<レスリング>【6.24~26東日本学生リーグ戦・展望】「あと一歩」が続いた団体戦、悔しさのエネルギーが爆発するか…6年ぶりの優勝を目指す山梨学院大

※エントリーは未発表です。記事内の選手および階級は、すべて本HPの予想です

2013~18年に6年連続で東日本学生リーグ戦を制した山梨学院大。その後、接戦はあっても、優勝から見放されてしまった。今年の大会(6月24~26日、東京・駒沢屋内球技場)は、一昨年、昨年以上に栄冠を引き寄せる可能性を秘める戦力がそろった。

団体戦の優勝は2020年全日本大学グレコローマン選手権を最後に途絶えている。そのときの1年生はこの春卒業したので、団体優勝を経験した選手はいなくなった。

しかし、一昨年のリーグ戦、昨年のリーグ戦と全日本大学選手権は、優勝した日体大とどっちに転んでもおかしくない内容の末の惜敗。「優勝経験がある」より、「あと一歩を逃した悔しさ」のエネルギーの方が、熱く燃えるのではないか。6年ぶりのリーグ戦優勝へ向けて、チームは一丸となっている。

小幡邦彦監督は「優勝できる戦力はそろっている。しかし、日体大もいい選手が多くいるので、五分五分かな」と気を引き締める。それでも、このまま日体大の独走を許してはならない、という気持ちも十分。61kg級を任せる小野正之助(3年)が負傷も完治し、明治杯全日本選抜選手権で優勝し、国際大会でも結果を出していることが、気持ちを高揚させているようだ。

▲61kg級で全勝が期待される小野正之助。チームに優勝を引き寄せられるか

最大の壁となる日体大の61kg級は、昨年の全日本王者の田南部魁星か、全日本選手権決勝で田南部と優勝を争った西内悠人を起用することが予想される。昨年、小野は全日本学生選手権と国体で田南部を破り、今年はJOCジュニアオリンピックと全日本選抜選手権で西内を撃破している(全日本選手権は65kg級に出場していて両選手との対戦はなし)。

どちらが出てきても、精神的には圧倒的に有利。自分の構えを6分間キープして崩されることがなく、ポイントを与えないレスリングは頼もしい限り。日体大戦に限らず、どのチームが相手でも確実に1勝が期待できる。

安定した実力を持つ重量2階級、「あと1勝」はどこで勝つか?

86kg級と125kg級も、五十嵐文彌(3年)アビレイ・ソビィット(3年)がポイントゲッターとして存在する。日体大は昨年のメンバーから髙橋夢大(現三恵海運)と小畑詩音(現新日本プロレス職)が抜け、山梨学院大が圧倒的に有利な階級だ。

▲重量級を支える一人、五十嵐文彌。125kg級のアビレイ・ソビィットとともに頼もしい戦力に成長している

▲出げいこに来たバトバヤル・ナムバルダグワ(育英大)と積極的に練習したアビレイ・ソビィット

2022年に1年生大学王者に輝いた五十嵐は、最近、髙橋には分が悪く、3月のU23世界選手権代表選考会と全日本選抜選手権は髙橋に敗れて優勝を逃しているが、昨年の全日本大学選手権97kg級で吉田アラシ(日大=1ヶ月後に全日本王者へ)と互角の闘いを展開。6月初めに育英大から数名の選手が出げいこに来たときは、125kg級大学王者のバトバヤル・ナムバルダグワに引けをとらない練習を展開している。リーグ戦全勝が期待される。

ソビィットは、ナムバルダグワには分が悪いが、小畑の抜けた日体大戦では、だれが相手でも勝てるだけの実力がついている。

「あと1勝」をどこで取るか。最も期待されるのが、2022年に五十嵐とともに1年生大学王者に輝いた荻野海志となろう。昨年のリーグ戦で、清岡幸大郎主将(現三恵海運)に逆転負け → チームの4敗目、の悔しさは胸に刻まれているはず。

相手は、田南部か西内か(前述)、JOCジュニアオリンピック優勝の細川周か、あるいは国体3位の髙橋一輝やU23世界選手権予選61kg級を制した赤嶺明柳の上級生か。相手はだれであっても、リーグ戦の悔しさは、リーグ戦で晴らさねばなるまい。

「失うものは何もない。チャレンジャーとして」と小幡邦彦監督

日体大が確実に白星を期待していると思われるのが、57kg級・弓矢健人と 74kg級・髙橋海大の全日本チャンピオン、急成長してJOCジュニアオリンピック70kg級と全日本選抜選手権74kg級と、2大会連続優勝の山下凌弥

山梨学院大は、57kg級には全日本選手権と全日本選抜選手権で3位に躍進している勝目大翔(2年)、70kg級には、階級をアップして全日本選抜選手権3位入賞の森田魁人(4年)、74kg級には全日本選手権3位の鈴木大樹主将(4年)の起用で対抗か。最低でも一角を崩すことが望まれる。

小幡監督は「起用された選手は、大学の代表という意識をもって、しっかり闘ってほしい」と話す一方、「ここ数年は日体大がチャンピオンなんです。失うものはない。チャレンジャーとしてぶつかってほしい」と、思い切った闘いを期待する。

鈴木主将も、荻野と同様、昨年の全日本大学選手権で勝てばチームの優勝を引き寄せられる試合を落とした苦い経験を持つ。それだけに、最上級生になって主将を任され、チームのために頑張りたいという気持ちが強く、「最後の学年で、監督に恩返しがしたい」ときっぱり。

「3年生が強いチームですが、後輩に頼らず、最上級生として頑張り、できることをすべてやり切ろうと思っています。選手で力を合わせ、優勝を目指したい」と気合を入れている。

▲チームをけん引し、6年ぶりの優勝を目指す鈴木大樹主将(左)

レギュラー選手には「全試合出場、全試合勝利」の気持ちで

3日間で6試合をこなす闘いのリーグ戦は、各階級3選手のエントリーが認められている。部員の多いチームは選手を交互に起用するのが普通。

昨年優勝の日体大は、“Wレギュラー”とも言える豊富な戦力を使って闘い、最後の山梨学院大戦にかけた。主将の清岡幸大郎(前述)でも6試合中3試合の出場。山梨学院大は、主将だった青柳善の輔(70kg級=現クリナップ)が5試合に出場するなど、主力がほぼ全試合に出場。控え選手の層の厚さの差がチームの勝敗を分けたことが考えられる。

だが、小幡監督は「全試合に使われて力を発揮できないような、ヤワな練習はしていません」と語気を強めた。自身の現役時代は1ブロック8チームの総当たり戦で、反対ブロックのチームとの順位決定戦を含めれば、8試合の闘いだった(1年生だった1999年のみ8チーム総当たりの1ブロック総当たり制)。

小幡監督のリーグ戦での成績は下記の通り。
■1年生(1999年)=1~5・7回戦の6試合に出場して全勝(5試合でフォールまたはTフォール勝ち)
■2年生(2000年)=予選リーグ4回戦から5試合連続出場して全勝(全試合、フォールまたはTフォール勝ち)
■3年生(2001年)=予選リーグ2回戦から7試合連続出場して全勝(5試合でフォールまたはTフォール勝ち)
■4年生(2002年)=予選リーグ3回戦から6試合連続出場して全勝(5試合でフォールまたはTフォール勝ち、3回戦は96kg級での出場)
※Tフォール=現テクニカルスペリオリティ(VSU)

連戦をものともしない強さを見せており、試合が続くことで「実力を発揮できない」という言い訳は許さないだけの成績を残している。世界を目指すなら、学生の大会ではこのくらいの成績が必要だ。

▲6年ぶりの優勝を目指して練習に熱を入れる山梨学院大

相手選手との相性や、下級生選手に経験を積ませるため、ところどころで二、三番手選手を起用する予定だが、レギュラー選手には「全試合出場、全試合勝利」の気構えを期待した。

紫紺の優勝旗は、6年ぶりに三国峠を越え、かつての“常駐地”甲府へ戻ってくるか。

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