倍ほど)とグリーゼ12bの日射量(地球の1.6倍ほど)はそれほど変わりません。
そのため、グリーゼ12bに大気が存在する場合には、かつての金星と同じように、液体の水が現在も存在していたり、過去に存在した可能性がありそうです。
NASAの発表 によれば、グリーゼ12bに大気が存在しないと仮定した場合、惑星の表面温度は42℃ほどと推定されるそうです。

将来の観測で「大気に生命に関連のある成分が存在するのか、明らかになる」と専門家

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡のイメージ画像(NASA公式サイトより) / Via nasa.gov

もしグリーゼ12bに大気と液体の水が存在するならば、生命が存在する可能性も期待したくなりますね。
地球からみてグリーゼ12bが主星グリーゼ12の前を通過するとき、主星光はグリーゼ12bの大気の中を通ってきます。そのためこの光にはグリーゼ12bの大気に関する情報が含まれています。
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡がこの光を観測することで、グリーゼ12bの大気が、どれくらいの量存在し、どのような組成になっているのか、決定することを助けることができるだろうということです。
アストロバイオロジーセンターの葛原昌幸特任助教は、 プレスリリース で次のように述べています。
「今後のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による詳細観測や、将来の30 メートル級地上望遠鏡によるトランジット分光観測や直接観測によって、この惑星がどのような大気を持つのか、水蒸気、酸素、二酸化炭素などの生命に関連のある成分が存在するのか、明らかになる」

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