薬の過剰摂取 危険性呼びかけ 県病院薬剤師会、ポスター掲示

薬の過剰摂取の危険性を訴えるポスター。岡山赤十字病院では小児科外来の掲示板に張り、啓発を始めた=岡山市北区青江

 若者の間で深刻な問題となっている薬の過剰摂取「オーバードーズ(OD)」を巡り、岡山県病院薬剤師会(150医療機関、900人)は、小児科窓口などに薬物の乱用防止を呼びかけるポスターの掲示を始めた。10代が薬物中毒で救急搬送される事態が会員の医療機関で多発しており、この問題に同会として初めて統一行動に乗り出すことにした。

 ODは「嫌なことを忘れたい」といった現実逃避などを目的に、規定をはるかに超える量を一気に服用する行為で、意識を失ったり、臓器に負担が生じたりして、命にかかわる症例も少なくない。

 中でも社会問題となっているのが、10代を中心にした風邪薬やせき止めといった市販薬の過剰摂取だ。医師の処方箋が必要な医療用の医薬品とは異なり、ドラッグストアやインターネットで簡単に手に入る。全国で救急搬送されるケースが続出し、岡山でも同会所属の薬剤師が複数の事例を確認。ODの危険性を広く知ってもらおうと、各医療機関に啓発ポスターを順次掲示することにした。

 ポスターは岡山県薬剤師会が作ったものを活用する。錠剤が入った瓶の中に人が倒れ込み、薬剤師が外側からハンマーを持って助けようとしているイラストが描かれる。「あなたと、あなたの大切な人が、飲み込まれないように」とのメッセージとともに、肝障害など健康被害も解説する。

 森英樹会長(岡山赤十字病院薬剤部長)は「患者の異変にいち早く気付き、相談に乗る、専門機関につなげる―。そんなゲートキーパー(門番)としての役割が薬剤師に求められている。若者をODから救うため、会員同士で知恵を出し合いたい」と話している。

 ここポイント! 入手しやすい環境にある市販薬について、国は販売規制の強化を目指している。依存性がある成分を含む市販薬を20歳未満が多量購入することを禁じる▽写真付きの身分証などでの年齢確認▽販売記録の保存を義務付ける―といった対策を検討中だ。

 しかし、岡山県病院薬剤師会の森英樹会長は「効果は未知数」と指摘する。複数店舗を回って薬を買い集める人もいるためで、「店舗間で購入情報を共有するような仕組みが不可欠だ」と訴える。

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