和田庵、『虎に翼』新キャラクター・道男役で見つかる予感 実は“再共演者”ばかり?

NHK連続テレビ小説『虎に翼』第12週では、寅子(伊藤沙莉)が念願の裁判官としてのキャリアを歩み始める。そこで新しく出会うのが、戦争孤児でスリの少年グループのリーダー・道男(和田庵)だ。どうやら彼は寅子の家に居候することになるようだ。

道男役を演じる和田庵は、本作が朝ドラ初出演となる。和田といえば、『隣の家族は青く見える』(フジテレビ系)では、両親が離婚しており、別の人と事実婚中の父親の家に住み始める息子役を好演。当時からハスキーボイスでどこか大人びた雰囲気のある和田は、この複雑な環境下でやけに物分かりが良く育った小学生男児役を見事に体現していた。ちなみに、本作で桂場役を務める松山ケンイチがこちらでは主人公の夫役を、寅子役の伊藤がその妹役を演じていた。

そんな和田がカナダ留学から帰国後、オーディションを経て掴み取ったのが映画『茜色に焼かれる』での主人公の息子・純平役だ。ちなみにこの主人公は『虎に翼』では語りを務める尾野真千子だった。父親をあまりに理不尽な交通事故で亡くし、母親が経営するカフェはコロナ禍で破綻。多難の中でも生きることに闘志を燃やす不器用な母親をどこか鬱陶しく、不思議に思いながらも、他人がそれを揶揄することは許せない。そんな母親想いで、自分の本音をなかなか昇華させられない内向的な中学生役を熱演した。そしてここでの和田の芝居は第95回キネマ旬報ベスト・テン新人男優賞を受賞し、高く評価された。

また、映画『エゴイスト』でも主人公・浩輔(鈴木亮平)の中学時代を演じており、田舎町も学校も自身に全くフィットしていないことが伝わってくる、どんよりとした少年時代を表現した。浩輔の居場所のなさを、そう多くはない挿入シーンで見せてくれた。

振り返ると、既に出来上がっているコミュニティに自身の居場所を見い出すことができない、どこか居心地の悪そうな役どころが続いているようにも思える和田だが、寅子たち居候先の家族とどんなふうに打ち解けていくのか楽しみだ。

朝ドラでヒロイン宅に居候することになったキャラクターといえば、NHK連続テレビ小説の前作『ブギウギ』の小夜(富田望生)が思い出される。小夜は癖が強くデリカシーのない言動が多々見受けられたものの、基本が底抜けに明るかった。ただどんなにあけすけに見えても、本当の心の傷は小夜もなかなか見せず、むしろそれが傷だと自分でも十分に自覚できていないような節も見受けられた。そもそもスズ子(趣里)のような歌手になることに憧れて彼女の付き人になった小夜は、憧れの人物の近くに身を置けば置くほど“何者にもなれない”自分をまざまざと突きつけられていた。理想と現実のギャップや選べなかった人生の差分にやりきれなさを滲ませるような部分も見受けられた。

『虎に翼』では、年齢も性別も異なる道男が寅子の元にやって来て、生きるためにやむなく悪事に手を染めるほかなかった、戦争の一番の被害者とも言える戦争孤児と寅子は向き合うことになる。それはまさに、花岡(岩田剛典)が苦悩し対峙し続け、「人としての正しさと司法としての正しさがここまで乖離していくとは思いませんでした」と言った言葉を常に突きつけられる状況だとも言えるだろう。寅子は道男のような存在をどう捉え、司法でどう扱い守り、そしてこの乖離にどのように折り合いをつけようとするのだろうか。
(文=佳香(かこ))

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