おジャ魔女どれみ、ぴちぴちピッチ……90-00年代“女児向け”おもちゃが高額 コレクターに聞く今買う理由

■懐かしのおもちゃが超高額に

昨今、『ウルトラマン』や『仮面ライダー』のいわゆる“ヴィンテージソフビ”が数十万、数百万で取引されるようになり、YouTuberにも熱狂的なソフビコレクターが増えている。そんななか、注目を集めているのが20~30年前に発売されたおもちゃだ。1990~2000年代に人気のあった、特に“女の子向け”アニメのグッズが高騰しているのだという。

人気のタイトルは、当時子どもだった女の子であれば誰もが見たであろう、『美少女戦士セーラームーン』や、『おジャ魔女どれみ』『カードキャプターさくら』『ぴちぴちピッチ』などで、変身アイテムのステッキが数万円台で取引されることも珍しくない。といっても、これらのおもちゃは限定品でもなんでもない。アニメの放送当時は、普通におもちゃ屋に並んでいたものだ。

いったいなぜ、これほどまでに高くなっているのだろうか。ポイントとなるのは、20年、30年と言う歳月である。筆者の知人のおもちゃコレクターA氏が「複合的な理由が考えられるので、一概には言えませんが」と前置きしたうえで、こう話す。

「当時、小学生だった男の子は、こういった“女の子向け”のおもちゃは買いたくても恥ずかしくて買えなかったと思います。そんな人、多いんじゃないでしょうか。ところが、20~30年経ち、子どもの時ほど恥ずかしがる必要もなくなりました。あの日、手にできなかったものを手にしよう……と思って、コレクターの沼に足を踏み入れる人が多いのです。特に“変身アイテム”は作品の象徴でもありますから、ファンが欲しがるのは当然ですよね」

なるほど、納得だ。同様に、ファミコンやスーパーファミコンのソフトも高騰しているが、「子どものときにお小遣いで買えなかったソフトを買いたい」「そして遊びたい」と思い、買い求める人がいるようだ。そういう熱い思いをもつ人が増えると、次第におもちゃの価格が高騰していくというわけである。

将来のさらなる値上がりを期待して投機目的で買う人も一部にいるというが、A氏によると、多くがこういった純粋な思いでコレクションしているのだという。

■現在人気のある作品はどうなるのか?

さて、ここで少々ゲスい発想を抱いてみよう。この法則で行けば、現在発売されているアニメのグッズも、箱に入ったまま遊ばずに20~30年“寝かせて”おけば、高値になるのではないだろうか。

例えば、筆者が愛してやまない『ひろがるスカイ!プリキュア』のキュアスカイや、『【推しの子】』の星野アイやMEMちょ、『ラブライブ!サンシャイン!!』の堕天使ヨハネこと津島善子のグッズなどはどうだろうか。A氏にそんな疑問をぶつけてみると、こんな答えが返ってきた。

「おそらく、プレミアがつくものは出てくると思いますよね。おもちゃコレクターの北原照久さんは本の中で、“一世を風靡したものにはプレミアがつきやすい”と語っていますから。ただ、ほとんどの人がグッズを取っておかないんですよ(笑)。引っ越しの時に捨ててしまったり、フリマサイトで売ってしまう。今、どこにでもあるグッズが、20~30年も経つとびっくりするほど見かけなくなると思いますよ」

A氏はさらに、こう続ける。

「コレクターって、ありふれているときは注目しないでしょう。少なくなってから探し始めるパターンが多いんです。あと、東京って引っ越しをする人が多いので、おもちゃが残りにくい。広い家がある田舎の方が、遊んだ後に押し入れに仕舞い込んで、忘れたままになっていることがある。結果的に、レアなおもちゃが残っていたりするんですよね」

一世を風靡した作品はグッズの点数も非常に多い。そのため、「コレクターにとっては集め甲斐がある」とA氏は語る。なお、わざわざ寝かせて保存する人も中はいるらしいが、なにぶん場所をとるのが問題である。A氏は、「投機目的でおもちゃを買うのはおすすめしません。邪念を抱かず、好きなものを愛でるのが一番です」と語ってくれた。

©花森ぴんく・横手美智子/講談社

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