給料を増やしたいと考えるのであれば、出世・昇進を目指すのが近道のひとつ。ただ給与が増えてからといって、サラリーマンの上位10%と「勝ち組」に仲間入りをしても、歓喜するのは一瞬だけというのがお決まりのパターンです。みていきましょう。
金融業なら40歳、建設業なら50歳…出世スピードは業界によってまちまち
ソニー生命保険株式会社がこの春から働き始める社会人1年生と、2年目の20~29歳の男女に対し行った『社会人1年目と2年目の意識調査2024』によると、「出世したいと思わない」社会人1年生は44%、社会人2年生は53%でした。
同じような調査はほかにもありますが、そのたびに「最近の若い人は出世欲がないから」などと論じられますが、実は「若年層は出世欲が低い」という結果は昔から同じだとされています。また「社会人になりたてなのに、出世欲が先行していても使い物にならない」という声も。年功序列の影響が色濃く残る日本において、年齢と共にある程度、出世していくもの。また手っ取り早く給与を増やしたいのであれば、出世・昇進を目指したほうが近道、という事情もあるでしょう。
厚生労働省の調査によると、大卒サラリーマンにおいて、係長の平均年齢は44.2歳、課長は48.6歳、部長は52.6歳。順調に出世をしていくサラリーマン人生であれば、このように階段を昇っていくと考えればいいでしょうか。
一方で昇進スピードは、業界によってもまちまち。たとえば「金融業、保険業」。大卒課長の平均年齢は40.7歳。一方で「建設業」における大卒課長の平均年齢は50.9歳。同じ大卒課長であってもそこには10歳もの差があり、業界全体の平均年齢はもちろんのこと、出世スピードも業界によってまちまちであることが分かります。
【業界別「大卒課長」平均年齢と平均年収】
「鉱業、採石業、砂利採取業」49.9歳/1,307.5万円
「建設業」50.9歳/947.5万円
「製造業」49.0歳/861.5万円
「電気・ガス・熱供給・水道業」46.0歳/899.8万円
「情報通信業」43.2歳/678.6万円
「運輸業、郵便業」46.0歳/663.5万円
「卸売業、小売業」44.5歳/626.8万円
「金融業、保険業」40.7歳/76.4万円
「不動産業、物品賃貸業」42.8歳/766.8万円
「学術研究、専門・技術サービス業」43.0歳/773.9万円
「宿泊業、飲食サービス業」43.0歳/535.7万円
「生活関連サービス業、娯楽業」42.5歳/581.1万円
「教育、学習支援業」44.5歳/672.2万円
「医療、福祉」44.8歳/647.8万円
「複合サービス事業」43.1歳/630.6万円
「サービス業(他に分類されないもの)」46.2歳/651.5万円
※数値左より平均年齢/平均年収
年収1,000万円の大台「サラリーマンの上位10%」の仲間入りを果たしたが…
大手建設業勤務の50歳のサラリーマン。入社して30年弱で課長に昇進。金融関連に就職した大学の同期は42歳で課長。数年前にはすでに部長に昇進したという風の噂(「金融、保険業」の部長職の平均年齢は47.5歳)。
「それに比べたら俺は、随分と苦労したな……」、そう感慨深くなるかも。それでも年収は係長職平均763.2万円と比べて、200万円近くも増え、1,000万円の大台目前に。
年収1,000万円。この大台に達するのは、日本のサラリーマンの上位10%だけ。そう考えると、思わず目頭が熱くなるかも。しかし、そんな感動も、最初の給料日に「ああ、やっぱりそうか」と落胆に変わってしまうかも。
たとえば月収58万円、年収1,000万円だとすると、毎月20万円近く天引きされて、手取りは40.7万円ほどに。年収では300万円近く減り、703.8万円ほどになります。
【月収58万円の1,000万円プレイヤーの給料明細(一例)】
●額面:58万0,000円
●手取り:40万7,742円
(内訳)
・所得税:4万4,631円
・住民税:3万5,293円
・健康保険:2万9,500円
・厚生年金:5万3,985円
・介護保険:5,369円
・雇用保険:3,480円
※2024年6月から定額減税の調整あり
係長時代から月収は額面で10万円、年収で200万円近く増えましたが、手取りでは5.6万円、年収では150万円ほどの上昇にとどまります。この事実をなかなか直視できず、何度も給与明細を眺めては「何かの間違いであってほしい」と呟く……これもサラリーマンあるあるです。
この額面と手取りの差、社会人になったときから何度も繰り返し目にしてきたものですが、出世・昇進したときのガッカリ感はかなりの衝撃度。さらに給与が増えれば増えるほど天引き額は増えていき、衝撃はさらに増していきます。
さらに今後、社会保障費の増額が既定路線のようで、さらに天引き額は増えていきそう。給与明細を開いてはあげてしまう悲鳴。今後、さらにその声が大きくなりそうです。
[参考資料]