「光る君へ」周明に愛はあったのか?松下洸平、複雑な胸中明かす

第24回「忘れえぬ人」より松下洸平演じる周明と、まひろ(吉高由里子) - (C)NHK

吉高由里子が紫式部(まひろ)役で主演を務める大河ドラマ「光る君へ」(NHK総合・日曜午後8時~ほか)でまひろが越前の地で出会う見習い医師・周明を演じる俳優、シンガーソングライターの松下洸平。まひろと出会うなり早々にロマンスが期待されていたが、前話のラストから16日放送・第24回にかけてショッキングな展開となり、松下が周明の心境について解釈を語った。

松下演じる宋の見習い医師・周明はオリジナルキャラクターで謎に包まれていたが、まひろとのやりとりから徐々にその素性が明らかに。日本(対馬)で生まれながら口減らしのために父親に海に捨てられ、宋の船に拾われると牛や馬のように働かされ、命からがら逃げ出した。前話のラストではまひろと海辺で“デート”する場面もあったが、まひろが左大臣・道長(柄本佑)と深い仲であることを察知した周明は、日本と宋の交易を実現しようとする宋の商人・朱仁聡(浩歌)のためにまひろを利用することを画策する。周明にとってまひろはどんな存在なのか?

「自分の知らない世界に大きな好奇心を持ちながら、型にはまらない生き方を望むたくましい女性という印象を持ちました。まひろのどこか軽やかさのある人柄や宋の言葉を積極的に学ぼうとする姿勢に、周明の心には少なからず特別な感情が芽生えていたと思います。自分と同様に辛い過去があるのにも関わらず、明るく天真爛漫に振る舞う様子は周明にはまぶしく、太陽のような存在に映ったのかもしれません」

松下はまた、周明が目的のためにまひろに近づいていることは認めながらも、周明にとってまひろが特別な存在であることは確かだと見ている。「周明は見習い医師ではありますが、宋と日本の交易を結ぶという密命を背負って上陸しました。その目的を果たすために、まひろを利用しようと企んで接近したことは確かです。けれども彼女に近づけば近づくほど、「今までの人生にこういう人と出会っていたら、自分の人生は変わっていたかもしれないな」という気持ちを抱くほどに心の変化がありました。彼は日本にいたときも宋で働いていたときもあまり心を開かなかったと思いますし、ずっと孤独だったはず。そんながちがちに固まっていた自分の心をまひろの笑顔が少しほぐしてくれたような気がします。だからこそ彼女と話すときにふと見せる、周明の優しそうな表情は決して嘘ではなかったのだと思います」

第24回では、周明がまひろをそそのかして左大臣・道長に宋との交易を促す手紙を書くように迫るも、周明の気持ちが偽りであることを見抜いたまひろは断固拒否。周明は脅迫まがいの行為に出るが、この時の周明の心境について、松下はこう振り返る。

「陶器の破片で脅し、道長へ文を書くよう迫るシーンではまひろに拒絶されてしまいますが、彼女と過ごした時間や交わした会話は周明にとって、きっとかけがえのないものでとても楽しかったのだと思います。それゆえに自分の本当の気持ちと果たすべき使命があまりに裏腹でかみ合わない。自らの出世欲や朱仁聡の期待に応えたいという思いとの葛藤により、張り詰めていたものがプツンと切れ、心がぐちゃぐちゃになってしまった瞬間の突発的な行動だったのかなと振り返っています。そのシーンの最後に「つまらぬ夢など持つな」とまひろに吐き捨てますが、近づきそうだったものが自分の手から離れてしまったことで裏切られたと判断し、大切な人を傷つけるようにして去ってしまう。周明の繊細で脆く、悲しい人物像があらわれた場面だったと思います」

この出来事により周明とまひろは決別することとなるが、周明が朱仁聡から「お前の心の中からは消え去るとよいな」と言われたとき「まひろに対して淡い恋心を抱いていたことに初めて気づかされるという演出をつけていただきました」という。

「実は演出担当の方々と議論する中で、「周明がまひろに恋心を寄せている様子をどこまで見せましょうか?」と何回か相談したことがありました。その瞬間を見せられる場面はいくつかあったのですが、彼女との人間関係が壊れてしまった後に「まひろのことを慕っていたのか…」と自覚する方がドラマチックではないかとの結論に至り、今回の芝居につながりました」と周明のまひろへの恋心の表現について演出と話し合いのすえ、進められたことを明かした。(編集部・石井百合子)

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