「メキシコの市長トラックで引きずり回され死去」は誤り 大きな怪我無し

検証対象

【画像】メキシコの市長、公約を守らなかった為に市民に市長室を襲撃されトラックで引きずり回され死去

まとめサイト「Tweeter Breaking News-ツイッ速!」タイトル(2024年6月2日)

判定

判定の基準について

2019年に起こった事件であり、市長がトラックで引きずられたのは事実だが、大きな怪我は無かった。

ファクトチェック

2024年6月2日、まとめサイト「Tweeter Breaking News-ツイッ速!」(以下ツイッ速)は、電子掲示板サイト「5ちゃんねる」(以下5ch)のスレッドを基に「【画像】メキシコの市長、公約を守らなかった為に市民に市長室を襲撃されトラックで引きずり回され死去」というタイトルの記事を公開した。ツイッ速のXアカウントによるこの記事のポスト(投稿)は約5000リポスト(再投稿)され、広く拡散されている。

メキシコでは6月2日に大統領選挙が行われクラウディア・シェインバウム氏が当選した(参照)が、同時に連邦議員や州知事など計2万超のポストが争われる総選挙が行われており(参照)、選挙期間中に多数の候補者や関係者が殺害された(参照)。

市長に大きな怪我無し

5chスレッドやツイッ速記事には出典が明記されていないが、掲載されている文章は2019年10月10日のBBC News JAPANの記事の一部と一致する。

記事によるとこの事件は2019年10月8日、メキシコ南東部チアパス州ラス・マルガリータスのホルヘ・ルイス・エスカンドン・エルナンデス市長が選挙公約を巡り地元の農場経営者らに襲撃されたというもの。エスカンドン・エルナンデス氏は市長室から連れ出された後、ピックアップトラックにつながれ引きずり回されていて、監視カメラには一連の様子を映した映像が残されていた。なお、ラス・マルガリータスは「郡(municipios)」という行政区分(参照)にあたり、その長は「市長」とも「町長」とも訳される。

BBC記事には「市長に大きなけがはなかった」と書かれているが、5chスレッドやツイッ速記事にはこの部分の記述は無い。

同じ事件はAFPBB Newsでも報じていて、こちらでもエスカンドン・エルナンデス氏は大きな怪我はなく解放されたと書かれている。

10月9日の司法当局の発表でも、「市長は市、州、省の警察によって適時に安全に救出された(al presidente municipal, quien fue rescatado sano y salvo de manera oportuna por elementos de las policías Municipal, Estatal y Ministerial)」と書かれている。

また、地元のメディアPaladin Noticias ChiapasFacebook投稿によると、市長は解放されたその日の内に演説の場に現れていて、投稿画像を見る限り大きな怪我をしている様子は見受けられない。

以上のように市長がこの事件で死亡した事実は無いため、検証対象は「誤り」と判定する。

過去にも襲撃

BBCニューススペイン語版記事によれば、襲撃を行ったのは先住民族が暮らす町の住民で、エスカンドン・エルナンデス氏の選挙公約だった町へ続く道の補修や、飲料水・電気の整備を要求していた。

記事によれば、この数ヶ月前にもこの町の住民の集団が同様の理由で市長室を襲撃し、職員がいなかったため家具などを破壊した。また、屋根の補修材を求めた住民によって市役所職員が1週間にわたり監禁される事件も起きているという。

(高倉佳子、大谷友也)

© 一般社団法人リトマス