日光の隠れた名山「社山」美しすぎる帰路「中禅寺湖&男体山」大パノラマ「登山レポ」

男体山と中禅寺湖の眺望。疲れを忘れるくらいに美しい(撮影:武田マスオ)

栃木県の奥日光地域には、日本百名山に選出されている「男体山」や「日光白根山」、日本一標高の高い湖「中禅寺湖」があり(人造湖を含まない面積4平方km以上の湖)、多くの登山者で賑わう人気の観光地となっている。

今回は、地元ハイカーに人気の中禅寺湖の湖畔、男体山の対岸に位置する山「社山(しゃざん)」を紹介する。雄大な景色を満喫できるおすすめコースだけでなく、美しい景色が拝める見どころも満載だ。ぜひ次回の登山の参考にしてほしい。

■社山のおすすめコースの難易度は?

今回紹介するコースは、中禅寺湖遊覧船の発着場でもある「県営歌ヶ浜第一駐車場」からスタートし、阿世潟峠(あぜがたとうげ)を経由して、展望のよい尾根歩きで山頂へ向かうコースだ。

社山の標高は1,827mだが、スタート地点となる「県営歌ヶ浜第一駐車場」の標高が約1,270mなので、実質は550mほどの標高差となる。実際に登った時に測った累積標高は約830mで、それなりにアップダウンの多いコースという印象だ。歩行距離が約14km、コースタイムは往復で約4時間半と少し長めだが、体力があれば初心者でも楽しめるコースとなっている。

駐車場に地図があるので確認しておこう

■見どころ1「2つの別荘記念公園」

駐車場から阿世潟(あぜがた)までの約1時間は、中禅寺湖湖畔の遊歩道を進んでいく。比較的平坦な道が続くので歩きやすく、山に入る前の準備運動にちょうどよい。

最初の見どころは、「英国大使館別荘記念公園」と「イタリア大使館別荘記念公園」だ。きれいに整備された公園と歴史ある別荘が湖畔に並んでいる。

中禅寺湖の日本らしい景色と異国感のある別荘のコントラストがすばらしく、絵になる場所である。

■見どころ2「阿世潟の白い砂浜と透明な湖」

別荘記念公園を過ぎて約40分ほど進むと阿世潟に到着だ。ここは白い砂浜と澄んだ湖面、正面に見える男体山の景観がすばらしい場所である。1時間程度歩かないと見られない景色は特別感があり、このコースの見どころの一つと言える。

ここから先は峠道に入り、本格的な登山となる。まだ先は長いので休憩しながら景色を堪能するといいだろう。

■見どころ3「足尾山塊と稜線歩き」

阿世潟から阿世潟峠までは軽い登りが20分程度続く。阿世潟峠の尾根に出ると、半月山(はんげつざん)と社山へ向かう分岐になるので社山方向に進もう。

分岐には標識が立っているので迷うことはない

ここまでは道も整備されているので歩きやすいが、この先は稜線歩きとなるため、足元には注意が必要だ。

切り立った稜線歩きは注意が必要だ

阿世潟峠から社山の山頂までは、右側に中禅寺湖と男体山、左側に足尾山塊が常に見えて眺めがよい稜線歩きとなる。

ここでの見どころは、進行方向にはきれいな尾根が続き、左右を見渡せばパノラマの景色が味わえる気持ちのよい景色である。

足尾山塊の景色もよい

笹が多く、ところどころ道をふさぐほど。滑りやすい場所もあるので、景色ばかりに目を奪われず、しっかり足元に注意して進もう。

阿世潟峠から約1時間30分ほどで社山の山頂に到着だ。山頂の眺望はあまり期待できないが、少し先に進むと開けた場所があるので、足尾の山々を眺めながら食事をとることも可能だ。

■見どころ4「天空の奥日光」

帰りは同じ道を辿るが、ここからが一番の見どころであり、社山の魅力が一気に伝わる瞬間だ。稜線を下る間、常に中禅寺湖と男体山が視界に入り、まるで天空の道を駆け下りているかのような錯覚となる。

男体山の方が標高は高いはずだが、なぜか見下ろしている感覚があり、中禅寺湖の青さと男体山の緑が映えたすばらしい景色を堪能できる。この感覚は、登山歴20年の筆者でもここ社山でしか味わったことがない、特別な景色だ。

頂上から阿世潟峠までのコースタイムは1時間程度だが、登山者のほとんどが帰りはカメラを構える回数が増えるため、コースタイムを大幅に超えてのんびりと下山を楽しんでいる。

■復路での注意点

阿世潟峠の分岐は、阿世潟方面への下りと半月峠方面への登りの分岐となっている。半月峠方面へ行き、半月山の展望台を経由して駐車場へ戻ることも可能だが、半月山への道のりはかなりの急登が待ち受けており、体力も必要となる。

初心者や体力に自信のない方は無理をせずに阿世潟方面に下り、もと来た道を戻るのがいいだろう。登山では無理、無茶は禁物だ。

阿世潟まで戻ると、先ほどまで眼下に見下ろしていた中禅寺湖が目の前に広がり、湖の大きさを改めて感じる。ここまでくれば湖畔をぐるりと戻って、駐車場へ戻れば全行程終了だ。

県営歌ヶ浜第一駐車場からの景色。右の尖った山が社山だ

■感動を誰かに伝えたくなる程の絶景コース

同行者がいれば、帰りには「景色がすごかったね!」など、笑顔で会話が弾むはずだ。ソロの方は、帰ってから家族や登山仲間、友人にこの感動を伝えたくなること間違いなし。この感動を伝えるその時間、楽しさも登山の魅力の一つであると筆者は感じている。

奥日光の社山でしか体験できない景色と感動を、ぜひ次回登山の候補の一つに考えてみてはいかがだろう。

・住所 〒321-1661 栃木県日光市中宮祠
【ルートタイム】
県営歌ヶ浜第一駐車場⇒(65分)⇒阿世潟⇒(20分)⇒阿世潟峠⇒(60分)⇒
社山山頂⇒(40分)⇒阿世潟峠⇒(15分)⇒阿世潟⇒(65分)⇒県営歌ヶ浜第一駐車場

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