両陛下即位後初めて岡山へ 6年前の豪雨被災地をご視察 「全国植樹祭」ご出席

天皇皇后両陛下は、全国植樹祭に出席するため5月25日から2日間の日程で岡山県を訪問されました。陛下の岡山県ご訪問は8年ぶり。皇后さまは、初めてです。

到着後まず向かわれたのは、県立岡山工業高校。この高校では、生徒が地域の課題に取り組む活動をしていて、土木科では、学校周辺の道路の点検などを行っています。

土木科3年 笠原 陸さん:
この取り組みは私たちの学校で8年間継続しているもので、高校生が社会インフラである道路の巡回を行い、安全性や老朽化などを点検する活動です。

両陛下は「どこをパトロールされているのですか?」などと質問し、「良い取り組みですね」「これからも頑張ってください」と励まされました。

体育館では、全国植樹祭の式典で演奏する岡山市ジュニアオーケストラの練習をご覧になりました。

曲は「輝ける『令和』に向けて」。長年陛下にビオラの指導をしている兎束俊之さんが、即位の際に作曲したものです。

演奏を聞き、拍手を送られた両陛下。生徒たちに「素晴らしい演奏でした」「いつから楽器を始められたのですか?」と声を掛け、和やかに交流されました。

指揮・中井章徳さん:
「私もビオラを演奏してるんですよ」と陛下がおっしゃると、皇后さまが「弾いてみたら?」とおっしゃいまして、そこでちょっと笑いが起きました。
「実は先日、この曲を作曲された兎束俊之先生にレッスンに行ったところなんですよ」と陛下がおっしゃいまして、私が「一緒に弾かれますか?」とお誘いしたんですけど「明日も楽しみにしています」とおっしゃって。にこやかに声を掛けていただきました。

両陛下は、植樹祭の大会ポスターコンクールに入賞した児童・生徒ともお会いになりました。大会ポスターに採用されたのは、西山心和さんが小学5年生の時に描いた「みんなで育てるハートの木」です。

皇后さまが「葉っぱにハートが」と絵を指すと、陛下が「どういうことを意味していますか?」と尋ねられました。西山さんが「ハートは平和や幸せを意味するマークなのでみんなが幸せになるようにと…」と答えると、皇后さまは「いくつ描いたのかしら? 幸せそうですね」と目を細められました。

受賞者一人一人に声を掛けられた両陛下。絵に込められた木や森を大切にする思いに感心されたということです。

「森林を健全な姿で未来の世代へ」

翌5月26日、両陛下は岡山県総合グラウンド体育館で開催された「第74回 全国植樹祭」の式典に臨まれました。式典の冒頭、能登半島地震の犠牲者に対し、2700人の出席者と共に黙とうを捧げられました。

豊かな森づくりを目指す「全国植樹祭」。陛下は、おことばの中で、森林の大切さについて述べられました。

《天皇陛下 おことば》「現在では『木を伐(き)って・使って・植えて・育てる』という林業のサイクルを循環させる取組が推進されるとともに、花粉の少ない少花粉スギやヒノキへの植替えが進められるなど、森林が守り育てられていることを喜ばしく思います。また、森林から生産される木材は、昔から住宅などの建築物を始め、家具や食器など様々なものに使われており、私たちの暮らしに欠かせないものとなっています。こうした恵みをもたらす森林を、健全な姿で未来の世代に引き継いでいくことは、私たちに課せられた大切な使命であると考えます」

続いて、両陛下は「お手植え」に臨まれました。陛下は、岡山県の木・アカマツ、少花粉のヒノキとスギの苗木を丁寧に植えられ、皇后さまは、アクラとも呼ばれる岡山市の木・クロガネモチ、アテツマンサク、キクザクラの苗木一本一本に土をかけられました。

「お手まき」では、陛下は花粉の少ないヒノキとスギの2種類の種、皇后さまは、ヤマザクラとイロハモミジの種をまかれました。

森林や緑を育てる活動がさらに発展していくことを願われた両陛下です。

西日本豪雨被災地ご視察 陛下「地域の方は本当に真備のことが好き」

式典終了後、両陛下は、平成30年7月の西日本豪雨で被災した倉敷市真備町に向かい、復興状況を視察されました。真備町は、当時、川の堤防が決壊し、町の約3割が浸水。災害関連死も含め、これまでに74人が犠牲になりました。

復興のシンボルとして整備された「まびふれあい公園」で、伊東香織 倉敷市長が当時の状況を説明すると、陛下は「ここがちょうど、決壊した場所なんですね」と確認しながらじっと耳を傾けられました。

また、現在、9割の住民が戻ってきていると聞き「地域の方は本当に真備のことが好きで、頑張っていらっしゃるんですね」と述べられたということです。

両陛下は、多くの犠牲者を出した地区に向かい深々と黙礼されました。

引き続き、地域の復興に尽力した被災者3人と懇談されました。

地元の祭りを再開したと写真を見せながら説明した男性に、陛下は「何が一番苦労されましたか?」と尋ねられました。

皇后さまは、被災者の生活相談や地域の見回りをしている女性に「被災されているからこそ、相手の気持ちがよく分かるんですよね?」と声を掛けられました。

お帰りの際、両陛下は「本当に皆さんが頑張られて、いい形で復旧・復興されていることが分かりました」と労われていました。
(「皇室ご一家」6月2日放送)

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