【ナゼ?】突然の「大阪都構想3度目チャレンジ」に維新内部で波紋 深まる「東京」VS「大阪」の対立 維新支持率低下への“焦り”

日本維新の会の馬場代表が、9日のネット番組で「大阪都構想」の3度目の挑戦に意欲を示したことに波紋が広がっています。過去、2度に渡って否決された看板政策に対し、維新内でも賛否の声が入り乱れています。4月の衆院補選での惨敗と維新支持率の低下による“焦り”を背景に、「馬場代表・国会議員団」と「吉村氏・大阪維新」の間で深まる“ミゾ”が顕在化しています。それぞれの思惑と、維新が抱える課題とは―。(報告:平田博一)

■住民投票で2度の否決 市民から「またやるのか」「往生際が悪い」

「『大阪都構想』をやらなければならないと考えている。地方を自立させる議論が政治の中にはたくさんあったけど、今誰も国会で言わない。もう一回、惹起させるためにも『大阪都構想』へのチャレンジというのは日本の国にとって必要だと思う」

馬場代表は9日配信されたネット番組で、個人的な考えとした上で大阪市を廃止して複数の特別区に再編する「大阪都構想」の3度目の挑戦に意欲を示しました。

ただ「大阪都構想」をめぐっては、2015年と2020年の2度にわたって住民投票が行われ、いずれも否決されました。現在、大阪府知事を務める日本維新の会の吉村洋文共同代表は2020年の2度目の否決の際、「僕自身が大阪都構想に挑戦することはありません」と語っていました。

2度の投票はいずれも僅差だったとはいえ、町で大阪市民に取材すると、「またやるのか」「往生際が悪い」「ふざけるな、いつまで自分たちのエゴを通すのか」などと批判の声が多く聞かれました。

■万博控え本音は「いま言わんといて」 背景に維新支持率低下の“焦り”

維新の関係者を取材すると、こんな声が多く聞かれました。

「いま言わんといて」

維新はいま、2025年の大阪・関西万博の成功を最大の目標に掲げる中、日本維新の会のトップを務める馬場代表から出た「都構想」発言には一様に困惑しているような状況です。

馬場代表がこのタイミングで言い出した背景には、ある「焦り」が感じられます。

4月の衆院補選では東京と長崎に候補者を出しましたが、いずれも同じ野党の立憲民主党の候補に敗北しました。NNNと読売新聞が共同で行った全国世論調査では、2023年の統一地方選で躍進した後の7月、維新の政党支持率は9%だったのに対し、2024年5月では4%と“半減”しているのです。

維新のある幹部は、「“政治とカネの問題”で本来は支持率が下がっている自民支持者の受け皿にならないといけないにもかかわらず、そうはなれていない。このままでは次の解散総選挙は非常に厳しい戦いになるのでは」と強い危機感を示しました。

■馬場代表・国会議員団と吉村氏・大阪維新の間の「ミゾ」

さらに、国会を取り仕切る馬場代表と大阪の“顔”でもある吉村氏との間で「溝」が生まれていると囁かれています。

現在、国会で紛糾している政治資金規正法の改正案で、馬場代表は政策活動費の領収書について「黒塗り」を容認したのに対し、吉村氏は「おかしい」と不快感をあらわにしました。

さらに、次期衆院選後の自民との連立について、馬場代表は可能性は否定していませんが、吉村氏は「維新の存在意義がなくなる」と強く反発しています。

東京の国会議員団と地元・大阪との間で溝が深まる中、ある大阪府議からは「衆院選前には馬場さんには代表を辞めてもらいたい」という声まで上がっています。

■万博閉幕後からの“空白の1年半”「都構想」に頼らざるを得ない現実

ただ、吉村氏は馬場代表が「都構想」発言をした翌10日、「まずは万博に注力する」と話す一方で、「その後は何が起こるかわかりません」と、含みをもたす発言をしました。

ポイントになるのは“空白の1年半”です。万博が2025年10月に閉幕してから、大阪府知事の任期が終了する2027年4月までの間、『万博に代わる目玉が欲しい』という声があがる可能性もあります。

「都構想」はもともと維新の『一丁目一番地』ともいえる政策。現在は万博の成功に向かって突き進んではいるものの、万博が終われば結局“都構想”に頼らざるを得ないという厳しい維新の現状を表しています。

今後、維新が存在価値を示すには「都構想」「万博」以外のもので見出せるかにかかっています。

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