回転窓/座敷ほうきに魅せられて

イネ科の植物ホウキモロコシは、昔から箒(ほうき)の材料に使われてきた。時代とともに生産者は減ったが、伝統的な箒づくりの継承へ栽培を復活させた地域もあるようだ▼古民家を再生し地元の魅力的な商品が売られている店で、職人の手仕事による座敷箒を先日購入した。米寿を迎えた職人に店主がお願いし店に置かせてもらえたそうで、複数を仕入れても短期間に売れてしまう人気商品となっている▼自然素材を使った工芸品の箒は軽くて弾力と柔らかさがあり、長持ちするのも特徴だ。手に入れた箒は赤、緑、黒色の糸を編み込んだ模様がきれい。細身の柄がしっくりと手になじむ▼こうした国産の箒が見直されており、その理由には電気エネルギーに頼らない生活への関心や土に返る素材、道具としての美しさなどが挙げられるという。箒の歴史や作り方が分かる書籍『イチからつくるホウキ』(宮原克人・編、堀川理万子・絵/農文教)から引いた▼高性能な電気掃除機やロボット掃除機も頼りになるが、何より丹精込めて作られた箒の使い心地は癖になる。分野を問わず職人の熟練した技とはそういうものだろう。

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